Gride

gettyimages/1188417811
getty

ゴルフスイング

Taddy Bear

スランプに陥ったらブレンドン・トッドに学ぶ!

個性的で華やかなスター選手が活躍する米国男子ゴルフツアー(PGAツアー)。

その中でブレンドン・トッド選手はどちらかというと地味な存在。2020年終了時点の世界ランキングは47位、今シーズンの賞金ランクは79位(2021年2月16日現在)。

それでも、トッド選手を注視しているコアなファンは少なくありません。

その理由は、トッド選手が劇的な復活を遂げたからです。

スランプから復活して獲得したシード権の価値

getty

2019年、トッド選手は11月のバミューダ選手権、マヤコバ・クラシックと2週連続で優勝を遂げています。

その後のインタビューで次のようなコメントを残しました。

「何もかもが変わった。人生がまったく違うものになった」

もちろん、観念的な意味もあるでしょう。

しかし、PGAツアーに出場することを目的としているトッド選手にとって(それから多くの他の選手たちにとっても)物理的であり、切実な意味を持っています。

トッド選手はこの2勝によって、2022〜2023年シーズンまでのシード権を得ました。

PGAツアーに参加する選手にとって、シード権を得るために戦う相手はしのぎを削るライバル達だけではありません。

選手生命を脅かす病気やケガ。それから、スランプ。

ベテランだけでなくハンター・メイハン選手やカミロ・ビジェガス選手なども極端なスランプからPGAツアーのシード権を失っています。

トッド選手も、かつてはその1人でした。

2018年はワールドランク2043位

getty

ブレンドン・トッド選手は現在、35歳。

PGAツアー初優勝は2014年のHPバイロン・ネルソン・クラシックですから、2勝目は5年ぶり。

もっとも、PGAツアーで5年間優勝できなかったというのは珍しい話ではありません。

トッド選手の2勝目(または2週連続優勝)が注目されたのは、極端なスランプに陥ってからの復活を遂げたからです。

原因はスイングの改造。これ、トッププレーヤーにとっては大きな賭けです。

初心者やアベレージゴルファーが時折、口にするスイング改造はスイングを基本に近づけるだけ。

この点、混同しないように。

現状のスイングでも優勝できるのだから、その点に磨きをかければいいのに、と素人は思うところですが、やはり現状より上を目指したいのがプロ。

しかし、結果は裏目に出ました。

2016年は29試合に出場、予選を通過したのはわずか4試合、しかもすべて下位の成績で賞金ランクは212位。

2017年はシード権を失ったため9試合しか出場できず、予選を通ったのはAT&Tバイロン・ネルソン選手権だけで、結果は70位タイ。

2018年は6試合に出場しただけで、ワールドランクは2043位まで下がりました。

PGAツアーで1勝もできていない選手は大勢います。

1勝を挙げただけでも優れた選手と言えますが、その後のスランプを考えると、まさに奈落の底。

ブレンドン・トッド選手の名前はPGAツアーから忘れ去られようとしていました。

たとえ不調でもツアープロを続けようと決意

getty

「4番アイアンや3番ウッドを使うと必ず右に50ヤード曲がる」

トッド選手が陥ったのは極端なスイングイップス。

右に行くのが怖いから左に打とうとすれば、当然、スイングが崩れるだけでなく全体のリズムまで壊れてきます。

ある試合では大ダフリして30センチもあるターフを飛ばし、それをしっかりとテレビで中継されていました。

あまりのスランプからプロを引退し、ピザのフランチャイズでもやろうかと考えたことも。

しかし、自分にビジネスは向いていないと思い直し、復活の兆しはなくてもプロを続けようと決心しました。

そんな時に出会ったのがオーストラリアのプロゴルファー、ブラドリー・ヒューズの著書『グレイト・ボールストライカー』。

直接会いに行くほど感銘を受けたトッド選手にプロプレーヤーとしての感覚が蘇ってきました。

スランプに陥ったら試行錯誤よりも原点回帰

getty

とはいえ、極端に陥ったスランプがすぐに回復するわけではありません。

2019年に2連勝するまで、3戦に予選通過するとその後3戦で予選落ち、といった不安定な成績で、特に優勝する前の試合で予選通過する前には4週連続で予選落ちしていました。

その間、トッド選手はどのような練習をしていたのでしょうか? 決して、イップスを直すための練習ではありません。

妻と子供が寝静まった後、地下の練習施設に入り、ゴルフ用のサンドバッグを延々と打ち続けていたのです。

地味ですが、とても基本的なドリルですね。

アマチュアであれば引退はありません。クラブを置くのは病気とか加齢で振れなくなった時。

それでも、スランプに陥った時はクラブを放り投げたくなるでしょう。

でも、ゴルフの愉しさが身に染みついていれば、それができないのも事実。

だからといって、スランプに効きそうなアドバイスをすべて聞き入れようとするのはとても危険です。

スランプは急に襲ってくるけれど、回復には時間がかかります(練習不足による不調は決してスランプではありません)。

そんな時はまず基本に立ち返ること。ボールの行方でスイングを矯正しようとせず、基本動作の繰り返しだけを念頭に置いて練習しましょう。

アドバイスを聞き入れる時はインスピレーションを大切に。

疑問が感じられるアドバイスは決して身に付きませんし、スランプをさらに混迷させる原因にもなります。

スランプに陥ったきっかけ、原因は本人にしかわかりません。

たとえ上級者やプロでも、スイングの悪い点を指摘することはできても原因の解決は困難。

地道に、基本的なドリルを繰り返し、スランプから脱出してください。

かつての、自分のポテンシャルを信じれば、必ず復活できます。