ゴルフスイング
Gridge編集部
リラックス効果からポイントチェックまで、スイングの流れをつくるワッグルとは?
ワッグルという言葉をご存知ですか?
あまり聞き慣れない言葉ですが、ゴルフスイングに入る前の準備動作として、無意識にやっている人も多いはずです。
今回は、このワッグルを行う目的や意味、そのやり方まで、文章と動画を交えてお話していきます。
目次
ゴルフスイングは静から動へがもっとも難しい!
ゴルフの難しさのひとつに、“止まっているボールを打つ”ということがあります。
他の球技のほとんどは、動いているボールを取ったり、打ったりという、反射的な動きをします。
ところがゴルフの場合、ボールが止まっているために、この反射的な動きはありません。
そのため、止まった状態から意識的に動き始める動作が必要になります。止まっているボールを打つので簡単そうに見えますが、実はここがとても難しいポイントと言われています。
小さな動きの縦ワッグルを行うキム・ハヌル選手(動画)
ワッグルの目的や意味とは?
静(アドレス)から動(テークバック)にスムーズに入るために必要とされているワッグルですが、具体的にはどのような目的があるのでしょう。
①リラックス効果
手首を柔らかく動かしたり、足を小さくバタつかせることによって、身体の力を抜きリラックスさせる効果があります。
②テークバックに入る体勢を整える
身体の向きやクラブフェースの向き、重心の位置などの微調整を行い、スイングに入るための体勢を整えます。
③スイングで気をつけていることのチェック
スイング(特にテークバック)で気をつけているポイント、例えばフェースの向き、手首を動かす方向、クラブを振り上げたい位置などのチェックを直前にする事で、スイング中にポイントを意識しなくてもいいようにします。
④ テークバックに入るためのきっかけづくり
静(アドレス)から動(テークバック)に入るタイミングがつかめずに、なかなかテークバックを始められなくなってしまう人がいます。毎回一定の動作、リズムを意識的に行う事で、スムーズにテークバックに入れるようになります。
いくつか主だったところを挙げてみましたが、その目的は人それぞれです。
ご自身に何が必要なのか、何を取り入れたら良いのか、意識して行なってみるのも良いでしょう。
足をバタつかせるワッグルを行うアン・シネ選手(動画)
スイングの流れをつくる、代表的なワッグル!
ここでは、一般的なワッグルについてお話していきましょう。
①横ワッグル
手首を柔らかく使い、クラブヘッドを左右に動かすワッグルです。左右に小さく動かす人もいますし、テークバック方向に動かす人もいます。手や腕、上半身の力みを取りつつ、身体の一部を動かし続ける事で、静の時間を作らないようにしています。
インパクト付近でイメージが出しやすいよう、リストを柔らかくするようなイメージで行う方もいます。
横にワッグルをするメリットとしてもう1つ考えられるのが、ヘッドの重みを感じられる点でしょう。
ゴルフスイングにおいて、腕ではなくヘッドを走らせる動作は非常に重要な意味を持っています。腕を振ってもヘッドスピードは上がらず、再現性も高くはなりません。
ワッグルをすれば、ヘッドの重みをスイング前に感じ取れますので、インパクトでヘッドを走らせるイメージが出しやすくなるというメリットがあります。
②縦ワッグル
クラブヘッドを小さく上下させることで、ヘッドの重さを感じやすくなります。それと同時に、テークバックに移るきっかけにしている人が多いです。
このヘッドを上下させるだけの動きですが、手首のみを使う人や、肩や全身を使ってクラブを上下させている人もいます。自分の動き出しやすいタイミング掴むために、上体でリズムを取っている動きをします。
縦にワッグルをする方は体重を下に落としていくイメージを持つ人もおり、バックスイングでしっかりと足元を地につけたい場合に効果的です。
体重が浮いて突っ込んでしまう感覚がある方は、体重を下に落とし込むように縦ワッグルをしてみるといいでしょう。
③足をバタつかせるワッグル
足を小さく左右にバタつかせることで、自分の重心位置やボールとの距離感を微調整しています。
脚や腰の動きをテークバックに入るきっかけにしている人が多いです。やはり、身体の一部を動かし続ける事で、静の時間を作らないようにしています。
下半身が緊張するとどうしてもスムーズな体重移動ができません。その体重移動をスムーズにするために、完全に止まった状態からではなく、少し足を踏みながら動き出すタイミングを取っていますね。
④テークバックのような大きなワッグル
テークバックの動きの中で、手首やフェースの向き、クラブを引き上げる位置などのチェックポイントを持っている人にこのタイプが多いです。スイング直前の予行練習のようです。
こうしたワッグルを取り入れることで、毎回同じリズム、同じルーティンでテークバックに移れるため、スイングの流れを作ってくれる動作とも言えます。
大きなワッグルでは、インパクト周辺でのヘッドの入り方を確認する意図もあります。実際ヘッドの軌跡を目で確認して、そのイメージを焼き付けてからスイングに入るんですね。
大きなワッグルが特徴的なイ・ボミ選手(動画)
石川遼選手のワッグル
石川遼選手のワッグルを見てみましょう。
足を踏みながら、小さく手首を柔らかく前後させていますね。足の位置を微調整しつつ、インパクトでのフェース向きを確認しているのでしょうか。
ヘッドを上下に動かしていますが、小刻みに動かすタイプではなく、トンッと下ろしてから高めにヘッドを上げてインパクト位置に合わせているように見えます。
ヘッドを戻す位置をワッグルでイメージしているんでしょう。
ダスティン・ジョンソン選手のワッグル
さて、こちらはダスティン・ジョンソン選手のワッグルです。足を大きめに踏んで、ヘッドを上下に動かしています。ショットの直前までワッグルをしており、ピタッと止まる瞬間が見当たりませんね。
ワッグルをして、動きの中からスイングをスタートさせる感覚なのでしょう。
成田美寿々選手のワッグル
※YouTube動画の4分30秒付近が、成田美寿々選手のワッグルがわかりやすいポイントです。
ヘッドの上下動よりも、足を細かく踏むタイプのワッグルをしています。ヘッドはほぼ動かしていませんが、始動の直前ほんのわずかにヘッドが浮き上がるのが確認できます。
足を細かく踏んでワッグルを行い、スイングスタートの合図でヘッドを上げる「スイッチ」として使っている動作ですね。
ダニエル・カン選手のワッグル
LPGAツアーのダニエル・カン選手のワッグルです。足の位置が決まったら、ヘッドを浮かせて前後に細かく揺らしてリラックスさせていますね。
もちろんドライバーもほぼ同じ動きをしており、打つ直前に手首をゆらゆらと揺らす動作をいれてインパクトの方向を確認させたり、手首を柔らかく使うイメージを持たせたりしているのでしょう。
正しいワッグルとおすすめの方法とは?
ワッグルには色々な方法があるのを見てきましたが、正しいワッグルやおすすめのワッグル方法があるのでしょうか。
その答えはずばり「ありません」。正しいワッグルのやり方やおすすめの方法というものはなく、自分がショット前にどんな動きをしてショットに入るか、これがワッグルなんです。
そのためプロがこうしてるから!とか、こっちの方がリラックスできるからワッグルはこういう形がいいよ! と決められるものではないんです。
ただ1つ避けた方が良いワッグルがあります。それは「長すぎるワッグル」です。
ワッグルはプレショットルーティンの1つ
長すぎるワッグルがあまり良くない理由の1つに、ワッグルはショットに入る前の動作。いわゆるプレショットルーティンの1つだからです。
ルーティンの1つなので、ワッグルも含めてのスイングなんですね。ということはワッグルが長すぎると毎回同じ動作をしなければならず、その動きが少しでもずれたりすると、感覚的に気持ち悪さが残ります。
なかなか自分のタイミングや形に収まらず、途中でアドレスを解除した経験がある方もいるでしょう。
長すぎるワッグルでのルーティンは、自分のタイミングや形にピタッと収まりにくいケースも。また途中で動きが止まってしまったりすると、最初からルーティンごとやり直しになります。
すると最初から方向を決めて、素振りをして、アドレス、ワッグル、スイング、と一連の動作が全部やり直しになってしまうんですよね。
スロープレイにもつながってしまう可能性がありますし、長いワッグルでスイングがしっくりとフィットした形でスタートできるか、と言われればこれはまた別問題だからです。
ショット前のルーティンならばスイングの入りがスムーズに
プレショットルーティンとしてワッグルを行うのは、決して悪くはありません。むしろスイングのリズムをつかむために必要な動作です。
ワッグルもある程度の時間に収まるのならば、ショット前のルーティンで取り入れてスムーズな動きだしができるようになってくるかもしれませんね。
ゴルファーなら誰もがやってる!?あなたのワッグルはどんな形?
ワッグルにもたくさんの形があって、長さも人それぞれです。ワッグルのクセが無い、というゴルファーでも実はよく見てみると、少し動いていたり、足を踏み踏みしていたりと、目立たないところで少しだけ動きを作っています。
ゴルファーならばおそらくほとんど全ての人が、ワッグルをしていると言っても過言ではないでしょう。
あなたのワッグルはどんな形ですか?ワッグルをスイングのルーティンに組み込んで、スムーズにショットをしていきたいものですね。
ワッグルを取り入れる時の注意点!
このように、ワッグルとは、体の緊張を緩めてリラックスするだけでなく、スイングの流れをスムーズにしたり、スイングのチェックポイントの確認ができます。
無意識にやっているのも悪くはないのですが、目的を持って行うことで、よりたくさんの効果が期待できます。
ただ、気をつけなければいけない事は、ワッグルに時間をかけ過ぎたり、考え過ぎたりしないことです。
あくまでもワッグルは、スイングをスムーズに行う事が目的であり、ワッグル自体が目的ではないという事を忘れないでください。
あのベン・ホーガンも「ワッグルのやりすぎは良くない」という言葉を残しています。ワッグルにこだわりすぎるあまり、ショットに影響が出ては本末転倒だという意味が込められているのでしょう。
実際にワッグルの回数や動きが、長いルーティンとして染みついているゴルファーもいます。そうした方はショットごとにそのワッグルの動作が必要になります。
ワッグルの途中で”ファー”の声や、カートが動く音などがあると、ルーティンがストップ。また最初からやりなおしになってしまうほど、非常に敏感になってしまっている人もいます。
打ち出しのタイミングを図るためのワッグルなのに、長すぎることで打ち出しタイミングの邪魔になってしまう可能性が高まってしまうのは考えものですよね。
スイングリズムを取る、スイングの始動タイミングを一定に、ヘッドの軌道をワッグルで確認する。
ワッグルにはこんな意味が隠されているんですね。ただワッグルに駆ける時間は極力短く、そしてスムーズにワッグルからスイング始動へと入れるようにしておきましょう。
世界ナンバー1のリディア・コ選手も大きなワッグル(動画)