プロゴルファー
こせきよういち
もうすぐやって来るマスターズ!~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#210
いよいよ来週は今年最初のメジャー「マスターズ」です。
会場のオーガスタナショナルGCには、数は制限されるとはいえ「パトロン」と呼ばれるギャラリーが帰ってきます。
その数は発表されていませんが、事前の報道によれば、5000人程度でしょうか?
それでも、マスターズならでは、木立の向こうから湧き上がるパトロンたちの拍手・歓声が耳に届くことでしょう。
このページでは以前に、あまり知られていない「マスターズのタブー」を取り上げたことがありますが、今回はマスターズにまつわる興味深いトリビアをご紹介。
アウト・インを逆に回っていた
第1回「マスターズ・トーナメント」は1934年3月22日~25日の日程で開催されました。
その時のコースレイアウトは、アウト・インが今とは逆でした。
ちなみに、オーガスタナショナルGCでは、「アウト・イン」でも「フロント9・バック9」でもなく、正しくは「ファースト9・セカンド9」と呼びます。
下記の米誌「ゴルフダイジェスト」によれば、設計したアリスター・マッケンジーはもともと現在のルーティングを考えていたのですが、造成の途中でアウト・インを逆にします(理由は不明)。
そして、そのまま第1回「マスターズ」を開催。
ところが、その年の秋、コース再開(5月~10月はクローズ)を前に、クラブの創設者であるボビー・ジョーンズとクリフォード・ロバーツは、現在のアウト・インに変えたのです。
当時、そのことを伝えた地元紙は理由を、「(現在の)1~9番に比べ、10~18番はよりタフ。最初にやさしいほうからプレーすることでプレーヤーにウォームアップの機会を与えたいから」と記述しています。
一方、ロバーツは著書の中で、理由は天候、とりわけ霜だったと記しています。
「1~9番は高台にあるため、霜が先に溶けるので、より早い時間からプレーできるから」
このルーティングの変更がなければ、あの有名な「アーメンコーナー(正確には11番パー4の第2打から13番パー5のティーショットまでを指す)」もスタート直後の2~4番ホールとなり、いまほどプレーヤーが「神に祈る」ことはなかったでしょう。
マスターズがトーナメントにもたらしたもの
マスターズには、ここから始まり、その後世界中のトーナメントに広まったことがたくさんあります。
なかでも特筆すべきは、4日間72ホール・ストロークプレーという競技方式です。
例えば、1934年の全英オープンは水曜と木曜に予選ラウンドの各18ホール=計36ホールをプレー。金曜の1日で、決勝ラウンドの36ホールをプレーする形式で行われています。
成績を合計ストローク数ではなく、オーバー・パー/アンダー・パーの形式で表記するようになったのもマスターズが最初です。ですから、現在一般的なリーダーボードもこの大会で生まれたものです。
また、いわゆる「ギャラリースタンド」の設営も、マスターズが始まりでした。
真実? それとも都市伝説?
最後はマスターズにまつわる「都市伝説」について。
マスターズではアザレア(ツツジ)やカメリア(ツバキ)、ダグウッド(ハナミズキ)といった花々が満開に咲き誇り、「ゴルフの祭典」をより華やかに盛り上げます。
でも、それが毎年毎年、大会に合わせて咲くのは何らかの作為があるのでは? と昔からささやかれていました。
例えば、花木の根元に氷を敷き詰め、咲く時期を調整するとか。
しかし、それには日々、膨大な量の氷が必要で、余りにも非現実的。どうやら開花の調整は行われていないというのが、結論のようです。
もう1つは、テレビ中継で耳にする鳥の鳴き声。
これにも「マスターズの会場で鳥の姿は見たことがない」という話から、中継のCBSの効果音なのでは? という噂があります。
実は、CBSには疑われる理由があるのです。
2000年の全米プロのテレビ中継で、流れてきた鳥の声がその土地にいるはずのない種類のものであることを専門家が発見。指摘されると、効果音の使用を白状したのでした。
そこで、翌2001年のマスターズで、ニューヨークポスト紙がオーガスタナショナルGCに、この噂について質問したのですが、その答えは、「あなたが耳にする鳥は本物で、昔からオーガスタに生息するものです」というものでした。
その姿は見えなくても、本物と信じましょう。