プロゴルファー
こせきよういち
競技より安全第一~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#116
先週の欧州/アジアンツアー競技「メイバンク選手権」は最終日、残すは最終組の最終ホールのパッティングのみというところで雷雨が激化。
あと10分も強行すれば競技を終えられるような場面でしたが、ツアー側は競技を中断。
競技再開まで1時間40分も待つことになってしまいました。
でも、雷には誰も勝てません。大人しく退避するのが一番。
そして、そのお陰で、この試合では再開後にとてもエキサイティングなシーンが見られたのです。
安全第一で中断を選択したお陰でミラクルが
Final group on the green, then this happens and they all leave the course. The lightning is loud in #Malaysia #RaceToDubai #Maybank pic.twitter.com/ONIpehA4E9
— The Tuesday Night Comedown Podcast (@TuesdayNightCD) 2019年3月24日
「メイバンク選手権」の優勝争いは、トップのスコット・ヘンドをナチョ・エルビラが1打差で追う展開で、最終18番パー5へ。
コース上はすでに激しい雨。
そのなかで、エルビラが第3打のアプローチを打とうとした瞬間、大きな雷鳴が響きわたりました。
お陰でエルビラのアプローチは大きくショート。ボールはピン手前、約10メートルに止まってしまいました(実はこのシーンは、直後にSNSに動画がシェアされていたのですが、その後すぐに削除され、現在は視聴することができません。安全面での不備が指摘されそうなシーンだったから?)。
一方のヘンドもパーパットをピン横1メートルに付けたところで、雷雲がさらに接近したためにやむなく中断となりました。
あと10分もあれば競技終了となりそうな展開ですから、ツアー側はやりきれない思いだったのでしょう。
でも、こればかりは仕方ありません。何より安全です。
そして、1時間40分後に競技が再開されると、なんとエルビラがその10メートルほどのバーディパットを劇的にカップイン(下掲の動画)!
長い中断にもめげず、最後まで観戦するギャラリーへの大きなプレゼントになったのです。
結局、試合はプレーオフに持ち込まれ、その1ホール目でヘンドがエルビラを下す結果になりました。
CAN YOU BELIEVE THAT!!@nachoelvira87 has drained it! pic.twitter.com/O1lfYU5FHQ
— The European Tour (@EuropeanTour) 2019年3月24日
1991年全米オープンの悲劇
いまでは天気予報(雷雲の情報)の精度は上がり、どのトーナメントも落雷の恐れが発生すれば、すぐに競技を中断。
ギャラリーにも安全な場所への避難を呼びかけています。
しかし、ひと昔前はその精度が低く、対応が遅れることもありました。
その結果起きてしまったのが、1991年「全米オープン(会場:ヘーゼルタイン・ナショナルGC)」の悲劇です。
ギャラリーの避難が遅れ、多くの人が雨宿りしていた大木に雷が落下。5人が倒れ、うちひとりが亡くなる惨事になってしまいました。
米ツアーではこれ以前に、プレー中のプロが落雷でケガを負った例があります。
1975年「ウェスタンオープン(現・BMW選手権)」でのこと。
リー・トレビノを含む4選手の近くに雷が落ち、トレビノは腰に後遺症を負うほどの大ケガをしてしまいます。
以来、トレビノは極度の雷嫌いになったそうです。
テレビ中継のカメラがとらえた落雷の映像
2010年「チューリッヒクラシック」では、雷が競技中断中のコース上に落ちる映像が中継のカメラにとらえられました。
これも大木に落ちたもの。
ゴルフ場では、雷の避難指示が出たらすぐに安全な場所に逃げましょう。
決して“木の下で雨宿り”などということはないように、教訓としてください。