Gride

gettyimages/1278217304
getty

ゴルフスイング

Nick Jagger

「フェアウェイウッドは払い打て」は本当か?

あるレッスンプロに聞いた話ですが、「ゴルフスイングの基本は、ドライバーから一番短いサンドウェッジまで同じですよ」という話をしたら、「でも、ウッドはアッパーブローに打ちますけど、アイアンは上からダウンブローに打ち込みますよね。打ち方はクラブによって全然違うんじゃないですか?」と、よく言われるそうです。

確かに、その考えも一理あります。

しかし、クラブの構造を考えてみましょう。

ウッドはソールが厚く、アイアンは薄いですが、これは重心深度の問題で、ウッドはボールが上がりやすく、アイアンは上がりにくい構造になっています。

また、ウッドのほうがアイアンよりも長いので、同じようなスイングイメージであっても、インパクトのイメージが分かれるのは、長さによってインパクトゾーンの入射角が変わるからと考えるべきです。

フェアウェイウッドも打ち込むイメージのほうが、ボールは上げやすい

getty

長いクラブになるほど、スイングプレーンはフラットになり、入射角は鈍角になり、クラブが短くなるほど、アップライトなスイングになって、入射角が鋭角になるのが自然です。

つまり、インパクトに向かう角度は、単にクラブの長さで変わるだけということです。

それはクラブの特性なのです。

1つ例を挙げますと、フェアウェイウッドのレッスンでは、払うようにスイープに打つというプロと、アイアンのように上から打ち込むというプロに分かれます。

これは、あくまでも個人のインパクトイメージであって、実際はどちらのプロもほとんど変わりなく、同じようにボールをヒットしています。

フェアウェイウッドには、クラブ長が長いためフラットなスイング軌道になる、クラブフェースに対してソールが厚い(重心深度が深い)、という2つのボールが上がる要素があります。

そこに「払い打つ」というスイングイメージを強く持ちますと、さらにボールを上げようとする要素を加えることになるので、イメージが必要以上に強くなってしまいます。

そのため、地面の上にあるボールをすくい上げようとして、右肩の下がったスイングになってしまい、結果的にダフリ、トップといった体の上下動によるミスショットにつながってしまうのです。

ということは、フェアウェイウッドはアイアンのように打ち込むようなイメージのほうが、ボールは上げやすいのです。

スイングでボールを上げるのではなく、クラブの特性を引き出すことでボールは上がるので、2つの上がる要素にボールを上げようという意識は不要なのです。

アイアンの場合、ショートアイアンになるほど、当然クラブは短くなり、ロフトが寝てきます。

ロフト角だけで十分ボールが上がるため、逆に上から鋭角にクラブを入れていくことで、上がる要素を抑えています。

つまり、ロフト自体はボールが上がりやすく、クラブ自体はスイング軌道でボールが上がるのを抑えているという構造になっているのです。

鋭角に入る分だけ、ダフリ、トップという大きなミスが出るというのも、ショートアイアンの特徴とも言えます。

アベレージゴルファー、特に100切りのレベルの人たちにとっては、比較的簡単に打てるアイアンよりも、苦手なフェアウェイウッドを克服することのほうが先決でしょう。

上がる要素を持ったフェアウェイウッドをアイアンのような感覚で打ったほうが、ストレスなく振り切れることと、フラットな軌道でもボールは十分上がるということを理解しておきましょう。

実際、ショートウッドの使い手の第一人者である片山晋呉は、まるでアイアンショットのようにフェアウェイウッドでターフを取っています。

クラブの長さによる適正なスイング軌道が、フェアウェイウッドでボールが上がる要素なのです。

ダフリ、トップ、チョロ、そしてボールが上がらないと悩んでいる人たちは、払い打ちにこだわり過ぎているのです。

ボールを上げようとすればするほど、ミスが出るのがフェアウェイウッドなのです。

ユーティリティークラブはやさしいわけではない

getty

近年、ロングアイアンに変わって、ユーティリティークラブをバッグに入れている人が増えました。

ロングアイアンが姿を消した理由として、アイアンのストロングロフト化が進み、ボールが上がりにくくなったことと、やさしいと言われるユーティリティークラブが増えたことが理由に挙げられます。

まず、これがアマチュアの一番の勘違いです。

ユーティリティークラブがやさしいクラブだという先入観を、アマチュアは持ち過ぎているのではないでしょうか。

確かに、ロングアイアンよりは物理的にボールは上がりますが、実際はフェアウェイウッドのほうが、構造上ははるかに上がりやすいのです。

また、固定観念からか、払い打ちをしている人が多くいます。

ユーティリティークラブには、ウッド型やアイアン型がありますが、基本的にはロングアイアンの機能を持ったクラブなのです。

前述したように、このクラブもアイアンショットのようなイメージで打つクラブです。

悪いライからでも、少し打ち込んでいったほうが、ミスの確率が少ないクラブ構造なのです。

しかし、ロングアイアンとしての感覚でバッグに入れている人は意外と少なく、どちらかというと、距離を稼ぐやさしめのフェアウェイウッドという感覚を持っている人が多いのではないでしょうか。

知っておいてほしい知識として、ロフト角が21度前後のユーティリティークラブは4番アイアンの代わりとなるものです。

また、18度のロフトならば、5番ウッドと同じですが、実際の長さは5番ウッドよりも短いのです。

それが、アマチュアゴルファーが打ちやすい、振りやすいと感じる理由です。

ユーティリティークラブはミドルアイアンの感覚で打つ

getty

しかし、実際に打ちやすいと思うあまり、5番ウッドと同じ感覚でボールを左に置き過ぎている人が多いのですが、実際は5番ウッドよりも短いのですから、もっと体のセンター寄りに置かなければなりません。

クラブが長くなるほど、ボールの位置は左になり、短くなるほど右になるのが自然ですから、ユーティリティークラブは、ミドルアイアンと同じ感覚で扱ったほうがクラブの特性を生かせるのです。

ロングアイアンというクラブは、芯でヒットしなければ、ボールは上がりません。

その点、ユーティリティークラブは低重心であり、スイートスポットも広いので、アイアンに比べればボールは上がりやすく、また、フェースの芯よりも上部でヒットすれば、スピン量の少ないボールも打てます。

ボールの位置を変えれば、スピンコントロールも意外に簡単なクラブなのです。

例えば、長いパー3で3番アイアンの代用として、ティーアップをして、普通に気持ちよく振れば、ウッドのように高さも出て、グリーンに止めやすくなります。

ベアグラウンドのような悪いライでも、少しボールを右に置いてスイングするだけで、ボールも上がり、強いボールが打てるクラブなのです。

それぞれのクラブの特性を考慮に入れてスイングすることで、それぞれのクラブの特徴を上手く活かすことができるのです。