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ゴルフスイング

おっ3

強烈な個性は時に武器になる。変則スイングは強い!

HEIWA・PGM CHAMPIONSHIPで見事優勝を手にした、チェ・ホソン。

今や、ゴルフをしない方にもその名を知られるようになり、人気プロの仲間入りを果たしました。

『おっ3』も注目のプロです。何より、友達になりたい!(笑)

その独特なフィニッシュに加え、以前は水産会社に勤務していたという経歴から『フィッシャーマンズスイング』と呼ばれるスイングは、個性に溢れていて、観客を沸かせてくれます。

チェ・ホソンを始め、変則スイングの持ち主には実力者が多く、ポイントさえ押さえていれば、『変則スイング』は、決して否定するべきものではないのかもしれません。

では、世界変則スイング巡りをスタートします♪

元祖変則スイング? アーノルド・パーマー!

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テレビ時代最初のスーパースター、アーノルド・パーマー。

プロ通算95勝の実力はもちろん、ちょっとヤンチャな仕草や、豪快なプレイスタイルで見る者を魅了しました。

そして、『アーニーズ・アーミー』と言われる、熱狂的なファンを多く抱えていました。

『ポパイ』のような太い腕で、ボールを引っ叩く豪快なショットでは、ご覧のように左肘を抜きながら、左への引っ掛けを嫌ったハイフィニッシュを迎えます。

まるで周囲を威嚇するかのようだったと言われています。

この動きは、当時の道具を操るためのものと思います。

ヘッド体積が小さなパーシモンヘッドは、クラブの重心距離も短く、ヘッドが急激に返る心配があります。

パーマーは、強く叩くことと、ヘッドの急激な返りを防ぐことを両立させるために、このハイフィニッシュにたどり着いたのだと思います。

元祖地面反力! ローラ・デービース

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男性顔負けのパワフルなショットで、世界中で88勝を挙げ、ゴルフ殿堂入りしたローラ・デービース。

ティーを使わないプレースタイルで、直ドラの名手としても知られています。

この写真をご覧いただくとわかりますが、実は地面反力の使い手でもあります。

女性の年齢を明かすのはマナー違反かもしれませんが、デービースは現在56歳です。

当時は、『インパクトの瞬間に飛び上がる動きは良くない!』と、完全に変則スイングとされていました。

そんな指摘も、どこ吹く風のデービース(笑)。

ヨーロッパツアーでは最多記録となる45もの勝利を積み重ねました。

猫背で手打ち? 青木功プロ

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『オリエンタルマジック』と言われるほど、青木プロのパターは良く入り、アプローチは冴え渡っていました。

『おっ3』は、青木プロのゴルフの基本はパターにあると思っています。

と言うのも、ボールを上げることよりも転がすことを基本とし、パターのアドレスとショットのアドレスに共通点が非常に多いからです。

極端なハンドダウン、クラブのトウ側を大きく浮かせる構え、そして猫背……。

ご本人は、手打ちの意識はまったくないようですが、パターは手首でパチンと打つタップ式。

ショットも、アームローテーションを大きく取るスイングです。

このスタイルでプロ通算85勝を挙げています。

アメリカのシニアツアーに挑戦する際には、『アメリカの超高速グリーンには、あの打ち方では通用しないのは?』『芝の質が違い、ボールが沈みやすいアメリカでは、青木プロのテクニックでは良い成績は収められないのではないか?』と言った声も聞かれたようです。

こうした周囲の雑音には耳も貸さず、自らのプレースタイルを貫きシニアツアーで9勝を挙げました。

自分のスタイルを貫く青木プロには、大きなスランプの印象もありません。

『変則のすごみ』を感じさせてくれますね。

帝王の右肘は浮いています!

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『帝王』ジャック・ニクラスのフライイングエルボーは、若い頃のほうが顕著に見られます。

これは、バックスイングで極端にインサイドに引き込まないこと、そしてトップを高く取ることの両方にメリットがあると思います。

ニクラスは、ダウンスイングでは、右肘を速やかに体側に沿うように落とし、右手で強くボールを叩きます。

全盛時には、パーシモンヘッドに糸巻ボールでも300ヤードを越えるショットを放つこともあったそうです。

右肘が高い位置から真下に落ちる位置エネルギーも上手く利用していたのでしょう。

教科書通りではないかもしれませんが、ニクラスの変則には力強さを感じます。

8の字スイングでもフェデックスチャンピオン!

ジム・フューリックのスイングは、バックスイングでは、クラブヘッドが外に上がり、高いトップオブスイングから切り返した瞬間には、グリップ位置は真下に落ちて、ヘッドは8の字を描くようにループします。

ダウンスイングでは、シャフトが背骨を直角になるように下りて来て、インサイドからボールをとらえますが、フェースをターンさせずにフェードボールを打ちます。

188センチと大柄ですが、飛距離は出るタイプではなく、ショットの正確性とクロスハンドグリップのパターでスコアを作ります。

このスイングは、ゴルフを始めた頃からのもので、『誰になんと言われようと変えるつもりはない!』とフューリックも変則を貫いています。

そして、2010年には、フェデックスチャンピオンに輝いています。

フューリックの変則スイングは、精密機械のような正確性を持っています。

超新星の変則スイング!

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その名は、マシュー・ウルフ!

タイガー・ウッズの次の世代を担うと評する方もいるほどの超新星です。タイガーの次はウルフ!! どちらも強そうです(笑)。

ウルフのスイングには、変則の要素が満載!

でもそれが、『飛ばし』の要素でもあるようです。

始動の前にお尻を飛球線と反対方向に一瞬向ける予備動作、大きなヒールアップ、フューリックのように8の字を描くスウィング軌道、トップでのシャフトクロス等々……。

ウルフのコーチは、最近話題のジョージ・ガンカス(通称GG)です。

GGは、ウルフのスイングを「どこも直す所がないよ」と称賛したそうです。

ヒップターンで回転力を引き出すための予備動作、大きなヒールアップは強くガニ股に踏み込むための準備、8の字軌道でボールをしっかりととらえ、シャフトクロスでクラブヘッドの助走距離を稼ぐ!

これらすべてが『飛ばし』の原動力だそうです。

ウルフの変則は、ぶっ飛びの要素満載です。

魅せる変則!

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アマチュアゴルファーのためのレッスンで、チェ・ホソンのようなフィニッシュを取ったら、絶対にレッスンプロに直されると思います(笑)。

しかし、我らのチェ・ホソンは、こんなフィニッシュからベタピンを連発します。

誰に教わるでもなく、独学で身に付けた変則スイングは、経験と独特の持論から生まれたようです。

ドライバーでは、インパクト後にも回転のスピードを落とさないために他のゴルファーよりも余計に回っているようです。

一打一打に思いを込めて、打った後にボールに声をかけ、気合いを前面に押し出すプレイは、いつしか見る者を惹き付けるようになりました。

今やチェ・ホソンの変則は、周囲を魅了するものになりました。

『変則』という言葉は、マイナスのイメージを伴いがちですが、トッププロの変則には、それぞれ理由があり『強味』になっています。

もし、読者のみなさんの中に『変則スイング』の持ち主がいらしたとしたら、無理に直すよりも『強味』に変えるのも一つの方法かもしれません。