ゴルフスイング
Yanagi@TPIトレーナー&ドラコンプロ
「腰のキレ」という悪魔のキーワード~体の仕組みを正しく知ろう~
ゴルフスイングのアドバイスで必ず出てくるキーワード「腰の切れ」。私はこれを“悪魔のキーワード”と認識しています。
「腰の切れ」や「腰の回転」というキーワードを信じて、「腰を早く回転させる」べく練習に励む人は多いと思いますが、腰(腰椎)は約5度程度しか回転することができません。
大切なことなのでもう一度言います。「腰(腰椎)は約5度程度しか回転することができません」。
え? どういうこと? と思う方のために、今回は腰の動きやその他関節がどのようにしてテークバックでの捻転を生み出すしているか解説しようと思います。
人の体は「安定性を求める関節」「稼働域を求める関節」でできている
私たちの体の関節は、身体を保持するために使う関節、手足を大きく動かすために使う関節に分かれています。
安定性も求めるし、稼働性も平等に求められるという特殊な関節はありません。必ずどちらかに割り振られます。
具体的に関節はどのように分かれているかというと、以下の通りです。
「安定性を求める関節」……膝や腰のように主に前後方向に動く
「稼働域を求める関節」……首や肩のように前後左右に動く
ゴルフスイングは、プレーヤーの平均年齢が高いことから比較的体の負担が少ないイメージを持ちやすいスポーツですが、関節の動き、体の使い方としては非常に複雑なスポーツです。
また、年を取ってから始める人も多く、正しい動きを理解しないまま練習を重ね、膝や腰のケガに悩む人も少なくありません。
そして私が「腰のキレ」を悪魔のキーワードと認識しているのは、そのためです。
「腰」とは読んで字のごとく、体の要です。
安定性を求める関節の代表格であるにもかかわらず、「腰のキレ」というキーワードによる誤解によって、無理に左右に曲げる動きを練習している人が多くいます。
テイクバックに必要な稼働域
大きなテークバックを作るためには、股関節~頸椎までの関節が、それぞれ与えられた役割の分だけ旋回してくれればいいのです。
関節の柔軟性は人によって違いますが、ざっくりと数字で示すと
頚椎……約50度
胸椎……約35度
腰椎……約5度
股関節……約50度
です。
腰の回転はほとんど回りませんし、新体操のオリンピック選手だって腰を大きく回転させることは不可能です。
「腰のキレ」「腰の回転」は股関節と胸椎の伸展によって大きく見えるだけなのです。
大きなテークバックを作るには、何よりも「股関節」の使い方が大切になってきます。
「股関節」を正しく使うことで、地面+下半身のパワーをボールに伝えることができます。
代償運動に気を付けよう!
代償運動(代償動作)とは、関節の柔軟性がなくなったり、ケガによって機能が障害された際、ある動作や運動が行えなくなった時に、ほかの筋肉の動きで動作を補って行う動きです。
本来の動作や運動を行うのに必要な機能以外の機能で補って動作や運動を行うのです。
スポーツ中に動きが足りないと感じる部分があると、「代償運動」によって、その動きをカバーしようとします。
多くは、リハビリなど医療現場で使われる言葉ですが、ゴルフでも「代償運動」を行っている人を多く見かけます。
例えば、「手を上に挙げる動作」を行う際に、体幹を側屈させ、肩を持ち上げることで手を上げようとしたり、「肩関節の外転」という動作では、三角筋や棘上筋(きょくじょうきん)を使ってきれいに腕を伸ばすことができなければ、主に上腕二頭筋を使って肘を曲げるようにして肩を外転させます。
同様に、腰の動きにも誤解があると体を屈曲させたり、腕を使ってトップオブスイングを作ろうとしたり、非効率なスイング(ケガにもつながるスイング)を行ってしまう可能性があるのです。
パワーを生み出すテークバック
パワーを生み出すテイクバックで大切なのは、「股関節」で下半身の力を受け止めることと「胸椎」の伸展によってきれいなトップオブスイングを生み出すことです。
この時、腰椎(腰)は胸椎の動きに連動して少し回転しますが、その回転量を必要以上に大きくする必要はありません。
「腰の回転」というイメージを持ってしまうと、腰を左右に曲げる動きを入れてしまい、腰痛につながる動きになる場合もあります。
腰(骨盤)の動きは、アドレスで作られた前傾の角度をインパクトに向けて徐々に起こしていくのがメインの動きです。
左右に意識的に曲げる動きは必要ありません。
「腰の回転」を意識するのではなく、「股関節」を使って胸の向きを飛球線後方に向け、「胸椎の伸展」によって大きなテークバックを作るように意識しましょう。
切り返しにかけては「腰を回転」していくのではなく、左のお尻を後方に引くようにして回転していきましょう。
英語では股関節を「hip joint」と言います。
「股間」というとどうしても体の前方にあるイメージがわきますが、どちらかというと「お尻」に近い側にある関節です。
ちょっと難しい単語も出てきましたが、ケガとは無縁に、生涯ゴルファーでいるためにも、体の使い方について正しい知識を身に付けていきましょう!!
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