プロゴルファー
こせきよういち
ツアー選手も疑問の新ルール~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#104
もうすぐやって来る2019年。……と同時に、ゴルフ界にやって来るのが「新ルール」です。
今回のルール改訂は、R&Aと全米ゴルフ協会が合同で統一ルールを制定するようになった1952年以来、67年ぶりの大改訂と言われています。
あまりの大幅変更に、ゴルファーの間からは多くの戸惑いが聞かれます。
それはツアープロも例外ではありません。彼らにも、一部ルールに対する不安や不満があるようです。
それでも、来週木曜日(1月3日)には、新ルールによる初めてのツアートーナメント「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」が始まります。
さて、ツアープロたちはどの新ルールを疑問視しているのでしょうか。
メディアに取り上げられた米ツアープロの声を紹介しましょう。
グリーン上の損傷の修理がスロープレーを招く?
ジム・フューリック(下記、リンク先を参照)やスティーブ・ストリッカーが疑問視しているのが、グリーン上のほぼすべての損傷が修理可能となることです。
ご存じのように新ルールでは、グリーン上にある「人や外的影響によって生じるあらゆる種類の損傷(従来のボールマークと古いホールの埋め跡の他、スパイクマークや用具などによってできた損傷、芝の張り替え跡や張芝の継ぎ目など)」の修理が可能になります(規則13.1c(2))。
つまり、プレーヤーはパッティングライン上を丹念に整えることができ、結果、「プレーの進行が遅くなる」と彼らは心配しているのです。
そして、いずれ米ツアーはローカルルールで旧ルールに戻すのでは? という声さえ挙がっています。
さて、実際にそのような光景が展開されるのでしょうか?
損傷したクラブの取り替え不可
Have you ever seen a driver snap mid-swing?
— The European Tour (@EuropeanTour) 2018年11月29日
Well, now you have...#AusPGA pic.twitter.com/by0fpsMGcm
上掲の動画は4週前のこの連載で紹介した、通常のスウィングの途中でシャフトが折れるトラブルです。
このような場合、従来のルールでは、以下の3通りの処置が可能でした。
(i)そのラウンドの残りで、損傷した状態のままそのクラブを使用すること。
(ii)プレーを不当に遅らせることなく、そのクラブを修理したり修理させること。
(iii)そのクラブがプレーに適さない場合に限り、前記(i)、(ii)の処置に加えて認められる選択処置として、その損傷クラブを他のクラブと取り替えること。
つまり、新しいクラブに取り替えることができました。
ところが新ルールでは、上記(i)、(ii)の処置は可能ですが、「適合クラブがラウンド中に損傷した場合、プレーヤーは通常はそのクラブを他のクラブに取り替えてはならない」(規則4.1a(2))として、(iii)の取り替えは認められないことになりました。
当然ながら、この変更にはプロの間からは不満の声が聞かれます。
ピンを立てたままでパッティング可、だけど?
最後は、これもほとんどのゴルファーがご存じのルール変更です。
新ルールでは、旗竿をホール(カップ)に立てたままパッティングをすることができるようになります。
ところが、この変更に対して、物理学者で“マッド・サイエンティスト”のニックネームを持つブライソン・デシャンボーが実験の結果、旗竿を差したままパッティングをしたほうがホールインの確率は明らかに上がる、とにんまり。
彼はさらに、「全米ゴルフ協会は、いずれルールを元に戻すことになるだろう」とまで語っています。
実際、それほどプレーヤーの有利となるのでしょうか?
また、このルール変更の結果、ボールがどこにあっても、選手の希望で旗竿を立てたり抜いたりできるので、それによってプレーの進行が遅れる恐れが生じます。
さて、来週開幕の19年最初のトーナメントでは、新ルールの施行によりどんな変化が生まれるのでしょう。注目です。