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ゴルフスイング

Yanagi@TPIトレーナー&ドラコンプロ

研究論文に学べ!科学的にヘッドスピードをアップする方法!

ゴルフ好きにはいろいろなマニアがいます。

仕事の合間を縫っていつもゴルフ場にいる「ラウンドマニア」。

新しいクラブは試打してレビューしないと気が済まない「ギアマニア」。

プロゴルファーのスイング動画を夜な夜な研究している「スイングマニア」

……などなど、ゴルフの魅力に取りつかれると、どこまでも深い沼にのめり込んでいくものです。

私はと言うと「スイングマニア」の領域に片足を突っ込んでいます。最近は、ゴルフスイングに関する論文を読むことが趣味になっています。

そこで今回は、ヘッドスピードアップに関する論文を参考に、スイング中に大切な動きをまとめてみました!

上半身の回転、下半身の回転、どっちが大切?!

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ヘッドスピードを効率よく上げるには、ヘッドを走らせる意識を持って上半身の回転を速くしたほうがいいのでしょうか?

それとも、骨盤の回転(いわゆる腰の切れ)を速くしていったほうがいいのでしょういか?

これは、「鶏が先か、卵が先か」に近いジレンマを感じる論争ではありますが、結論から言うとヘッドスピードアップにより貢献するのは、「骨盤の回転」です。


2種類の打撃動作では共通して、上胴の最大角速度の出現時点における骨盤の角速度の貢献度が大きいことから、体幹部の捻転能力より骨盤を回転させる能力を高めることが重要と考えられる。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/55/1/55_09015/_pdf

鹿屋体育大学大学院の実験では、野球経験者に「飛ばし屋」が多いことに着目し、ピッチング、バッティング、ドライビングの3種の動作を分析し、ヘッドスピードとの相関性を調査しました。

その結果、バッティングとドライビングでは、上半身の回転、下半身の回転に類似するところがあり、ヘッドスピードを上げるには「骨盤の回転」速度を高めることが大切であると結論付けています。

そのため、ヘッドスピードアップには体幹部の捻転能力より骨盤を回転させる能力を高めることが重要であり、骨盤の回転運動を引き起こしている下肢の筋群に対して、筋力および筋パワーを強化するトレーニング方法を実施していくことが重要だとしています。

実際に様々なレッスンでも「手を使わない」「下半身の回転で打つ」というキーワードが出ていますが、これは感覚だけでなく科学的にも正しいと言えるでしょう。

インパクト時の重心位置で飛距離は変わる?!

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ドライバーで飛距離を伸ばすアドバイスとして、「左足に積極的乗っていけ!」であったり「軸は右に傾けアッパー軌道でインパクトしろ!」など、重心位置に関するアドバイスが良く出てきます。

ドライバーヘッドの大型化、シャフト性能のアップによって、パーシモンやメタルドライバー全盛期とはスイング自体も大きく変わってきています。

プロゴルファーのような筋力や技術がなくても、誰でも比較的簡単に、そして真っすぐに飛ばせるようになってきていますよね。

今のゴルフは「パワーゴルフ」と呼ばれ、ドライバーの飛距離がスコアに直結するような時代になってきています。

それでは、ドライバーの飛距離を伸ばすためにはどのような重心コントロールが必要なのでしょうか?

ゴルフスイングで考える重心は2つ

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ゴルフスイングを分析する上では、2種類の重心移動に着目しなければなりません。

1つ目は、「足圧中心」といって、左右の足への体重のかけ方(地面反力)による重心の移動。

2つ目は、「身体重心」といって、私たちの体の重心(一般的に重心といえばこちらを指す)です。

いわゆる「明治の大砲」と呼ばれるような、すべての重心が後ろ(右側)に傾く「あおり打ち」や、すべての重心が前に突っ込むような極端なスイングは論外として、ゴルフのスイングでは「右足重心」「左足重心」どちらでもヘッドスピードを出すことは可能です。

イメージ的には「左足」に乗ったほうが飛ぶ気もしますが、シングルの腕前でも「右足重心」でスイングする人は多くいます。

ゴルフスイング中の足圧中心と身体重心の移動を同時に検討し、身体重心に対する足圧中心の位置関係を明らかにした立命館大学大学院の研究によると、


ゴルフスイング中の体重移動の方法は、足圧中心および身体重心はともに、インパクト時に飛球方向側の足付近に位置する選手(Front foot style)と、飛球方向と反対側の足付近に位置する選手(Reverse style)が存在し、いずれのパラメーターにおいてもスイングスタイルの類別が可能であり、スイングスタイル間にクラブヘッドスピードに差がないことが明らかとなった。
http://www.ritsumei.ac.jp/~isaka/ronbun/izumoto.pdf

としています。

つまり、ヘッドスピードを上げる上ではどっちのスイングも「OK」なのです。

この実験では「右足重心」でのヘッドスピードアップの動きは解明できなかったようですが、「左足重心」のスイングについては、もう少し深く考察されています。

◾️「左足重心」で飛ばす方法◾️

1.体幹部の移動速度・回転角速度を増加させることによって高いクラブヘッドスピードを獲得する

2.足圧中心が身体重心よりも飛球方向側に位置している選手においては、足圧中心が身体重心よりも飛球方向側へ離れるほど、クラブヘッドスピードは増加する

というものでした。

科学的な飛ばし方は?

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この2つの論文の考え方を統合すると、より飛距離の出る飛ばし方は、

1.ダウンスイング開始時は左足をしっかり踏み込む
2.強烈に骨盤を回転させることで腕を振る
3.「身体重心」(臍下丹田)を右に残し、ヘッドを走らせる

という感じでしょうか。

「身体重心」の位置は、足底から計測すると、成人男子で身長の約56%、女子では約55%の位置にあります。

いわゆる「臍下三寸にある下丹田」のあたりをイメージするといいと思います。

丹田とは、道教の用語であり、エネルギーの中心となる場所ですが、解剖学的には、「下丹田」周辺には下半身と上半身をつなぎ、骨盤のインナーマッスル(深層筋)として重要な腸腰筋が存在します。

腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)は、人の身体運動の中で最も強力な働きを行う股関節と、体幹の中心である胸椎下部・腰椎など脊柱につながっています。

トップアスリートは、ほぼ例外なくこの筋肉を使いこなしていますし、ゴルフの捻転差を生む上でも非常に重要な筋肉です。この点からも、理に適ったスイングになっていると考えられます。

皆さんもお腹に目いっぱい力を入れて、キレッキレの腰でビックドライブしちゃいましょう!!