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プロゴルファー

こせきよういち

判断が微妙なペナルティ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#204

今週は、先週の米ツアー競技「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」の3日目と最終日に、たて続けに発生したひとつのルールの微妙な裁定について取り上げます。

このルールはグリーン外でのみ適用されるもので、グリーン上では同様のシチュエーションでもずっと緩い規則が適用されます。

そのためプレーヤーの間には困惑があり、改訂を求める声も挙がっているようです。

ラッセル・ノックスは4ホール後に罰打の宣告

メディアに大きく取り上げられたのは、最終日のラッセル・ノックスのペナルティでした。

この日、ノックスはトップと2打差の2位タイのポジションで、最終組の1組前から優勝を狙ってのスタートでした。

ところが、そのスタートホールで第2打を打とうとした時、ボールがわずかに動いてしまいます。

そのときの模様は上掲のツイッター動画でシェアされていますが、このビデオからはボールの動きはほとんどわかりません。

しかし、ノックスがルールオフィシャル(競技委員)に語った説明によれば、「スタンスを取って、ボールのすぐ後ろに一度クラブをセット(地面に付ける)。それから、クラブヘッドを持ち上げてワッグルをした。そして、アドレスしようと下を見たら、ボールがちょっと動いたのが見えた。そのままじっと見ていたら、30秒くらいして、再度ボールが動いた」ということでした。

状況を聴いたルールオフィシャルは、ノックスに「何か、ボールを動かすようなことをした?」と質問。

それに対するノックスの答えは「ノー」でした。

つまり、ノックスは「ボールが動いたのはクラブを持ち上げていた時で、ボールを動かすようなことは何もしていない」と説明したのです。

ですから、ルールオフィシャルも、その場では規則9.3の「自然の力が動かした球」で、無罰と判断しました。

前日には若手注目選手のマーベリック・マクニーリーが……

ところが、それから4ホール後、ノックスが5番パー3のティーショットを放ったところで別のルールオフィシャルが彼の前に現れます。

そして、「ビデオで検証した結果、ボールが動いた原因はキミにあるという結論に至り、規則9.4(b)『プレーヤーが球を動かす原因となったことに対する罰』で1打罰とします」と告げたのです。

これにはノックスも不満を隠しません。5年ぶりのツアー優勝を目指し、まさに1打を争っていたのですから。

しかし、こんなふうにツアー側が裁定をひっくり返したのは、前日に同様のトラブル(上掲のツイッター動画参照)があり、そちらは「違反」としてペナルティを課していたからのようです。

長いビデオ検証の末、罰あり

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前日、3日目の5番ホールでのこと。

若手注目株のマーベリック・マクニーリー(25歳、この大会の成績は2位)はティーショットをグリーン奥のラフに打ち込んでしまいます。

マクニーリーがよく見ると、ボールはピッチマークの凹みの縁、ギリギリのところに止まっていました。

少しでも振動を与えるとボールはピッチマークに落ちそうなので、マクニーリーはボールから離れて素振り。それから、とても慎重にボールにアドレスしたのですが、クラブヘッドをボールのすぐ後ろのラフに付けた直後、ボールが動いてしまいます。

マクニーリーがルールオフィシャルに状況を説明したところ、当初、ルールオフィシャルはボールは動いた原因はマクニーリーにはなく、無罰と判断しました。

しかし、最終判断はビデオ検証に委ねられることに。そして、長い時間の検証の末、下された結論は、「ボールは、そのすぐ後ろにクラブが置かれた直後に動いたので、動いた原因はプレーヤーにあり、規則9.4(b)違反」というものでした。

同様のシチュエーションもグリーン上なら無罰

こうした経緯から、ツアー側は「マクニーリーが違反なのだから、ノックスも違反としないとアンフェア」と考えたのでしょうか。

とにかくノックスは、現場から4ホール後に1罰打を加えられたのでした。

このように止まっていたボールが偶然に動いた場合、2019年規則では、グリーン上では――プレーヤーが誤って動かした時も含め――無罰になりました(上掲の日本ゴルフ協会の動画参照)。

これに対してグリーン外では、プレーヤーが誤って動かした場合はもちろん、今回のように偶然であっても規則違反となるケースがあるのです。

「選手みんなが反対している、奇妙なルールのひとつです。昨日のマクニーリーも、今日の私も、明らかにノー・アドバンテージ――ボールが動いたことで得することはひとつもありません。にもかかわらず、罰せられるのはおかしい」とノックスは語っています。

規則9.4については、今後再改訂がはかられるかも知れませんね。