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おっ3

厳しい世代交代の荒波……今年で一線を退く決意をした女子プロたち

2009年に横峯さくらプロと賞金女王争いを演じた諸見里しのぶプロは、33歳という若さで、2019年シーズンを最後に第一線を退く決心をしました。

他にも、29歳の大江香織プロ、35歳の佐伯三貴プロ、31歳の一ノ瀬優希プロの姿を今後トーナメントで見る機会は、推薦などで出場する場合に限られるでしょう。

厳しい世代交代が急激に進んだ2019年。女子プロゴルフ界にはいったい、いま何が起こっているのでしょうか?

急激な成績の降下はなぜ?

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流れるような美しいスイングから正確なショットを放ち積み重ねた勝利は、ツアー通算9勝! 初優勝は2006年のSANKYOレディースオープンです。

まだ20歳だったと思います。

しかし、賞金ランクは2009年をピークに徐々に下降線をたどり、2019年は予選通過なしのため獲得賞金はゼロでした。

平均ストロークも同様に2009年の71.0531をピークに、2016年は75.9376(この年も獲得賞金ゼロ)、2019年は75.7368でした。

年間平均ストロークが75を切らないと、賞金を獲得することは難しいようです。

スタッツを分析すると、さらに厳しい現実が見えて来ます。

2009年は、平均ストロークは5位ですが、34試合に出場して、トップ10入りはなんと20回です!!

出場すると半分以上はトップ10に入るのは驚異的です。

最も3パットを打たず、ダブルボギー率も全体で3位と極めて安定した数字を残しています。

この年のパーオン率は69.1895%です。

しかし、2019年には54.3860%と約15%も下降しています。

そして、ドライビングディスタンスは217.13ヤード。元々飛距離が出るほうではありませんが、賞金女王に輝いた鈴木愛プロは242.69ヤード(25位)です。

比較すると25ヤードのビハインドがあります。

諸見里プロの場合、コース全長が伸びる中、若手選手に飛距離で水を開けられ、それを技術で補うゴルフができなくなってしまったのではないかと思います。

3パット率、ダブルボギー率も良くない数値が並んでいるため、飛距離ばかりではなく、アプローチやパットでも苦しんだことが伺えます。

諸見里プロは、自身のゴルフを見失ったように思います。

モチベーションの低下……

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153センチと小柄ながらも、ガッツ溢れるプレイでツアー通算3勝を挙げた大江香織プロは、『モチベーションの低下』を一線を引く理由として挙げています。

2018年も、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメントで優勝を飾り、獲得賞金もキャリアハイの3601万7623円を稼ぎ、シードも獲得しています。

年齢もまだ29歳と若く、モチベーションの低下を招くような状況ではないように思えてしまいます。

ここからは、『おっ3』の想像と妄想も交えて書かせてください。

『おっ3』が注目したのは、平均パット数(パーオンホール)です。

元々長尺パターを使っていたので、パッティングには何らかの問題を抱えていたと想像できます。

2016年シーズンからアンカリング禁止になり、大江プロの武器である長尺パターを中尺に変更しています。

ツアー初優勝を飾った2012年以降の平均パット数の推移を見てみましょう。

2012年 1.8276 35位
2013年 1.8248 43位
2014年 1.8165 39位
2015年 1.8394 46位
2016年 1.8225 32位
2017年 1.8393 45位
2018年 1.8458 55位
2019年 1.8706 88位

中尺パターに変えてからもなんとか数字を残して来ましたが、2019年は大きくその順位が後退しています。

大江プロがイメージするゴルフと、現実の差が広がって来たことが、モチベーションの低下を招いたのではないでしょうか。

ケガとの戦い

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佐伯プロは、2019年も1ラウンド当たり平均パット数は29.1079で、全体で4位とパット巧者ぶりは健在でした。

しかし、年間獲得賞金5位にランクインした2012年と比較すると、後半に強い勝負師の面影がなくなって来たようです。

というのも、2012年には4thラウンド平均ストロークが、68.3333で1位と決勝ラウンドで強さを発揮していましたが、2019年には、73.6667で60位大きく後退してしまいました。

その理由は、恐らくケガだと思います。

2012年には首、2015年には手首と、ゴルファーにとって最もプレイに支障を来たしやすい部位を手術しています。

トーナメント前半は、痛みや違和感をだましながらプレイできても、勝負所ではそれが悪影響したのではないでしょうか?

元々、強気の攻めのゴルフが身上のプロです。

恐る恐るスイングするようなスタイルは本意ではなかったことと思います。

佐伯プロは、ケガのために思うようなプレイができなくなったのだと思います(プロ野球、広島東洋カープの今村投手との交際が報じられています。新しい幸せをつかんでほしいものです)。

思わぬケガが……

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2013年には、ツアー初優勝とキャリアハイの賞金ランク13位という好成績を納め、翌2014年には、シーズン2勝と順調にトッププロへの道を歩み始めたかと思われた一ノ瀬プロ。

オフシーズンになると、都内のゴルフ練習場に頻繁に姿を見せて、黙々とボールを打つ姿が印象的でした。

そんな努力家の一ノ瀬プロを、思わぬケガが襲いました。

今年2月、合宿中に転倒した際に骨折してしまった左肩のダメージは思いの他大きく、満足にスイングもできない状態だったようです。

2014年には、左胸郭出口症候群という厄介な神経の病気にも罹患。

痺れや痛みと戦いながらのシーズンを過ごしていた所に、前出の骨折が重なってしまったようです。

一ノ瀬プロも、ケガのためにトーナメントで戦うことが難しくなってしまったのだと思います。

アマチュアが参考にできること!

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『黄金世代』とか『プラチナ世代』という20歳そこそこの若手プロの台頭が、優勝経験のある中堅女子プロの決断を促したことは間違いありません。

しかし、『モチベーションの低下』や『ケガ』は我々アマチュアゴルファーにとっても他人事ではありません。

『アマチュアだからモチベーションは関係ない!』と思う方もいらっしゃるでしょう。そんな事はないと思います。

『上達が思うに任せない』『寒いから』『人を集めるのが面倒』

こんなことの積み重ねで、モチベーションが低下することはあると思います。

生涯スポーツのゴルフを、こんなことで諦めてしまってはもったいないです。

我々アマチュアは、アマチュアなりのモチベーションを持ち、ケガを防ぐ工夫をしましょう。

そして、楽しくプレイするための環境を自分で作りましょう。

諸見里プロ、大江プロ、佐伯プロ、一ノ瀬プロ、お疲れ様でした。これからのご活躍を願っています。