プロゴルファー
こせきよういち
世にも恐ろしい話、今週は「打ち込み」~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#59
今週の米ツアー競技は「ジェネシス・オープン」。
舞台はロサンゼルスの名門クラブ「リビエラCC」。2028年に同地での開催が決まったオリンピックでゴルフ競技が実施されるならば、その有力な会場候補です。
ところで、今年の「ジェネシス・オープン」は米ツアー復帰2戦目となるタイガー・ウッズが出場することで話題を集めていますが、優勝候補の筆頭となると、やはり昨年のチャンピオン=ダスティン・ジョンソンでしょう(上記写真)。
先週の「ぺブルビーチ・プロアマ」は最終日をトップで迎えながら、スコアを伸ばすことができず2位タイに惜敗しましたが、その前の出場試合「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(以下s、セントリーTOC)」は2位に8打差をつけての圧勝でした。
その「セントリーTOC」で、彼がやってしまったのが、前の組への打ち込みです。
今回は、本来あってはならない、ゴルファーが最も気をつけなければならない「打ち込み」の動画を紹介しましょう。
382ヤード先のグリーンに打ち込んだダスティン・ジョンソン
まずは「セントリーTOC」で圧勝したダスティン・ジョンソン。
この試合では最終日にホールインワン寸前まで行った12番パー4(433ヤード)でのスーパーショットが話題になりましたが(本連載の#54で紹介)、実はその前日にも6番パー4(382ヤード)でホールインワンか!? と思わせるシーンがありました。
ただし、そのグリーン上ではまだ前の組がプレー中、つまり打ち込んでしまったのです。
幸いボールは下り斜面を転がってグリーンに届いたという状況でしたので、前の組のプレーヤーを脅かすことはなかったと思います。
ですが、これはゴルファーとして絶対にやってはいけないこと。
ジョンソンもヒヤリ、心に動揺があったのかも知れません。このホール、ほぼワンオンしながら、結局バーディを獲ることはできませんでした。
ちなみに、先の#54でも触れましたが、米ツアーで記録されたパー4での唯一のホールインワンは、2001年のFBRオープン(現・ウェイストマネジメント・フェニックスオープン)初日に、17番ホール(332ヤード)でアンドリュー・マギーがマークしたもので、その一打も前の組への打ち込みでした。
マギーが放ったティショットがグリーン上でプレー中のトム・バイラムのパターに当たり、転がる方向が変わった結果、ホールインしたものです。
436ヤード先のグリーンに打ち込んだロリー・マキロイ
ドライバーの平均飛距離の昨季スタッツを見ると、ダスティン・ジョンソンは平均315ヤードで2位。
そして、1位にランクされたのが、平均317.2ヤードのロリー・マキロイでした。
そのマキロイも以前、前の組への打ち込みをやらかしています。
2014年のスコティッシュ・オープンの初日、13番パー4でのことですが、その距離はなんと436ヤード。
さすがのマキロイも436ヤード先のグリーンには届くはずないと判断し、ティーショットを放ったのでしょう。
ところが、これが下り傾斜の硬いフェアウェイを弾んでグリーンに乗ってしまったのです。
このことを伝えるイギリスメディアの記事には、
「グリーンに上がったマキロイはバツが悪そうに、(グリーン上でプレー中の)イアン・ポールターに謝罪したあと、ニヤリと笑って『3番ウッドだったんだけどなぁ』とつぶやいた」とあります。
もちろん、これはポールターをビックリさせるためのウソ。マキロイは“いたずらっ子”なんです。
後ろの組のアマチュアに打ち込まれたジョーダン・スピース
最後は、先週の「ぺブルビーチ・プロアマ」での打ち込みです。
打ち込まれたのは、ジョーダン・スピース。
スピースが5番パー3のティーでいままさにティーショットを打とうとした瞬間、何かから避けるように頭をかがめました。
この動画では飛んで来たボールは確認できませんが、隣の4番グリーン手前にあるフェアウェイバンカーからアマチュアのレイ・ロマーノ(コメディアン)が放った、いわゆる“ホームラン”のミスショットでした。
動画の終わりに、ロマーノのリカバリーショットのアドレスが映されていますが、その位置からすると、打ち込まれたボールはスピースの頭上をかすめて飛んできたようです。
それにしても、見事なのは打ち込まれたスピースの態度。あやうく当たりそうだったにもかかわらず、リアクションはとても冷静です。
相手がアマチュアであるからか、怒ったそぶりを見せずに、すぐに仕切り直し。そのティーショットはグリーンにオン、パーでホールアウトしています。
でも、普通は「打ち込み」をされたほうも、したほうも、大きな動揺が走り、しばらくはプレーに集中できないでしょう。
楽しい一日を台なしにしないよう、くれぐれも「打ち込み」回避を心がけてください。