ゴルフスイング
Nick Jagger
パッティングの最重要事項は、方向性よりも距離感
取り立てて複雑ではない傾斜のあるグリーンでの、15メートルほどのロングパットを想像してみてください。
仮に、ラインの読みが間違っていたとしても、3メートルも左右にずれることはほとんどないでしょう。
ところが、距離感を間違えてしまったら、簡単に3メートル以上ショートしたり、オーバーしたりしますよね。
3パットをしてしまうのは、ほとんどの場合、イメージ通りの距離感を出せなかったか、あるいは最初から距離感のイメージを持たずにストロークしていたからです。
まずは距離感を第一に考える
曲がるラインで距離感が合わないと、方向までが大きくずれてしまいます。
タッチが弱過ぎれば、イメージした曲線の頂点よりも手前で曲がり始めます。
これはいわゆる「タレた」転がりになってしまい、傾斜によって予想以上に曲げられてしまい、またしてもイヤな距離の曲がるラインが残ってしまいます。
反対に強過ぎてしまいますと、想定した曲線の頂点よりも先でやっと曲がり始め、傾斜を十分に下りてきてくれません。
この場合も、下りで曲がる非常に難しいラインが残ってしまうことでしょう。
シンプルな上りのラインならば、そこまで難しくならないかと言えば、そんなこともありません。
上りのラインで強過ぎてしまえば、決して安心して打たせてはもらえない下りのラインが残ってしまいます。
弱過ぎてしまえば、またしても上りのラインです。
「上りの真っすぐなラインならば、しっかり打てばいいだけのこと」というゴルファーもいるでしょうが、上りの傾斜における重力による影響をそんなに甘く見てはいけません。
上から水が流れてきて、転がりに対する抵抗がかかっていると考えればよくわかります。
正確にラインに乗せなければ、上りの真っすぐなラインは入らないのです。
3パットを避けたいのならば、方向性よりもまず距離感を磨けということになります。
実際、ラインの読みについても、確かな距離感があってこそ、より具体的に見えてくるものなのです。
つまり、ボールを転がす際のベースになる感覚は、距離についてのタッチだということです。
感性を生かすために歩測はしない
距離感を出すための方程式として、カップまでの距離を歩測してから、パターの振り幅を決めるという方法があります。
これを実行するためには、まず前提として、歩測した距離に応じて、どのくらいの振り幅にすればいいかという目安を作っておくことが必要です。
しかし、果たしてその目安ですべてのパッティングに対処できるでしょうか?
例えば、カップまで5歩という距離で少し上りというケース。
上っていることを考慮して5歩半の振り幅で打てば、ちょうどいい……のでしょうか?
もちろん、それで距離が合っているのであればいいのですが、距離感が今ひとつ合っていないというゴルファーが、あるいはよくあることですが、今は合っているが突然合わなくなった時や、これから距離感を身に付けようというビギナーには、歩測をして振り幅を決めるという方法はお勧めできません。
歩測して振り幅決める方法は、意識が「どのくらい振ろうか」と自分の動きに向きます。
その意識がターゲットに向かわなくなってしまうのです。
それが、歩測する方法を使うお勧めできない理由の1つです。
感性を磨くことがパッティング上達の近道
同じゴルフコースであっても、グリーンの速さも傾斜の度合いも何もかも、同じパッティングラインなんて2つとありません。
常に違うラインですし、仮に同じ距離であっても同じタッチで入るとは限らないところがパッティングの難しいところと言っていいかもしれません。
パッティングというものは、その場その場で一発で距離感を合わせなければいけないものです。
それならば、どのようにして距離感を出したらいいのかというと、目から入るさまざまな情報や感覚で受け止めたものをすべて総合して、イマジネーションを働かせて頭の中で描くイメージから距離感を出すのです。
そして、そのイメージどおりの転がりを出すことができるかどうか、そこを磨けば、その場その場の一発で距離を合わせることができるようになります。
少なくとも、歩測と振り幅で対応するよりも、結果は良くなるはずです。
事実、パッティングの名手と言われるプロは「この振り幅で何メートルだ」なんていう目安は持っていないのです。
パッティングにおいて、より高い次元にまで達しようとすれば、歩測と振り幅では不可能なのです。
それならば、感性を磨くほうがずっと近道であり、もしかすると唯一の道とも言えるかもしれません。
最初から歩測して振り幅で対応するのは、自分の感性に蓋をして、新たな目安を作ろうとするようなものです。
その目安で対応できなくなった時に、「やっぱり、感性を生かす方法を身に付けようかな」とするのは、無駄な遠回りです。
できれば、打ち出しからカップまで転がっていくスピードの変化を、最後のひと転がりで止まるところまでつなげてイメージできるようにしたいものです。
そのイメージが、すなわち距離感と言えます。