プロゴルファー
こせきよういち
たくましき妊婦プロたち~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#189
今週の国内女子ツアー競技は、例年なら日本とアメリカの共同主管で開催される「TOTOジャパンクラシック」。今年は新型コロナウイルスの影響で海外からの入国規制が敷かれているため、日本女子ツアー単独の特別公認競技として開催されます。
そこで注目される選手のひとりに、横峯さくらがいます。
彼女は現在、妊娠7ヶ月。来年2月下旬出産予定の妊婦です。
そんな体でツアー競技でプレーするなんて、どうなの!?
それに対して彼女は、「妊娠したらゴルフはできない」「ゴルフはしないほうが無難」と考えがちな日本の後輩プレーヤーたちの刺激になればと、「(妊娠に対する)選択肢が広がったらうれしいなと考えていました」と出場を決めたそうです。
でも、それは彼女が米女子ツアーのプレーヤーたちから学んだことと語っています。
そこで今回は、米女子ツアーのたくましい妊婦列伝です。
女子プロ界のレジェンド=ナンシー・ロペスは“身重”で2度優勝!
国内ツアーでも、いわゆる“身重”ながらツアーでプレーした女子プロはこれまで何人かいました(そのことは、本サイトでも以前に取り上げた記事があります。下記リンク先参照)。
なかでも、1999年のヨネックスレディスでは、妊娠6ヶ月の野呂奈津子が見事、逆転優勝!
「3日間プレーすることだけ考えていたので、まさか優勝できるとは思ってもいませんでした。最終日は、調子が良く子供が助けてくれたのかと思うほどでした。私にとっては、二人で戦って二人で勝てたことが最高の思い出でもあり、女性冥利に尽きます。ゴルフをしていて、プロゴルファーで本当に良かったと思った1勝でした」と喜びを語っています。
ところが、米女子ツアーにはその偉業を2度達成した“強者”がおります。
「世界ゴルフ殿堂」入りのナンシー・ロペス(上掲の写真)がその人。
1983年のJ&Bスコッチ・プロアマでは、第一子のアシュリーちゃんを、1991年のサラ・リークラシックでは、第三子のトリーちゃんを、それぞれお腹に宿しながら優勝しています。
2度目の妊婦優勝時には、「私は自分のことをわかっているし、自分のゲームをプレーすれば勝てると信じていました」と勝利にも泰然の構え。
出産を経験済みの「母は強し!」なのでした。
1年の間にツアー優勝・出産・メジャー制覇
“強者”をもう一人。イギリスのカトリオナ・マシュー(ロイヤル&エンシェントGCの名誉会員)。
彼女は米女子ツアーで通算4勝をマークしていますが、うち1勝は2008年8月、第二子のソフィーちゃんを出産して11週後に開かれた、メジャー競技の「全英女子オープン」でした。
しかし、彼女はその年の1月、ソフィーちゃんを宿した身で、ブラジルで行われた「HSBCブラジル・カップ」を制していたのです。
ただし、この試合(09年~12年に実施)は米女子ツアーの日程に組み込まれてはいましたが、36ホールの競技で賞金ランキング対象外でした。
それでも、1年の間に「ツアー優勝・出産・メジャー制覇」とは、決して男には真似できません(当たり前ですが……)。
ソルハイムカップでは妊婦同士が対戦
最後は、2005年のソルハイムカップ(2年に一度開催される、欧・米の女子プロゴルフ対抗戦)で実現した妊婦同士の対決です。
アメリカ代表のローラ・ディアズ(上掲の写真)は妊娠6ヶ月。一方、欧州代表のイベン・ティ二ング(デンマーク)は妊娠16週間。
二人は大会最終日のシングルス全12マッチの第4マッチで対戦。
妊婦同士の対決は、より“身重”なディアズが“身軽”なティ二ングに6&5で圧勝しています。
でも、今回の横峯さくらに、彼女たち“強者”の再現は望みません。いつものように、明るく元気にプレーする姿を見せてくれるだけで十分です。