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世紀の奇行!?ミケルソン、グリーンからこぼれ落ちそうな動いているボールを打つ!
世界一のゴルファー決定戦といっても過言ではない全米オープンで、目を疑うプレーが起きました。
中継を観戦していて「こんな行為は前代未聞だと」思いました。
事は全米オープン2018、3日目13番ホールで起きたのです。
メジャー5勝のフィル・ミケルソンがボギーパットを打つと、下り傾斜を止まらないボールはカップの右をすり抜けグリーンからこぼれ落ちそうな勢いで転がっていきました。
「ああバンカーか?」と思われたが、何を血迷ったか転がっているボールをミケルソンは打ち返したのです。
「ええっ? そんなことあり?」
僕は率直にゲームを捨てたのだと思いました。
ミケルソンを見るとニヤニヤ? ヘラヘラ? ニコニコ? とにかく笑っていました。
結局8打でカップインし、2打罰を受け10打でホールアウト。
USGAは伝統あるこの試合でこんなことを許すのか?
少なくともそれまでミケルソンが大好きだった僕は、この奇行を受け入れられないでいたのです。
フィル・ミケルソンってどんな人?
アメリカ合衆国カリフォルニア州出身の48歳。
“世界一のレフティ”と呼ばれ、天才的にアプローチが上手く、グリーン周りからのロブショットを得意としているプレーヤー。
幼少期に父親のスイングを鏡写しのようにマネしていたら左打ちになってしまったという、普段は右利きの珍しいレフティです。
アリゾナ州立大在学中に全米アマチュアゴルフ選手権で優勝。またアマチュア選手ながらPGAツアー大会のノーザン・テレコム・オープンで優勝しています。
丸山茂樹選手とはジュニア時代からの旧友のようですね。
アマチュア時代から騒がれて、プロ転向後PGAツアー通算43勝。メジャー5勝(マスターズ3勝・全英オープン1勝・全米プロ1勝)。
まだメジャーを勝っていない日本人からすれば、憧れの選手なわけです。
そのミケルソンが唯一手にしていないメジャータイトルがこの全米オープンなのですから、思い入れが相当なのは確かでしょう。
ミケルソンの思い出
全米オープンでいえば、1999年のペイン・スチュワートとの死闘が有名ですね。
ペイン・スチュワートといえば、世界一かっこ悪くて、世界一かっこいいガッツポーズが有名です。
銅像にもなりました(写真)。残念ながらミケルソンとの死闘の4か月後飛行機事故で亡くなってしまうんですけど・・・。
僕は個人的にミケルソンには、こんな思い出があります。
まだデビュー間もないミケルソン(たしかまだヨネックスのクラブを使っていた頃)、日本ツアーのサントリーオープンに出場していた時のこと。
同伴競技者の金子柱憲プロが水切りショットを打とうとした際、水面に微かにクラブが触れたことを指摘しました。
本人に自覚があったかどうかはわかりませんが、金子プロはそれを受け入れた、という出来事です。
僕は実際にコースで観戦し、目の前で見ていたので同伴プレーヤーにこのような指摘ができるフィル・ミケルソンという選手の公明正大さに感銘を受けました。
プレースタイルは観る者の気持ちを爽快にしてくれる歯切れのいいゴルフで、時として想像をはるかに超えたプレーを魅せてくれるのがフィル・ミケルソンです。
一方でナイキに移籍したころのタイガー・ウッズに批判的なコメントをしていたこともあります。
正確な記憶ではありませんが、「あんなクラブであれだけのパフォーマンスをするタイガーはすごい」というようなメーカー批判・移籍金の膨大さに対するタイガーへの批判ともとれる発言です。
後にメーカーともタイガーとも和解したそうですが、今でもタイガーとミケルソンが同組になるとザワつくというのが恒例です。
Play the ball as it lies.(ボールはあるがままに打て)という精神
ゴルフには不公平がつきものです。
スタートの時間帯・ディボット跡・風のいたずら・・・数えたらきりがありません。
ミケルソンの行為は何かの主張だったのでしょうか?
会見で「ルールを戦略的に使った」「以前からやりたかった。ルールを知った上で、バンカーに落ちるよりはいい。無礼な行為と思われるのなら、謝ろう」と悪びれることもなく堂々と主張するミケルソン。
USGAのセッティングに対する主張なのか、ルール改正に対する主張なのか、はたまた僕らの知り得ない事なのか。ルールを拡大解釈したミケルソンは利口なの?
拡大解釈してミケルソンの行為を“仕方のないこと”としても、それは優勝を連覇という偉業で達成したブルックス・ケプカに対して失礼なのではないでしょうか。
いかなる環境の中でも表情一つ変えずに取り組んだケプカや出場全選手にに敬意を表すれば、何らかのペナルティがあってしかるべきかとも思います。
拡大解釈せず“あるがまま”に行為を解釈すれば、プロとしてではなくゴルファーとして恥ずべき行為なのではないでしょうか。
世界中の多くのアマチュアゴルファーがルールを守ることは当然として、“Play the ball as it lies.(ボールはあるがままに打て)”という精神に則ってプレーしています。
そのアマチュア達に支えられてプロゴルファーという職業が成り立っていることを忘れないでほしいです。
日本でもプロアマ戦で無礼な行為があった(真相がわからないので批判はしません)と聞きますが、プロゴルファー達は、世界中の多くのアマチュア達、日曜日に練習場に行くことと月1のゴルフが楽しみという一般ゴルファー達の消費に支えられ、その職業が成り立っているということを肝に銘じてほしいと思うのです。
そしてプロというのはアマチュアのお手本であってほしいです。
ミケルソンを嫌いになりたくないよ!!
※編集部追記……20日朝(現地時間)、「自身の行為を恥ずかしく思う、自分に失望した。謝罪したい」という内容の文書を一部メディアに対してミケルソンが送付したことを米メディアが報じました。