プロゴルファー
こせきよういち
キャディは頼れる相棒……のはずが。~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#112
コースに出れば、プレーヤーに助言・アドバイスができるのはそのキャディだけ。
キャディは、単にバッグを運んだり、クラブを手渡してくれたり、自分に代わってバンカーの砂をならしてくれる存在ではありません。
ときにはメンタル面も支えてくれる、さまざまな面で頼れる心強い相棒なのです。
しかし、その相棒もときに思わぬ失敗をします。
先週はそんなキャディの失敗が相次いで見られました。
振り返ってみましょう。
他所のピンシートを渡されたポール・ケイシー
先週の世界ゴルフ選手権シリーズ「メキシコ選手権」の3日目。
ポール・ケイシーは10番からのスタートで、パー、イーグル、バーディ。出だし3ホールで3アンダーという好調なスタートを切りました。
ところが、続く13番パー3でキャディのジョン・マクラーレンにピンまでの距離を尋ねると、おかしな数字が返って来ました。
グリーンの手前エッジからピンまでの距離が、自分のピンシート(ホールロケーションシート)の数字とまったく違うのです。
良く見ると自分のピンシートは、同じ週に行われているもうひとつの米ツアー競技「プエルトリコ・オープン」のものでした。
実は、前夜、マクラーレンが選手・キャディがアクセスできるツアーの専用サイトから入手する際に、誤って「プエルトリコ・オープン」のデータをダウンロードし、それをケイシーに送っていたのです。
発覚がそこまで遅れたのは、最初の3ホールはグリーンのどの面に落とすかが大事なホールで、ピンまでの正確な距離を求める必要はなかったからでした。
ことによれば大トラブルにもなったキャディの失敗ですが、ケイシーは笑って対応。メディアには笑い話として披露していました。
そして、二人はこの日を65、翌最終日も65をマーク。3位タイの好成績で終えたのでした。
肝心なときによそ見をされたリッキー・ファウラー
The new golf rules strike again. Ricky Fowler dropped from shoulder height, not knee high. pic.twitter.com/nKzicJFRKm
— Tom Wilkinson (@tommywilkinson) 2019年2月22日
同じく「メキシコ選手権」の2日目。
リッキー・ファウラーは6番ホールの第2打をシャンク。ボールは右奥のOB区域に飛んでいきました。
OBであることを理解したリッキーは悔しそうなそぶりを見せることもなく、淡々とその場でキャディのジョー・スコブロンに新しいボールを要求。
受け取ると、すぐにドロップの処置を行いました。
ところがそのドロップ、旧ルールの肩の高さからボールを落としてしまったのです。
そして、実に間が悪いことに、そのドロップの瞬間をスコブロンは(写真のように)見ていなかったのです。本当にその瞬間だけ……。
また、同じ組のプレーヤーたちもたまたま目撃していなかったため、リッキーはそのままストローク。
結果、OBの1ペナに加え、誤ったドロップの方法による1ペナ。合計2ペナをここで食らったのでした。
Somebody, PLEASE, explain to me why dropping above the knee is a penalty ! Ricki was penalized for this. Wow ! @PGATOUR @PGA @RickieFowler @LPGA pic.twitter.com/Rt3kdSDoXP
— Curtis Strange (@golf_strange) 2019年2月23日
キャディに支払う報酬額でもめたマット・クーチャ―
今大会ではもうひとり、キャディに関するトラブルで注目を集めたのがマット・クーチャーでした。
クーチャーは昨年11月、同じメキシコで開催された「マヤコバ・クラシック」で優勝。賞金129万6000ドル(約1億4300万円)を獲得しました。
この試合、彼はいつもの契約キャディを伴わず、開催コースのハウスキャディ=デビッド・オルティスを雇用。報酬については口頭で大雑把な約束を交わしていました。
「予選落ちで1000ドル」「ベスト20で3000ドル」といった内容で、最高額は「ベスト10で4000ドル」といったものでした。
ところが、クーチャ―は思いも寄らぬ、4年ぶりの優勝。
そして、オルティスには約束した4000ドルに1000ドルを加えた5000ドルを支払ったのです。
しかし、ツアーでは優勝選手はキャディに賞金の10%、ですからクーチャーの場合は12万9000ドル程度を支払うのが慣例になっています。
そのため、後日、オルティスはクーチャー側に増額を要求。でも、クーチャ―側が拒否。
両者の交渉が長引くと、ネットに取り上げられ、ファンからはクーチャ―を非難する声が高まりました。
「フェニックス・オープン」では「キャディにカネを払え!」の盛大なヤジを浴びることも。
これにはメディアも黙ってはいません。
結果、クーチャ―は「メキシコ選手権」の前週の「ジェネシス・オープン」で、オルティスが要求する5万ドルの支払いを約束。
これで騒ぎは収束。クーチャーは「メキシコ選手権」ではヤジられることもなく、ファンから温かい歓迎を受けたのでした。