プロゴルファー
こせきよういち
マキロイがセベの再現?~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#137
米ツアーはつかの間のシーズンオフ。
そこで先週は欧州ツアーの名物トーナメント「オメガ・ヨーロピアン・マスターズ(旧・スイスオープン)」に注目が集まりました。
昨季のフェデックスカップ王者=ロリー・マキロイをはじめ、トミー・フリートウッドやセルヒオ・ガルシアといった米ツアーでも活躍する選手が多数出場したからです。
そのなかで、ネット上最も話題になったのが、ファイナルラウンドで見せたマキロイのプレーです。
それは、1993年、セベ・バレステロスが見せた伝説のスーパーショットとそっくりのシチュエーションだったからです。
振り返ってみましょう。
いま蘇る、セベの伝説のショット
Rory McIlroy walking in Seve's footsteps, literally.
— The European Tour (@EuropeanTour) September 1, 2019
Incredible scenes in Switzerland. #OEM2019 pic.twitter.com/UcaOrRWCAp
まずは上掲のインスタ動画を見てください。
最初に紹介されるのが、1993年のセベのプレーです。
最終日の最終18番パー4。セベは、先行するバリー・レインに対し、わずかでも追い付き、優勝の望みをつなぐにはバーディを奪うしかない状況でした。
ところが、ティーショットは大きくスライス。ボールは木立のさらに奥。高さ2.4メートルほどのコンクリート壁の手前に落ちていました(下掲の画像参照。セベのボールはこの石碑の位置にありました)。
そこから130ヤードほど先のグリーンを直接狙うには、目の前に立ちはだかる壁の上を超えるしかルートはありません。でも、壁のすぐ上には木立の枝が伸びており、ボールを通す空間はごく狭い隙間でした。
当時を伝える記事には「手の長さほど」という記述もありますから、20~30センチ程度でしょうか。
キャディのビリー・フォスターは、当然、横に出すことを強く進言します。
しかし、アグレッシブが信条のセベの心は決まっていました。わずかなチャンスに賭けたのです。
サンドウェッジのフェースを思い切り開き、振り抜くと、ボールは高々と舞い上がって壁をクリア。左から伸びる枝をかすめるようにすり抜けると、グリーン手前の花道近くまで達したのです。
そこからの再度のスーパーショットは、上掲の動画でご堪能ください。
残念ながら、結果は優勝したレインに1打及ばなかったのですが、それでもこの一連のスーパーショットはセベ・バレステロスを語る上で欠かせない伝説のプレーと言われています。
マキロイも最後に魅せた
そして、今年の大会。
マキロイはこの18番パー4でバーディをマークすれば、最終的に5人がトップタイに並び、プレーオフとなる状況から抜け出し、優勝することができました。
しかし、バーディを狙って放ったティーショットは、やはり右に飛び出し、セベの石碑の手前まで転がってしまいます。
ここで“セベの再現”が期待されたのですが、残念ながらマキロイにはグリーン方向を狙える隙間はありませんでした。
第2打は横に出すだけ。
でも、次の第3打がすごかった。ピン横にピタリ。そして、パーをセーブし、プレーオフに残ったのでした。
ところで、この大会の舞台=クランスシュルシエレGCは標高1500メートルの高地にあり、空気抵抗が小さいため、マキロイは400ヤードドライブを何度か披露していました。
上掲の動画の音に注目。空気を切り裂くような鋭い打球音に、マキロイの物すごいパワーを感じます。
18番パー4ではこんなスーパーショットも
おまけです。
今年の大会、この18番パー4の右サイドの木立からはパドレイグ・ハリントンもスーパーショットを放っています。
別の意味で、見せてくれました。