プロゴルファー
こせきよういち
クラレットジャグ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#132
北アイルランドで開催された今年の全英オープンは、「地元選手」と言っていいでしょう、アイルランドのシェーン・ロウリーがひとりほぼ安定したプレーを続け、初のメジャータイトルを獲得して幕を閉じました。
そして、表彰式では台座にその名が刻まれた伝統の優勝杯「クラレットジャグ」(クラレット=赤ワインを注ぐジョッキ)を授与されたのです。
先週に続いて、このクラレットジャグにまつわる面白いエピソードを紹介しましょう。
現場での刻銘は1968年から。きっかけはうっかりミス
全英オープンのテレビ中継を見ていると、新しいチャンピオンが事実上決まったあたりで、彫金師がクラレットジャグの台座に「チャンピオン名、開催年、開催コース名、ストローク数」を刻み始めるシーンが映し出されます。
この刻銘ですが、1967年まではそのジャグ(レプリカ)を1年間所有する(1928年から。それ以前はオリジナルを授与)優勝者がその責任として、翌年までに彫金することになっていました。
ところが、67年のチャンピオン=ロベルト・デ・ビセンゾ(アルゼンチン)がそれをうっかり失念。手元に一年間もありながら……。
そのため、翌68年からはアレックス・ハーベイさんという彫金師が、表彰式が始まるわずかの間に刻銘を完成させることになったのです。
現在、彫金を担当するのはアレックスさんの息子のゲーリーさんです。
開催会場名をスペルミス
優勝者に授与されるクラレットジャグには、実は誤字が一か所あります。
刻銘がチャンピオンに任されていた時代の1947年、フレッド・デイリーという選手がロイヤル・リバプールゴルフクラブ(通称:ホイレイク=hoylake)で優勝したときのもの。
「hoylake」のスペルが「holylake」となっているのです。
レプリカとはいえ、チャンピオンに手渡される伝統のクラレットジャグにちょっと恥ずかしい間違いです。
取り外しのできるプレートですから、R&Aは正確なスペルを彫金したプレートと交換すればいいようなものですが、それはいまもそのまんま。
上掲は、2015年のチャンピオン=ザック・ジョンソンがイベントに持参したクラレットジャグを撮影したもの。中央にそのミスが見られます。
そして、記事には「このスペルミスがあるから、これは間違いなく1928年から代々の優勝者に授与されてきた本物のレプリカであることがわかる」と書かれています(笑)。
ゲーリー・プレーヤーが激怒!
Open Champs used to have Claret Jug engraved themselves - until Gary Player "ruined" it by having his name engraved twice the size of others pic.twitter.com/kDe6GBWcrX
— GreenJacketAuctions (@BidGreenJacket) 2017年7月23日
もうひとつチャンピオンに授与されるクラレットジャグで目を引くのが、1959年、ゲイリー・プレーヤーが優勝したときの刻銘です(上掲の写真参照)。
彼の名前がひときわ大きく彫られています。
これも各チャンピオンがその責任で刻銘していた時代のもので、年によって彫金師が異なるため文字が不揃いです。
そして、プレーヤーの名前が大きいことに関して、ゴルフ関連グッズの大手オークションサイト「グリーンジャケットオークション」が、「ゲーリー・プレーヤーが自分の名前を2倍の大きさで彫るまでは、チャンピオンが各自で刻むことになっていた」とツイート。
すると、これを見たプレーヤーが激怒、「実に下らない。ナンセンスだ。恥を知れ」とリプライすることに(下記リンク先)。
もちろん前述の経緯から、この話はオークションサイト側の間違いです。