なぜアメリカの始祖ゴルファーたちは「アップルツリーギャング」と呼ばれたのか?

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なぜアメリカの始祖ゴルファーたちは「アップルツリーギャング」と呼ばれたのか?

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ゴルフは紳士淑女のスポーツ。

マナーを重んじるのは当たり前、立ち居ふるまいに品格があればなお、結構。

加えて、同伴者を楽しませる会話なんてできちゃえばスコアはともかくプレーヤーとしては一流ですね。

そんな会話のネタとしてゴルフのトリビアを仕込んでおけば、理知的に見えること間違いなし! です。

プレーヤーをちょっと理知的に見せるトリビア、1回目はアメリカ初のゴルファーであるアップルツリーギャングに関するエピソードです。

最初は裏庭の3ホールから

最初は裏庭の3ホールから

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アメリカの始祖ゴルファーは諸説あるものの、現在の定説はジョン・リード、ロバート・ロックハート、ジョン・アップハム、ハリー・ホルブルック、レンリー・トールマッジ、キングマン・ブットナムの6人と言われています。

その根拠は彼らが地元ヨンカーズ(ニューヨーク州)で作ったセント・アンドルーズ・ゴルフクラブの創設が、アメリカのゴルフ史でもっとも古い1888年と記録されていることにちなんでいます。

6人は最初、クラブやボールをスコットランドから取り寄せたジョン・リードの裏庭を使い、約100ヤードほどの3ホールでプレーしていましたが、あまりに面白いので次に30エーカー(およそ12ヘクタール、12万平方メートル)の農場を借り、6ホールを作りました。

しかし、その農場がニューヨークの市区改正で取りつぶしになったことや、クラブの会員数が増えたことから、別の場所を借りる必要に迫られました。

グループではなくギャング?

グループではなくギャング?

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そこでセント・アンドルーズ・ゴルフクラブは近隣のウェストン・エステートにあったリンゴ農園を借りることにしました。

ここでも6ホールを作り、スタートホールにある大ぶりのリンゴの木を仮のクラブハウスとして、仕事を終えたメンバーはスタートホールに集まってジャケットを木の枝にかけ、プレーを楽しみました。

……と、ここまでは有名な話。

でも、これだけでは「アップルツリーゴルファーズ」であっても「ギャング」ではありません。

ギャング(gang)は確かに集団という意味ですが、あまり素行のよろしくない集団に対して使われる言葉で、一般的な英語で集団を表す言葉はグループ(group)でしょう?

なぜ、アメリカの始祖ゴルファーたちは「アップルツリーギャング」と呼ばれたのか?

アメリカのゴルフ・サイトでも解説がなかなか見つからなかったのですが、本国スコットランドのゴルフ史家にも劣らぬ博識を持つ摂津茂和(せっつもあ)氏の著書「ゴルフ千夜一夜II」から信ぴょう性のあるエピソードが見つかりました。

以下、その要約です。

リンゴの木でキンコンカン!

リンゴの木でキンコンカン!

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セント・アンドルーズ・ゴルフクラブの会員たち、最初はリンゴの木の間を縫うようにしてボールをフェアウェイに運んでいましたが、ちまちましたゴルフが性に合わないプレーヤーはどこにでもいるもので、1人がニブリック(9番アイアン)でリンゴの木の上を越す高いボールを打ちました。

もちろん、これならリンゴの木がハザードにならずダイレクトにグリーンを狙えます。

かくして、他のプレーヤーもフェアウェイなど通さず一斉にリンゴの木の上を越す高いボールを打つようになりました。

とはいえ、誰もがグッドショットとなるわけではなく、当然、ミスもします。

そのミスショットはリンゴの木に当たり、日本の林間コースでよく聞く「キンコンカン」がゴルフをしない近隣住民に響き渡ったそうです。

働く場所のリンゴ農園で棒きれを振り回し、お金を稼いでくれるリンゴの木にボールをぶつけて騒音を起こすのですから、確かに「厄介者」には違いありません。

以後、近隣住民は彼らを「アップルツリーギャング」と呼ぶようになり、それがいつの間にか話の後半が省略されて、アメリカ始祖ゴルファーの代名詞になりました。

確かに、1日の仕事を終えてクラブハウス代わりの木に上着を掛け、仲間とゴルフに興じるという部分までは牧歌的でいかにも始祖のイメージですね。

でも後半、ギャングと呼ばれ始めた部分には興味深い内容が含まれています。

リンクスとリンゴ農園の違い

リンクスとリンゴ農園の違い

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それはゴルフ発祥地スコットランドとアメリカのゴルフの違い。

リンクスは風が強いので低い球筋、転がるボールを基本としていることに対し、リンゴ農園のゴルファーたちはハザードを越える高い球筋、ダイレクトにグリーンを狙う攻略法などを生み出しました。

この違いは現代にも脈々と受け継がれています。

イギリスで生まれたスポーツを固定観念にとらわれず、新しい解釈で自由に代えていくあたり、いかにもアメリカの風土が感じられて筆者個人的には後半部分のほうが好きです。

彼らはともかくとして、今でも「ギャング」と呼びたいようなゴルファーを国を問わず、時々見かけます。

日本には「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがあります。

せめて自分は「ギャング」と呼ばれないようにゴルフをしたいものですね。

ちなみに仮のクラブハウスとなったリンゴの木は、現在もヨンカーズのパリセード・アベニュー626番地に記念樹として残されています。

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Taddy Bear

大手建設会社の月面都市計画から押入れのカビの取り方まで、あらゆるジャンルの記事を書き続け、気がつけばキャリア30年のライターです。 ゴルフ関連ではプロから著名人、アマチュアまで幅広い人物のインタビューを中心に執筆していました。仕事での関わりは長くても、ゴルフの楽しみはまだまだ入り口しか知りません。 皆様と一緒に楽しめる記事を書きたいと思っています。 なお、Kindleにて短編集「アームチェア・ゴルファーの優雅な午睡」などを出版しています。 https://headlock2004jp.wixsite.com/taddybear

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