ゴルフスイング
Golive
イップスゴルファーはまだまだ諦めない!
練習場ではそうそう出ないのだか、コースではしょっちゅう出て来るオバケ。
最近読んだ書籍の内容を交えて、筆者が体験し学んだことを書いてみた。
目次
イップスの定義と、筆者の体験など
『オックスフォードスポーツ医科学辞典』には、イップスはこう定義されている。
“無意識的な筋活動の乱れで、ゴルファーにみられ、パッティング中に腕が痙攣するのが特徴。処置が非常に困難である。症状を緩和するために利き手側でないほうを使ったり、ポジションを変えたりするゴルファーもいれば、精神安定剤(ベンゾジアゼピンなど)を服用するゴルファーもいる”
筆者は25年ほど前からイップスである。当時はショットの腕前が上がり、70台は当たり前になっていた。
いろいろと勉強する中で、最後はアプローチとパッティングの精度がより大切と理解した。
しかし頭と体の動きが連動しない。そのために、コース現場でその2つのことをトライする際に、極度の緊張が出てしまい、ミスを頻発するようになった。
イップスはプロレベルでもないどんな人にも地獄を覗かせてくれる。
そして筆者は50センチのパットが打てなくなり、長尺、中尺や違うヘッド形状のパターもほぼすべて試したり、ありとあらゆるグリップも試したがダメだった。
もっとひどかったのはアプローチである。
一時まったく打てなくなり、50ヤード以内をパターを使ってクラブ選手権に臨んだりしていた。
惜しくも(?)一打差で予選通過がならないことや、途中棄権などの経験もある。
周りの上手いゴルファーに相談したところ、「ゴルフをやめたほうがいい」とアドバイスされたこともあった。
そんなこんなで。
いつか克服したいと思ってこれ迄ゴルフはやめずに来たが、体を痛めたり、体力が落ちてきたこともあって、最近は80台前半をウロウロしている。
アプローチの悪いところが出てくると、ミスを連発し90を切れないこともままある。
イップス克服のための勉強もしてきた筆者だが、パットに関しては、現在プロも取り入れている、右手を添えるだけのクロウグリップを8年ほど前から採用していた(プロを真似ていると言われるのが嫌な天邪鬼な筆者は、去年から普通のグリップに戻した)。
パット練習は、毎朝毎晩、30センチから2メートルを転がしている。
またアプローチに関しては、芝生上でも練習ではまずまず打てるようになってきている。
しかし、忘れそうでいても突如ひょっこり現れるのがイップスである。
先日のラウンドでは、2メートルのアプローチを3度チョロ、50センチ前後のパットも3度外してしまった。
スコアは86。タラレバは言いたくないが、心の中で叫びたくなった一日であった。
ということで、またまたイップスに関する勉強で、比較的最近出版された3冊の関連書籍を読んでみた(実はこれまでもその類の本を数10冊は読んでいるのだが)。
書籍3冊の概要
読んでみた書籍は、以下のものである。
①『イップス-スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(石原心著・2017年2月 大修館書店)
②『イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち』(澤宮優著・2018年1月 KADOKAWA)
③『イップスは治る!』(飯島智則・2018年12月 洋泉社)
いずれも中心は野球選手の話であるが、②では横田真一・佐藤信人の両プロゴルファーの話も書かれている。
①は比較的分析的な語り、②はプロ選手の実例とそこからの考察、③は克服法も交えたサポートについて述べられている。
読めば読むほど、イップスにはまり込むという方もいるが、専門家の中ではきちんとした理解が必要との意見が多い。
『イップス-スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』
この本には、スポーツ理論や解剖医学の見地からも考察され、短い時間で行われる動作では考えながら身体の動きをコントロールすることは非常に難しく運動が自動化されることが必須だが、一度自動化されたはずの基本動作の中でイップスが起こる、と書かれている。
ゴルフのイップス対処法としては、
a.リズムを伴ったルーティーンをつくる
b.抹消部の動きを制限したグリップにする(指とその先端の動きをしにくくして他の部位でショットする、ポジティブな代償動作を引き出す)
c.グリップの太さや重量を変化させて練習する
ということであった。
ホムンクルス・セルフエフィカシー・局所性ジストニアという言葉が出てきており、イップスに関して以外の解剖学・医学的なことの勉強にもなった。
『イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち』
この本には、野球の場合、緩いボールを投げることができないというイップスがあるとの例が挙げられている。
あるプロ野球選手の例では、技術的な要因で出始め(地肩が強くて緩い球が投げられない)、精神的な要素が強くなってきてイップスに陥る複雑さが語られている。
このような、簡単なことや時間的余裕、短い距離などの力を必要としないことでできなくなる例は多くあるそうで、筆者の場合も同様であり、非常に納得できた。
ゴルファーの佐藤信人プロは、拘り抜く、過剰に気にし過ぎる性格で、上手いと言われていたパットで、雑誌の取材での自分のパッティングフォームを見て矯正するうちにイップスになったとのことだった。
握りやパターを変えてみても、徐々にすぐに発症するようになったしまった。
佐藤プロは選手生活の最後まで治らなかったが、イップスになって人間性に深みが出てよかったと思っていると書かれている。
同様のことを、横田真一プロも話している。
権威の小林弘幸順天堂大医学部教授は、イップスは心因性でもメンタルでもないという。
自律神経を整えるセル(細胞)・エクササイズ(アクティブな交感神経ではなく、リラックスさせる副交感神経優位で運動する)を取り入れることを推奨している。
『イップスは治る!』
この本では、野球のスローイングに絞って話を展開、イチローから始まって経験者の実情に迫り、指導者やプロの世界の視点からも言及、最後に克服法について述べている。
イップス研究所の河野所長は、イップス克服は指導者の理解が大きいという。
研究所では実際にイップス克服の指導も行っており、質問をしていきながら、本人が自分で答えを導き出すコーチング手法を取り入れている。
言葉がけは非常に大切だという。コーチからでも自分からでも、「~しなければ」は厳禁、「~したい」でいい、とのことである。
タイトルは『イップスは治る!』だが、河野所長は治るではなく克服するという立場で指導していき、本人の受け容れや気づきを促し、乗り越えていくことが大事だと述べている。
まとめてみると。
完璧主義者ではないのにイップスになってしまうこともある。
イップスは技術的な面からと精神的な面から起こってしまうということである。
この2つは密接に関係していて、どちらかが良くなればイップスが治る、ということではないらしい。
「1万時間の法則(※)」というものがあるらしい。スポーツなどその道のエキスパートになるには、1万時間の訓練が必要で、それを越えてしまうと多く練習を必要としなくてもよい(調整期)とのことだ。
※何事もプロレベルになるにはだいたい1万時間かかると言われている法則
手嶋多一プロのようにあまり練習しないプロゴルファーもいる。
イップスになったからといって、無闇にこねくり回した練習をする(筆者!)必要はない。
イップスでなくとも、ゴルフにとってはシンプルな考え方、シンプルな打ち方が一番いいということが言えるようだ。
そして発症してしまえば、プラス思考で良いことをコツコツと積み重ねていくことが大事。
イップスになった人は、人の気持ちを理解できて優しくなれる、ということだ。
ならないことが一番ではあるが、とても気が楽になる言葉であり、筆者も救われる気がする。
筆者も諦めずに、目標のエイジシュートを目指していく。
読者の皆さんにも参考になれば幸いです。