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ゴルフスイング

Yanagi@TPIトレーナー&ドラコンプロ

『インナーゴルフ』に学ぶ潜在能力の発揮方法

『インナーゴルフ』は、心と身体の連携に着目し、「最高の能力発揮とは何か」に迫った「集中力の科学」について説いた本です。

最高の1打を打つために、心はどうあるべきか、どう集中力を高めるか、ゴルフとの向き合い方について解説しています。

『インナーゴルフ』の基本法則では、【我々が発揮する能力=本来の潜在能力-能力発揮を妨げる妨害活動】と考え、いかにして心の妨害行為を抑制するかに着目します。

今回の記事では、潜在的に内在している能力と実際に発揮されるパフォーマンスの無用なギャップを埋め、常に潜在能力の上限まで実力を発揮するためのファーストステップをご紹介します。

球聖ボビー・ジョーンズの教え

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ゴルフスイングはあまりにも複雑な筋肉の複合動作から成り立っているために、スイングを「物理的な意識で意図的にコントロールする」ことは不可能だ。従って我々は、長い時間をかけた練習によって育まれた、本能的な反射運動にそのほとんどを頼るしかない。私の経験によれば、この本能に完全に依存すればするほど、意図してコントロールしようとする主観的な意識から脱却できる。その分、より完全に近いショットを放つことができる。手法に関するすべての思考を排除し、強い集中力を目的にのみ絞り込むことこそ、優れたショットの秘訣なのだ。足の位置や、左腕の動きに気が散っているとき、すばらしいショットが生まれることはまず有り得ない。
VAVITY FAIR(1929年記事より抜粋)

どんなに素晴らしいコーチから指導を受けたとしても、完璧なスイングを身につけることは難しいものです。

しかし、現時点で自分の持てる能力をすべて発揮できるような、ゴルフに対する心のあり方を身につけることは可能であり、また現実的であると言えます。

様々なゴルフ理論に触れていると、何をすべきか(should)にとらわれ過ぎてしまい、思考と身体とが分離してしまいます。

スマートフォン1つあれば動画レッスンも簡単に受けることができる時代です。

私たちの周りには、「◯◯しましょう」「◯◯の動きはNGです」といった、「すべき」ことで溢れています。

しかし、ゴルフと上手に向き合うには、今この瞬間のクラブヘッドや自分自身の筋肉の動きを生のまま(is)感じとることが大切なのです。

セルフ1とセルフ2による自問自答

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みなさんはゴルフのプレー中に、こんな会話を自分の頭の中で繰り広げることはないでしょうか?

「左サイドはOBか……前のホールのティーショットはチーピン出ていたから気をつけないと」

「こんなベスポジからダフってショートしちゃった。何やってんだ!!」

「5番アイアンちゃんと打てるかな……スライスしたらセカンドOBの可能性もあるぞ……」

などなど、決してポジティブではない会話を頭の中で繰り広げていると思います。

『インナーゴルフ』では、この声の主を「セルフ1」と名付け、実際にプレーしている自分自身を「セルフ2」と名付けています。

「セルフ1」は、単にボールの打ち方を指示するだけでなく、過去のミスを責め、将来のミスに対して警告を発し、失敗のために叱責します。

「セルフ2」は、反論ないしそれを聞かされる存在で、両者の基本的な関係は、不信感のみなぎる間柄です。

「セルフ1」は、「セルフ2」が正確にボールを打てることを信じておらず、その不信感が満足するまで、「セルフ2」に指示します。「セルフ1」は、筋肉をコントロールしようとし、ひどく理屈好きな喧(かまびす)しい存在です。

いいショットを打つには、この「セルフ1」を黙らせ、「セルフ2」が自由にボールを打つための「集中の技術」を身につける必要があるのです。

「セルフ1」を黙らせ潜在能力を発揮するコツ

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それでは、「セルフ1」を黙らせ、潜在能力を発揮するためには私たちは何をすればいいのでしょうか?

その最初のステップは「自分自身を感じ取る」ことから始まります。

「スイングを変えたい」=「何かしらの変化を起こしたい」

という場合、ますは今の状況をより良く知覚することが大切です。

そこにあるものをさらに深く感じ取り、より正確に知ることが必要なのです。そのために、まずはスイング中の体の感覚のどこか1点に注意を絞り込みます。

例えばインパクトの際にクラブヘッドの向きがオープンなのかクローズなのか、スクエアなのか感じ取ってみます。この時、スイングを評価してもいけませんし、スクエアに打とうと考えてもいけません。

単純に、純粋に、手と指の感覚で感じ取るだけです。

その結果、自分自身の体験そのものに集中することができ、その体験によって自修(自ら学んで身に付けること)作用が働き始めます。

そして、クラブフェースの向きの微妙な差異を感じ取るようになり、この知覚力の増加がスイングを自然に習得・習熟させるのです。

その他にも、腰の回転であったり、フェースの通り道であったり、様々なポイント1箇所に集中しながら練習を重ねていきます。

この知覚力を高めることが、「セルフ1」を黙らせる最初のステップです。

スイングに対して自己判断や評価をせず、あるがままをとらえてそれを受け入れることだけを行います。

この練習方法によって自己不信や欲求不満を排除することから始めるのです。

そうすることによって、本来持っているはずの「自修作用」が向上し、まるで子供が自然と歩き始めるように、自然に覚え、学び取り、上達する能力が再び目を覚ましてくれます。

これが、「セルフ1」を黙らせ、潜在能力を発揮させるためのファーストステップです。