飛ばし屋の変遷。ドライバーの飛距離アップの歴史を振り返る
ジョン・デイリーの出現で300ヤードの時代に突入
まだパーシモン(柿の木)がウッドクラブの素材だった1980年、PGAツアーでもっとも飛ばしていたのはダン・ポールで、その平均飛距離は274.3ヤードでした。
ツアーでの平均飛距離は約257ヤードで、現在の女子プロのロングヒッターくらいだったのです。
ボールもまだ糸巻きが主流でした。
これが1990年になりますと、トップはトム・パーツァーの279.6ヤードで、ツアーの平均は262.3ヤードに伸びました。
10年かけて5ヤードくらいしか飛距離が伸びていないことがわかります。
時代が大きく動き始めるのは、ニック・プライスの欠場で、急きょ補欠出場し、全米プロを勝ってしまったジョン・デイリーの出現からでした。
デイリーがメタルドライバー(ヘッドの素材はステンレス)を引っ下げて、超オーバースイング(写真)で300ヤードをぶっ飛ばす姿に世界中が驚いたものでした。
彼は1997年にPGAツアー史上初めて平均飛距離300ヤード越えを達成すると(302ヤード)、2002年までは唯一の「300ヤードオーバーのプレーヤー」として、PGAツアーに君臨していました。
もっとも、このシーズンのツアー平均は約280ヤードでしたから、他のプレーヤーも1990年からの約10年で、20ヤード近くも飛距離を伸ばしています。
この理由は、ドライバーヘッドの素材がパーシモンからメタルに変わり、ボールも糸巻きから2ピースが主流になったからでしょう。
2003年、クラブとボールの進化によって、飛距離が大きく伸び始めた
そして、問題の2003年がやってきます。
この年、プロゴルファーたちの飛距離が一気に伸びたのです。
このシーズンの平均飛距離のトップはハンク・キーニーで321.4ヤードでした。
さらに、ツアーの平均飛距離も285.9ヤードと、一気に280ヤード台後半まで伸びたのです。
このシーズンは、平均300ヤード以上飛ばしたプレーヤーは9人もおり、まさにこの年から「ドライバーショットで300ヤード飛ばしても、誰も驚かない時代」に入ったといっていいでしょう。
ところが、そこから10年、ロングヒッターたちの記録もツアーの平均飛距離もピタリと止まりました。
2004~15年は、バッバ・ワトソンやダスティン・ジョンソンなど、現在脂の乗っている飛ばし屋たちが登場してくるのですが、彼らの平均飛距離は約315ヤードほどで、300ヤードオーバーのプレーヤーの数も大体20人前後で、ツアーの平均飛距離も290ヤード前後でほぼ一定していました。
2003年に飛距離が大きく伸びた要因は、ヘッド素材がステンレスから大型チタンになったことに加えて、ボールも大きく進化したからです。
「タイトリストPro V1」に代表される「多重構造+ソフトカバー」のボールが各メーカーによって次々開発され、さらにシャフトの改良も重なって、この年、一気に飛距離が伸びたのです。以来、その伸びが止まっているのです。
クラブメーカーには「10ヤードも伸びるなんて嘘でしょ」と、文句のひとつも言いたくなりますが、でもこれでいいのではないかとも思います。
飛び過ぎても面白くなくなるのがゴルフ!?
これ以上飛距離が伸びてくると、ゴルフコースはもっと距離を長くしなければならなくなり、例えばオーガスタナショナルはこの20年で500ヤード近くもコースの全長を伸ばしています。
近い将来、全長8000ヤードなんてコースが当たり前になりかねません。
そうなってしまうと、トーナメントを主催する側は、コースを探すだけで一苦労してしまうことでしょう。
我々一般ゴルファーだって、これ以上コースの全長が長くなってしまうと、「たまにはチャンピオンコースのバックティーからプレーしてみようよ」なんて希望も持てなくなってしまいます。
それでは、ゴルフがちょっとつまらなくなってしまいます。
プロの豪快なドライバーショットは、確かに一見の価値はあります。だからと言って、飛び過ぎてコース効力の醍醐味がなくなるのも面白くありません。
この「飛び過ぎ問題」、あなたはどう思いますか?