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こせきよういち
グリーン上のウェッジショットを見て「スタイミー」を考えた~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#44
先週の米ツアー競技=CJカップ@ナインブリッジスを制したのは、昨シーズンの年間チャンピオン(フェデックスカップ王者)、ジャスティン・トーマスでした。
大会初日、そのトーマスのプレーで面白いシーンがありました。
5番グリーンでのこと。彼のボールはカップまで1メートル余のところにあったのですが、ボールのすぐ先にはスパイクマークでしょうか、グリーン面に明らかな凹凸、芝の乱れが見られました。
そのため彼はパターではなく、ウェッジを手に……。
通常、一般営業では禁止されているグリーン上のウェッジショット
「グリーン上のパター以外のクラブの使用」は多くのゴルフ場で、一般営業時にはローカルルールによって禁止されています。
グリーンの芝の保護のためです。
しかし、ゴルフのゼネラルルールではそうした規制はありません。どこで、どのクラブ(パターも含む)を使うのもプレーヤーの自由です。
ですからプロの競技では、例えばパットのライン上にグリーンのカラーが介在するときは、プロはピッチショットでカップを狙うことがあります。
そして、珍しいケースですが、今回のトーマスのようにライン上に大きなスパイクマークがあるときも――ボールマークと違ってスパイクマークは直せませんから――チップショット等でそれを飛び越えるプレーが見られるのです(下記リンク先に動画があります)。
グリーン上のウェッジショットの名手といえばこの人
グリーン上からウェッジショットでカップインって、繊細な感覚が求められる、難しいプレーだと思うのですが……。
実は、セルヒオ・ガルシアも2013年のウェルズファーゴ選手権でそのプレーを見せています。
もっとも彼の場合は、怒りのあまりにパターを叩きつけて損傷させ、以降のホールをウェッジやウッドでパッティングをした経験が何度かありますから、さほど難しいプレーではなかったのかも知れませんが (^^;
グリーン上のウェッジプレーは「スタイミー」対策
パッティングライン上の“障害”をウェッジショットで飛び越えるプレーですが、これを見て「スタイミー」を思い浮かべた人もいるのでは?
「スタイミー」は、現在は一般に「ボールとホール(カップ)との間に“障害物”がある状態」のことを言います。
「木の枝がちょうどスタイミーで、ピン方向を真っ直ぐ狙えない」といった具合です。
しかし、もともとの意味は違います。
元来はマッチプレーの際のルールで「プレーヤーのボールとホールの間に相手のボールがある状態」を指す用語でした。
そして、その場合、プレーヤーは相手側にボールの拾い上げを要求できないことになっていました。
ですから、「スタイミー」のとき、プレーヤーは相手のボールを飛び越えてカップを狙うしかなかったのです。今回のトーマスのように。
ただし、「スタイミー」は両者のボールの間隔が6インチ以上なければならず、6インチ未満のときは相手にボールを拾い上げてもらうことができました。
そして、その6インチを測るために、当時のスコアカードは一辺が6インチになっていたようです。
なお、このルールは1952年に改正。以降は、「プレーの妨げになる」相手のボールは拾い上げてもらえるようになりました。
ちなみに、下記リンク先の映像は当時マッチプレーだった1948年の全米プロ決勝戦のベン・ホーガンとマイク・ターネサの一戦で、ランニングタイム20秒前後に、優勝したホーガンによる「スタイミー」回避のチップショットが見られます。