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プロゴルファー

こせきよういち

勝利の陰にタイガーあり~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#208

先週の米ツアー競技「ザ・プレーヤーズ選手権」は最終日、3打差3位タイからスタートしたジャスティン・トーマスが首位のリー・ウエストウッドを逆転し、「準メジャー」と呼ばれるこの大会を初制覇しました。

今年に入ってからのトーマスはラウンド中の不適切発言に対する非難、それによるスポンサー契約の解除、そして祖父のポールさんの急死と、不幸が重なり、プレーに精彩を欠いていました。

そのトーマスを勇気付け、勝利に導いたのが、自動車事故で入院中のタイガー・ウッズでした。

タイガーはこの前週の「アーノルド・パーマー招待」でも、やはり先行するリー・ウエストウッドを逆転し、優勝したブライソン・デシャンボーに大きな力を与えていました。

「辛抱強く、辛抱強く」

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「ザ・プレーヤーズ選手権」の優勝後の記者会見でトーマスは、スタート前にタイガーからメールでいくつかのアドバイスをもらったと明かしました。

「僕はタイガーの言葉を頭の中で何度も何度も繰り返していました。“ステイ・ペイシェント(辛抱強く)”。今日はいいパッティングができていたのに、それがカップインしなかった。それで、僕は辛抱強く、辛抱強くと努めた。だって、この大会では過去、バック9で信じられない展開をいくつも目にしてきたから」

実際今回も、トップに並んでいたウエストウッドが17番パー3で、短い距離のパーパットをリップアウト(カップに蹴られる)。

さらに、トーマス自身も18番パー4のティショットを引っかけ、あわや池ポチャという場面もあり、最後まで優勝の行方がわからないゲーム展開でした。

「辛抱強く」というタイガーの言葉は、この日のトーマスにとって最も大事な姿勢だったのかも知れません。

「勇気を持って果敢にプレーしろ、ミスター・パーマーが語っていたように」

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タイガーは、この前週の「アーノルド・パーマー招待」で逆転優勝を遂げたデシャンボーに対しても、最終日の朝、テキストメッセージ(メール)で勇気付けていました。

トーマスも、デシャンボーも、タイガーがキャプテンとして率い、優勝に導いた2019年プレジデンツカップのチームUSAのメンバーです。

「タイガーとは、何が起ころうとも闘い続けることについて話し合いました。“勇気を持って果敢にプレーしろ、ミスター・パーマーが語っていたように”ということです。タイガーがいま立ち向かっていること(負傷からの回復)を思うと心は重くなったけど、今日僕は自分に言い続けました。何度倒されようが関係ない、そのたびに立ち上って前進することだ、って。それが、今日僕がやったことです」

と、タイガーとのメッセージのやり取りを明かすと、デシャンボーは涙をこらえるのでした。

「タイガーは僕のすべてです」

「アーノルド・パーマー招待」の前週に開催されたWGC「ワークデイ選手権」を制したコリン・モリカワもまた、タイガーに支えられた選手でした。

優勝インタビューでは、入院したばかりのタイガーに向け、「タイガーは僕のすべてです。だから彼が事故に遇っても、無事だった(生きている)ことはありがたいし、早いカムバックを願っています。僕らは、彼に十分なだけの『ありがとう』を言っていないと思います。だから、ここで僕はタイガーにありがとうと言いたい」と感謝と早期回復を願う思いを口にしていました。

そして、1ヶ月余前に亡くなった祖父への想いも重なり、トーマスやデシャンボーと同様、涙をこらえたのです。

タイガーを兄のように慕い、またタイガーをアイドルとして憧れ、成長してきた彼らが、タイガーの事故後、続けて優勝したのは単なる偶然ではないのかも知れません。