ゴルフスイング
飛太郎
ゴルフスイングの微妙なロジックたち「スイングアークで飛ばせ」編
こんにちは、飛太郎です。
微妙なロジックたちシリーズ、今回は「スイングアークで飛ばせ!」編です。
写真のバッバ・ワトソン選手は、ある海外の番組の中で「自分はアークがすべてだ」と自ら断言しています。
世界のトッププロ、その中でもずば抜けた飛距離を誇る彼が、そのようにきっぱりと言い切る「スイングアーク」の力。
それは一体どのようなもので、そして一般のゴルファーはそれをどう参考にすればいいか、私見を交えてになりますが紐解いていきたいと思います。
目次
そもそもスイングアークってなに? どんな作用があるの?
ちょっとおさらいになりますが、スイングアークってなんでしょう?
よくご存知の方も、よろしければご一緒に改めて理解を深めていってください(笑)。
スイングの際にクラブヘッドが描く円弧の軌道、それをスイングアークと呼びます。それが大きければどうなのか? または小さければどうなのか。
一般的に、このスイングアークを大きく取ることができれば「ヘッドスピード(以下HS)が上がる」と言われています。
ここからは僕の私見ですが、一概に断定すべき単純な代物ではないと考えています。
確かに、クラブヘッドが描く円弧の軌道が大きくなればなるほど、発生する遠心力も増大します。
同時に増幅されるシャフトのしなりが「上手く使えるならば」、アークが小さい人よりも大きい人の方が扱える力が増え、飛距離は大幅に伸びることでしょう。
そこは実体験と多くの素晴らしい選手を分析してきた結果、賛同するところではあります。
ただし、先に一概に断定すべきではないと言ったのは、「アークが大きいとHSが上がる」という点について。
そんな単純なものではありません。
先に述べた通り、アークが大きくなればそれだけ遠心力も増し、それに付随してシャフトのしなりも大きくすることができるでしょう。
あくまでも、それらを「上手く活用できたなら」という条件付きのものであることをぜひ、お考えいただきたいのです。
大きな力をただ生むだけでは、どうしようもありません。
問題はその直後、それらをどう駆使するか、です。
それを使いこなす技術、ボディコントロール術、あるいは筋力が必須であることは間違いないと思っています。
それができるのであれば、「アークを大きく取れば、HSが上がる」と公言しても構わないと、僕は考えています。
もしもそれができないのであれば、僕はスイングアークが小さくても効率のよいスイングをした方がイイとも考えています。
大きければいい、小さいと絶対ダメ。
そんな性質のものではなく、あくまでも「上手く活用できるなら飛距離が伸びる」というものであることをお伝えし、次段落へ進みます。
アークを使いこなすと、どうなるの?
さて主題でもご紹介した、「飛距離を出すためにはアークがすべてだ」と断言したバッバ・ワトソン選手。
彼がツアー屈指の飛距離を持つ、スーパープレイヤーである事は誰もが認めるところでしょう。
冒頭でお話に挙げた海外のその番組で計測したところ、彼のトップオブスイングからのスイングアークの大きさは実に6.7メートル。
ボールとクラブヘッドの衝突エネルギーは、1.5トンを超えています。
スイングアークを最大限に駆使できれば、それだけの爆発力を発生させ得ることを、ツアー屈指の飛ばし屋は立証してくれています。
しかしながら、その爆発力に対してHSは53.6m/s(メートル/秒)、ボールスピードは80.5m/sと、それほど驚天動地というものではありません。
それでも彼は絶対的な飛距離を一つの武器として携え、活躍を続けている事実がそこにある訳です。
ではこうなると、前段落で挙げた「アークが大きくなればHSが上がる」という定説に、少々疑問が生じますね。
そこにこそ、僕が「一概に断定すべきではない」という理由があります。
お次の段落で、私見を大いに交えてお話しします。
真円と楕円、そこにまつわるHSの因果関係を理解しましょう。
HSそのものは、もちろん大切なファクターだと思います。
速いなら、速いに越したことはないでしょう。
ただ、そのHSというものを安直に理解してしまう風潮が、前段落のような矛盾を生むのだと思えてなりません。
ただ単純に計測器にスピードを刻めば良いのであれば、これほど容易い事はありません。
彼ら世界のトッププロと同じ、あるいはそれ以上の「数値」だけを出すのは、それほど難しい事ではありません。
物理の観点からお考えいただければ、分かりやすいかと思います。
上述してきた「スイングアーク」を大きく取れば取るほど、ゴルフスイングが描く軌道は楕円方向へと広がりを見せます。
対して、「クルッ」とその場で回ってしまう、真円のようなスイングと比較するとどうでしょうか。
計測器は、そのスイングの差をも計れる機器ではない、とだけお伝えしておきます。
世界のトッププロとHSの数値が同じでも、絶対的に違うのはその数値で果たして「見合う飛距離と方向性を確保できるか?」という点。
彼らには、それができます。
詳しく紐解きますが、一般的に出回っている計測器というものが、何を計っているかをお考えくだされば、今回の記事の8割はご理解いただけるかと思います。
ボール初速、HS、推定飛距離、ミート率。
そういったものは計測されますが、発生させた衝突エネルギーや遠心力、ボールとの接触時間などを詳細に計測するものではない、ということ。
ですから僕はずっと以前から、「単純にHSだけに執着しないで、あくまでも指標として」と記事でも申し上げている次第です。
もちろん、決して計測器を貶(おとし)めているわけではありませんよ。
大きなアークを発生させる事で、テークバックからトップまでに一つ、トップからフィニッシュまでにもう一つ、二つの楕円軌道が生まれます。
その二つが重なり合った時、一つの大きな楕円軌道が結果として形取られます。
その場でクルッと回る真円スイングで、ただただ速く振ったものと比較した場合、そこに生まれる衝突エネルギーの差は歴然。
分かりやすく例えるなら…走り高跳びで助走を取り入れたものと、その場で垂直に跳び上がったものを比べてみると分かりやすいかと思います。
もし仮に数値と実際の飛距離が伴っていなければ、こういったスイングの質そのものに原因があるとも言えるでしょう。
ではスイングアークを大きくするには、どうすればいいの?
スイングアークを大きく取るための原則はいくつかあります。
その一つが、「ワイド&ナロー」とよばれるもの。
トップに至るまでの動きは大きく、切り返しからの動きは小さく、というものです。
ただし!
ここで多くの方が(昔の僕も含め)誤解してしまいがちですが、あくまでもスイングを崩さないことが大前提となります。
アークを大きく取ろうとするあまり腕でクラブを遠くに上げようとして、身体から腕が離れてスイングプレーンから外れるケースなどが、勘違いによる弊害の一つに挙げられます。
そうなるとアーク以前の問題になってしまいますので、要注意です。
また、バッバ・ワトソン選手のスイングをご参考くださればさらに分かりやすいかと思いますが、トップからの軌道はワイドではいけません。
クラブを身体に引き付けるかのように、それこそ「ナロー(幅を狭く)」に振り下ろす必要があります。
「大きなアーク!」とこだわるあまり、切り返しからハーフウェイダウン、インパクトに至る軌道までをも大きくしてしまっては、それはただのアーリーリリースと変わらなくなります。
切り返しからはナローに。
そうする事で、インパクト以降もボールを押し出すように「ワイド」にアークを描けるわけです。
クラブの長さとの関係性について。
最後に2つ、スイングアークとクラブ選び、そしてご自身のウイングスパンとの関係性について記述して、締めくくります。
まずはクラブ選びについて。
アークを大きく取ればHSが上がる、クラブが長ければHSが上がる…もう耳タコですよね(笑)。
実際問題どんな性質の理論であっても、それらを活用するに足る力量、あるいは技量がなければそれは机上の空論となり、何の意味も持たなくなると僕個人は考えています。
今回テーマに挙げたスイングアークなどは、その最たる例であると思います。
ご自身のスイングがどのような性質のものなのか、それをまず知ることが何より大事であり、最優先すべきことだとも思っています。
それを踏まえて、クラブ購入の際にアークの事を考慮に入れていただければと思うのです。
シンプルに考えて、スイングアークを今よりも大きく取りたいとお望みならば、従来よりも長めのシャフトをチョイスするのもアリですね。
もちろん、長くすればそれで良いかと言えばそうではなく、アークを広げる目的を考えれば、シャフトが適正にしならなければ意味は半減してしまいます。
ですから、例えば今までフレックスがSシャフトの45インチを使っていたとして、極端な話になりますが、47インチにアップさせたとしましょう。
そうなると、従来と同じSのフレックスで良いか、と言えばそうなりませんよね。
Xに変えるなど、長くなる分を考慮に入れる必要性が生まれますし、シャフトのキックポイントもより一層重要になってきます。
アークを大きく取ればHSが上がる、クラブを長くすればHSが上がる…。
それはこのシャフトのしなりを増大させ、クラブヘッドをより走らせ得ることが前提条件になるのですから。
それができないのであれば、むしろ逆にHSは下がりかねませんので、くれぐれも注意が必要です。
参考にはならないかと思いますが、僕の場合は47.5インチのXXXを使用しています。
それでもメーカーによってはシャフトのしなり具合に差があり、僕は現在しなり過ぎ感に悩んでいるんですが(笑)。
ウイングスパンとの関係性について。
写真は、別記事にも掲載させていただいたものですが、ご容赦いただければうれしいです。
先に述べたクラブの選択・カスタムも重要ですが、別記事で記載させていただいたこの「ウイングスパン」も、アークを考えるにあたって注目すべき点だと僕は考えています。
むしろ、クラブ選択よりもご自身のウイングスパンを知る方が先だと思うほどです。
なぜなら、クラブはカスタマイズが利きますが、ウイングスパンはご自身の身体の機能そのもの。
今以上に変化・対応させることが難しいものだからです。
ですからまずクラブありきではなく、不偏のものである身体にクラブを合わせてあげる方が、アークを追求するにしても理に適っていると思うのです。
本題ですが、「アークを考える上においては」このウイングスパンは広い方が有利ではあります。
クラブヘッドが描く軌道がアークであり、そのクラブと身体をつなぐものが「腕」だからです。
腕とクラブを一本モノと考えていただければ、分かりやすいでしょう。
同じクラブを扱う二人の人を比較するなら、ウイングスパンの広い人の方が回転半径もやや大きくなり、アークも大きく取りやすい訳です。
※もちろん、クラブはしなりますが腕はしならないので、相対論ではあります。
一般的には「ウイングスパン≒身長」とされていますから、身長が高い方は長いクラブ、低い方は短いクラブという判断も、多くの場合は無難な選択だとは思います。
ただ留意すべきなのは、そこに例外が存在するということ。
身長が低くとも、ウイングスパンが広い人がいらっしゃるからです(例:身長165センチに対して、ウイングスパン175センチなど)。
だからこそ、身長だけでクラブを選定するのは得策ではないと申し上げているんです。
もしも、身長がそれほど高くないがウイングスパンが広い方がこれに気付かず、ただ身長を補う意味で長いクラブを使っていらっしゃる場合、特にこれは重要な観点になると考えます。
その場合、クラブがご自身の想定以上に長すぎて、適正なアークを生むにあたり仇になっている可能性があります。
だからこそ、ご自身の身長だけで「自分は長いクラブでなきゃダメ」とか「私は短いクラブが合う“はず”」と、決め打ちしてしまわないでいただきたいのです。
スイングアークが、ただひたすら大きければいいという性質のものではないように、ご自身の身体を知り、アークを始めとするスイング理論を適正に活用することで、「百戦危うからず」になるのだと僕は考えています。
またこれは当然の事ですが、アークを大きくすることだけが飛距離アップの手段ではありません。
何度も申し上げてきましたが、どんな力も理論も法則もツールも、使いこなせなければまったく意味を成しません。
ウイングスパンが広い人も狭い人も、それぞれに利点があると考えるべきです。
ウイングスパンが広い人は、アークを大きく取るという事に関しては有利だ、というだけです。
逆に狭い人は、回転が効きやすいという利点を大いに活用してあげれば良いだけです。
ドラコンプレイヤー、飛太郎の場合は…
ちなみに、僕なんかの例は参考にはならないでしょうけれど、一応何かのお役に立てればと思って念のために…。
身長180センチに対して、ウイングスパン182センチと、普通の広さです。
スイング特性は低く長くクラブを送り出す、いわゆるアークを大きく使うスイングタイプです。
クラブスペックは前段落に書いた通り、47.5インチのもので、筋肉バカですから硬いXXXのシャフトを千切れんばかりにしならせて楽しんでます。
別に短いクラブも扱えますが、やはり最大飛距離を出すためには45インチなどでは成立しない感触です。
ドラコン競技の規定がまだ50インチまでであった頃は(現在は48インチ未満まで)、49インチのクラブも試してはみましたが、長すぎてアーク云々どころではなかったので、いろいろ試して今の長さに落ち着いた、といった具合です。
ちなみにこのウイングスパン、上記した通り一般的にはご自身の身長とほぼ同じだそうですから、それを考えると、バッバ・ワトソン選手は身長191センチ…。
なるほど、アークも大きく取れるわけですね、うらやましい限りです。
奥様は元・バスケットボール選手で、さらに高身長の193センチだとか(汗)。
いずれにせよ、人生と同じで「今ある武器で戦うべし」ですね。
ならばこそ、彼は自身の武器となる身体的特徴を良く知り、最大限に活用しているわけです。
ただ、ゴルフの素晴らしいところは、クラブを自分に合わせて選べるという利点があることだと思ってます。
そういった意味で、この記事が何かのお役に立てば、幸いです。
それではまた!
身長とウイングスパンを5センチずつ分けて欲しい、飛太郎でした。