プロゴルファー
Taddy Bear
ステップ・アップ・ツアー2021年初戦の優勝は佐藤靖子選手!
――いつか優勝するまでゴルフをやりたい。
その思いを抱き続けて22年目。
最終ホールで追い付き、プレーオフで決着をつけての初優勝。
佐藤靖子選手、桜満開。
目次
ステップ・アップ・ツアーで注目されるのは伸び盛りの若手
最初に、佐藤靖子選手の紹介をしましょう。
葛城ゴルフ倶楽部に入社したのは高校卒業後で、まだクラブを握ったこともない初心者。
しかし、そこから猛練習を重ねてわずか4ヶ月後のプロテストに合格。
1999年のことでした。
まだ宮里藍さんが登場する以前のことですね。
最高成績は2004年のプロミスレディ3位タイ、それから2003年の日本女子ゴルフ選手権4位。
2006年の新キャタピラー三菱レディースやその他の試合で首位に立ったこともありますが、優勝することはありませんでした。
2019年の主なフィールドはステップ・アップ・ツアー。
予選落ちが目立ち、最高位は京都レディースオープンの12位タイ、2020年はかねひで美やらびオープンの25位タイ。
近年、目立った成績を残しているわけではありません。
まして、最近の女子プロで注目されるのは黄金世代を始めとする若手一色。
ステップ・アップ・ツアーにも黄金世代やプラチナ世代が大勢いて、皆、一様にレギュラーツアーでの活躍を目指しています。
大会前、佐藤選手が優勝すると誰が予想したでしょうか?
初日トップは昨年の同大会で首位争いをした山本景子選手
ステップ・アップ・ツアー2021年開幕戦、ラシンク・ニンジニア/RKBレディースは3月23〜24日にかけ、福岡カンツリー倶楽部 和白コースで開催されました。
全長は6309ヤードと決して長くないものの、アップダウンが激しく、フラットに打てるポイントが極端に少ないコース。
またグリーンは砲台で、落とし所によってはラフまで転がっていく難しさ。
この難コースの策略に落ちてしまったのが金田久美子選手。
初日、8番ホールまで1バーディノーボギーと安定していたゴルフを展開していましたが、9番ホールで崩れました。
極端な左足上がりのライで2打目を右に打ち込んでOB。
続く4打目も右OBゾーンに打ち込んだものの、なんとか転がって出てきましたが、アプローチが寄らずパットが入らずで、このホール+4。
ラシンク・ニンジニア/RKBレディースは2日間競技。初日とはいえ、首位奪取はかなり難しい状況に陥ってしまいました。
トップに立ったのはプロ5年目の山本景子選手。
2020年の同大会、rashink×RE SYU RYU/RKBレディースでは2日目にトップ争いをしていたものの、17番で痛恨のダブルボギーを叩いて優勝戦線から離脱しています。
2位に佐藤選手、3位にはプロ8年目の森岡紋加選手。奇しくも、優勝経験のない3選手が最終組となりました。
最終18番ホールでトップに立っていたのは森岡紋加選手
コースセッティングとテレビ解説を担当していた諸見里しのぶプロは優勝スコアを-6〜-8と予想していました。
しかし、パーは取れるけれどバーディは難しいというセッティング。
最終組だけでなく、後続組の中にも大きくスコアを伸ばす選手が表れず試合は一進一退の膠着(こうちゃく)状態。
若干、順位の変動はあったものの、最終18番まで上位は最終組3選手のままでした。
トップは森岡選手で-4。2位は山本選手、佐藤選手で-3。
18番ホールパー5は右ドッグレッグでやや打ち下ろしの後、かなりの打ち上げでフェアウェイは右から左に傾斜、ほとんどフラットなところがありません。
最初に脱落したのは山本選手。
3打目を放った瞬間、ストンと腰を落としてしゃがみ込むとボールの行方も確認せずうなだれてしまいました。
確信したミスショットは手前グリーンエッジに落ちると、ころころとラフまで転がっていきます。
アプローチは寄せたものの、結局パーでホールアウト。
森岡選手は手前グリーンエッジ、佐藤選手はグリーン左5メートルのところに乗せています。
ここで、佐藤選手は緩い下りのラインをしっかり読み、絶妙なタッチでバーディを奪取。
パーの森岡選手とプレーオフに入りました。
いつか優勝するまでという思いを抱き続けた佐藤選手
優勝経験がないことは、人にどのような、どれほどのプレッシャーを与えるのでしょうか?
プレーオフは18番ホール。森岡選手はティーショットが右のカート道で跳ねて距離を稼いでフェアウェイに戻るというラッキーがありながらも、3打目でショートするミス。
佐藤選手はプレーオフのドライバーショット、身体が回り切らないミスで左ラフ。
そして森岡選手はピンまで絶好のフェアウェイ60ヤードのところでミスが出ました。
グリーンを大きくオーバーして奥のラフ。
ステップ・アップ・ツアーとはいえ、限られた上位のプロによるトーナメント。滅多に見ることのないショットです。
きっと、自分では気が付かないほどアドレナリンが出まくっていたのでしょう。
ちなみに森岡選手、普段はとても穏やかな目をしていますが、集中した時はカッと見開いて目が2倍ぐらい大きくなります。
対する佐藤選手はピン手前、またも5メートルほどの距離。これをしっかり沈め、バーディでプレーオフを締めくくりました。
印象的だったのは佐藤選手がカップに沈めた後、森岡選手は笑顔で歩み寄って握手を求めたシーン。
グッドルーザーですね。
「いつか優勝するまでゴルフをやりたいと思って、ゴルフを続けてきた」
これは小西綾子レポーターが優勝インタビューで引き出した佐藤選手の言葉。プロゴルファーすべての選手が優勝を経験できるわけではありません。
優勝できないまま引退した選手のほうがはるかに多いのです。
それでも、ゴルフを続けていれば、いつか優勝のチャンスは訪れる。そんな希望を与えてくれる、佐藤選手の優勝でした。