プロゴルファー
Gridge編集部
日本初のPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」はココがスゴかった!
Gridge編集長のじゅんやあくです。
普段はツアー取材をしない私ですが、日本初のPGAツアー開催ということもあり、アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブ(千葉県)で行われた「ZOZOチャンピオンシップ」を編集長特権(?)で取材してまいりました!
試合のほうは、たび重なる悪天候により5日間開催となってしまいましたが、日本のゴルフファンにとってはタイガー・ウッズと松山英樹が優勝争いをするという最高の展開。
結果、タイガーが伝説のゴルファー、サム・スニードに並んで歴代1位タイとなるPGAツアー82勝目を挙げ、歴史的な1週間と1日は幕を閉じました。
私は3ラウンド目と4ラウンド目の途中までを実施した10月27日(日)に取材したのですが、詳しい試合内容などは他の媒体にお任せし、それ以外の部分で私が感じたことをお伝えしようと思います。
それでは、張り切っていってみましょう!
目次
ココがスゴかった1:来場者数がスゴかった!
悪天候に悩まされた今大会。当初は8万人の来場を予定していました。
いざふたを開けてみると、初日の来場者数は、なんと1万8536人!
ちなみに、今年国内で開催された男子ツアー、東建ホームメイトカップから日本オープンまでの16試合の1日の平均来場者数は約3424人、1試合の平均来場者数は約1万2207人となっています(もっとも来場者が多かったのは、ゴールデンウイーク開催だった中日クラウンズで、4日間で2万8060人を動員しています)。
つまり、初日だけで、“1試合分”の約1.5倍のギャラリーが会場を訪れたのです!
2日目が雨のため中止、3日目が観客の安全を考慮して無観客試合となりましたが、4日目の来場者数はさらに増えて2万2678人!
最終日となった5日目は、4日間通し券を持つ人など、一部の人しか入場ができなかったため観客数は2563人となりましたが、お客さんの入った3日間の合計は4万3777人の来場者数となりました。
当初予定していた8万には大きく及ばなかったものの、実質2日間でこの数字です。
実際に、2万2000人以上が訪れた4日目に足を運んだのですが、ティーグラウンドからグリーンまで、途切れることなく連なる人、人、人!
撮影を許可されたカメラマンは、一般的にロープ内に入って撮影をするのですが、ロープ内に入るのも一苦労、いったんロープ内に入ると今度は出るのも一苦労といった感じでした。
こんな光景が日本のゴルフ場で見ることができたなんて、夢のようでした!
余談ですが、ティーイングエリア周りやグリーン周りのローピング(ロープの設置)が、日本の試合よりも狭く感じられました。
ギャラリーと選手の距離がより近く、迫力のあるプレーが楽しめました!
ココがスゴかった2:開催コースがスゴかった!
開催コースとなったアコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブは、通常営業ではキングコースとクイーンコースの36ホールです。
今回、たくさんのギャラリーが安全に観戦できるようにするために、36ホールのコースを開催コースに選んだものと思われます。
今回、アウトはクイーンコースを、インはキングコースを中心にホールをピックアップしていました。実際の使用ホールがどのコースのどのホールだったのか、整理してみましょう。
1番(パー4):クイーン1番(パー4)
2番(パー4):クイーン2番(パー4)
3番(パー3):クイーン15番(パー3)
4番(パー4):クイーン16番(パー5)
5番(パー3):クイーン17番(パー3)
6番(パー5):クイーン12番(パー5)
7番(パー3):クイーン7番(パー3)
8番(パー4):クイーン8番(パー4)
9番(パー4):クイーン9番(パー5)
10番(パー4):キング10番(パー4)
11番(パー4):キング11番(パー5)
12番(パー4):キング8番(パー5)
13番(パー3):キング3番(パー3)
14番(パー5):キング4番(パー5)
15番(パー4):キング12番(パー4)
16番(パー3):キング16番(パー3)
17番(パー4):キング17番(パー4)
18番(パー5):キング18番(パー5)
(計パー70):(計パー74)
通常営業ならパー74となるコースをパー70として使用しました。
通常営業時の動線と異なるため、一部ホール間の開いているところでは選手たちがカートに乗って移動していました。
また、6番(クイーン12番)右ドッグレッグホールでは、バッバ・ワトソンら複数人が、本戦で使用していない右隣のクイーン13番をショートカットして攻めるといったこともありました。
同コースを実際にラウンドする機会があったら、どのホールが本戦の何番だったか思い出しながらプレーすれば、より楽しめることでしょう。
ちなみに、ドライビングレンジはクイーンコースの5番と6番をつぶして使用していました。
無観客競技となった3日目(第2ラウンド)では、10番ホールの池がフェアウェイにまで広がり、140ヤードのパー4としてプレーしましたが、それ以外のホールでは大雨が降ったと思えないほどのコースコンディションを取り戻しており、不眠不休でコースメンテナンスを行った130人ほどのコース関係者には頭が下がる思いです。
後述する「72ホール競技の成立」に対するコース関係者の貢献は計り知れません。
練習場として使用されたクイーンコース6番ホール
練習場では、実際に自分が使用するものと同じボールを練習で使用できる
ココがスゴかった3:メディアセンターがスゴかった!
通常、日本のゴルフトーナメントのメディアセンター(プレスルーム)といえば、ほとんどの場合、クラブハウス内で一番広いコンペルームなどが使われます。
しかし、今大会では、通常営業時の練習場の上に大きなプレハブを設置し、メディアセンターとして使用していました。
会場内には、記者会見用の座席の両脇に巨大スクリーンが2面、また、記者席の両側にも大きめのスクリーンが2面設置されていました。
サッカーのワールドカップやオリンピックなどの、テレビで見たことのあるメディアセンターのイメージに近かったです。
メディアセンター内には、コーヒーやジュース、パンやおにぎり、フルーツやお菓子などの軽食が常備されており食べ放題なうえ、メディアセンター隣にはビュッフェ形式のメディアダイニングが用意されていました。
「コース内をたくさん歩き回るからきっと痩せるだろうな……」という思惑は外れ、1日しか取材に行かなかったのにも関わらず、太って帰ってきてしまいました!
メディアセンター外観。通常営業時の練習場の上に設営されていました
ココがスゴかった4:72ホールやるのがスゴかった!
PGAツアーからは、とにかく72ホールプレーして競技を成立させようという鬼気迫る意気込みを感じました。
今回、2日目が大雨で競技中止になったにも関わらず、3日目を無観客で実施し、4日目には組み換えを行わずに早朝から3ラウンド目と4ラウンド目のできるところまでを行い、5日目となった月曜日に残りのラウンドを消化しました。
いろいろな事情があるでしょうし、軽々に比較したり外野から非難したりすることも憚られるのですが、JGTOはすぐに短縮試合にしてしまう印象があります。特に、月曜日に予備日を設定しているトーナメントはほとんどないでしょう。
移動日の問題等いろいろあるとは思いますが、アメリカ本土よりも狭い国内で開催している日本ツアー、もう少し「72ホールを完遂する意気込み」を持ってほしいと思ったのは私だけではないのではないでしょうか。
ココがスゴかった5:ルール違反がスゴかった!?
最後に、いろいろなところで話題になっているプレー中の撮影問題について。
大会期間中は、一部のエリアを除いて撮影は禁止されていました。にも関わらず、多くの人たちが、選手たちのプレーに対してスマホを向け、撮影をしていました。
会場の至るところで、「撮影は禁止ですよ!」と叫ぶスタッフと、彼らの目をかいくぐる“不届き者”のいたちごっこが繰り広げられていました。
ルールだから絶対守れと言うのはもっともだし、守らなければいけないのは大前提です。
しかし、「ルールを守れ!」と声を上げ続けることも大切ですが、時流に沿わずにルール自体が形骸化している例は世の中には少なくありません。
自動車の制限速度はそのいい例ですよね。
制限速度を守らない車をなくすのが現実的に不可能だと思われるように、プレー中に撮影する人がいなくなる施策を考えることはもはや不可能に感じます。
ですので、ここは時代の流れに合わせて上手く対応・変化させてほしいところです。
実際に、PGAツアーでは2017年8月にプレー中の撮影を解禁しています。その後、大きな問題も起きていないようです。
ただ、海外のスマホと異なり、日本のスマホは盗撮対策(?)のためなのか、シャッター音が出るのがデフォルト。
そういう事情なので、一概に無音シャッターのカメラアプリを推奨できないのですが、例えば、GPSや日時などによって動作を制限できる無音カメラアプリを開発することは可能なのではないでしょうか。
試合会場内でのみ使用できる無音カメラアプリを開発して、チケットなどにQRコードを印刷して来場前にダウンロードしておいてもらい、そのアプリでの撮影のみ許可すれば、プレーへの影響は軽微だと思います。
そのアプリに大会ロゴを配したフレームなども用意すれば、観客にもいい思い出になるのではないでしょうか。
このアイデア、プレーの撮影問題に悩むゴルフ大会主催者の皆さま、いかがでしょうか。
ちなみに今大会では、撮影可能箇所が複数用意されていました。
そのうちの一つが11番ホールの2打目地点だったのですが、そこに思い切りボールを打ち込んできたのがジャスティン・トーマス。
本人、キャディともども「ノーフォト、ノームービー」をギャラリーに対してお願いしていたのはちょっとした皮肉です。
もちろん、プレーヤーからギャラリーが遠いという理由でその場所が撮影可能エリアに選ばれていたのであり、プレーヤーが近くに来たのなら撮影を控えるのは当然ですが、彼らはその場所が撮影可能エリアだったとはおそらく知らなかったのでしょう。
ちなみにトーマス選手、2本の木の狭い間を抜くスーパーショットでそのピンチを切り抜け、ました。
トーマス選手が去った後、撮影を止められていたギャラリーの皆さんが、思い思いに感動や驚きの声を発しながら(「マジかよ、こんな狭いところ抜いていったのかよ! プロってすげーな!」とか、そんな感じ)、その場所を楽しそうに撮影していたのが印象的でした(もちろん私もその一人です!)。
ジャスティン・トーマスが打っていった場所を確認して驚愕するギャラリーたち
まとめ
全体的な印象としては、会場に訪れていたすべての人たちが、楽しそうな、幸せそうな顔をしていて、選手、ギャラリー、コース関係者など、そこにいたすべての人たち全員でその場の、幸福感あふれる雰囲気を作っていたと思います。
日本で初めてのPGAツアー開催となったZOZOチャンピオンシップ、天候に悩まされた面や前述のカメラ問題もありましたが、総じて素晴らしい大会になったと思います。
大会を招聘してくれたZOZOの前澤前社長をはじめとして、大会開催に尽力してくれた皆さま、困難な大会運営を乗り切ってくれたコース関係者や大会スタッフの皆さまに、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました!
おまけ
ギャラリープラザの値段設定が、こういったイベントにしては珍しくリーズナブルで好感が持てました!