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こせきよういち

ゴルフは「紳士のスポーツ」と言われますが…… ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#23

先週はルールに関する、議論を呼ぶエピソードがいくつかありました。

ゴルフ競技には、通常審判はいません。なぜなら、ゴルフはフェアプレーを重んじるスポーツであって、「ゴルファーはみな誠実であり、故意に不正をおかす者はいない」ということが基本的な考え=前提になっているからです。

そのため、違反の有無は、基本的にプレーヤー自身の判断に託されます。

でもそれゆえ、ときにプレーヤーが「違反はなかった」と判断したことが、第3者の目には「違反」と映るケースがあるのです。

アンカリングを疑われているベルンハルト・ランガー

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2016年からゴルフルールによって「ストロークを行うとき、“直接的”あるいは“アンカーポイント(支点)”を用いることによって、プレーヤーはクラブをアンカーしてはならない」として、クラブのアンカリングは禁止となりました。

つまり、支点を作り、そこを支えとしたストロークは違反なのです。

ところが、このルールが誕生したときから「あのパッティングは違反では?」と疑われる選手がいます。

以前からロングパターを使っているシニアプレーヤーのベルンハルト・ランガーです。

先週、彼のパッティングに再度、強い疑問の声があがりました。

それが下記リンク先の映像で、問題視したのは、かつてタイガー・ウッズのコーチでもある著名レッスンプロのハンク・ヘイニーでした。

ヘイニーは、ランガーの左前腕部が胸に密着し、そこがアンカーポイントになっているのでは? と言うのです。

確かにそのようにも見えます。

が、アンカリングを行っているかどうかは「事実問題」。

違反の有無は、やはり本人が判断することなのでしょう。

足場を作って救済が認められたブランデン・グレース

先週の欧州ツアーは同ツアーの公式戦--米ツアーのプレーヤーズ選手権に当たる--BMW「PGA選手権」でした。

大会初日、南アフリカのブランデン・グレースに「そこまでやるのか!?」と疑問や批判の声がたくさん挙がるルール上の処置がありました(動画が下記リンク先にあります)。

13番ホール、彼の第2打はグリーン周りのガードバンカーの壁に突き刺さりました。

いわゆる“目玉”の状態です。

急なアップヒルでのスタンスですから、グレースは時間をかけ足場を固めようとしました。

「足場を固める」というよりは「足を砂深くにもぐらせる」と言うべきでしょうか。

とにかく、スタンスを決めようとする左足の動きが急に止まったかと思うと、グレースは足元を見つめ、そして競技委員を呼んだのでした。

彼は、砂の下からシートが現れ、そのためにシューズが滑ると主張。

「動かせない障害物」からの救済を求めたのです。すると、その主張は認められ、無罰のドロップが許されたのでした。

でも、さすがにこの処置には周囲から多くの疑問・批判の声が挙がりました。

そこまで足を砂の中に潜らせるのはどうなの? というのです。

私の目には、規則13-3「スタンスの場所を作る」の違反のように見えるのですが……。

「紳士のスポーツ」を体現したアーニー・エルス

最後は、冒頭に書いた“ゴルフの基本精神”=「ゴルファーはみな誠実であり、故意に不正をおかす者はいない」を体現したかのようなアーニー・エルスのエピソードです(下記リンク先に動画があります)。

これも上記、グレースと同じBMW「PGA選手権」の初日のこと。

12番パー5で、エルスのボールはグリーン周りの深いラフのなかに飛び込んでしまいました。

ボールは芝の奥、地中にめり込むようなライだったようで、上から見たのでは自分のボールなのか確認できません。

そこでエルスはルールにのっとり、ボールを拾い上げて確認、そして元の状態にリプレースしました。

ところが、そこから放った第3打が直接カップイン。

イーグルです。

でも、なぜかエルスに笑顔はありません。

エルスはその瞬間、「もともとのライであれば、あんなに簡単に打ち出せるはずがない。私は正しくリプレースしなかったに違いない」と判断。

そして、このままでは自分自身納得できないとして、競技委員にその旨を申し出、2打のペナルティを自己申告したのでした。

もちろん、彼のこの行為には「ジェントルマン!」と多くの称賛の声が挙がりました。

慈善活動に熱心で、人格者として知られるアーニー・エルスらしいエピソードです。