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こせきよういち
キャディの“罪”はプレーヤーの“罪” ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み #42
先週の国内女子ツアー競技「スタンレーレディース」。
優勝したのは今季2勝目の吉田弓美子でしたが、翌日のスポーツ新聞の紙面をにぎわせた話題はプレーの内容ではなく、彼女のキャディのミスでした。
「珍事V!キャディーの前代未聞の大ミス乗り越えた」(サンケイスポーツ)
「吉田ドタバタ逆転V“忘れられない優勝に”キャディーがマーカー拾い上げるチョンボも」(デイリースポーツ)
「吉田弓美子“何が起きた?”キャディーミス責めずV」(日刊スポーツ)
などと報じられた、キャディのとんだ失敗を振り返ってみましょう。
キャディが誤ってボールマーカーをピックアップ
最終的には優勝できたから良かったものの……。
話題のミスの主人公は、昨シーズンから吉田弓美子のバッグを担いでいる川口大二キャディ。
“事件”が起きたのは、吉田がトップタイに立って迎えた13番ホールのグリーン上です。
吉田はグリーンのラインを読む際、しばしば川口キャディにマークの後方にボールを置いてもらい(リプレースではない)、そのうえで自分はカップの反対側に回って読むことがあるんだそうです。
ところが、このとき川口キャディは、
「いつも通りボールを置いて、思わず(ボールマーカーを)取ってしまった。なぜだか自分でも分かりません」(川口キャディ)。
グリーン上にボールを置いたあと、無意識にボールマーカーを拾い上げてしまったのです。
「びっくりです。何が起きたのか理解できませんでした。今まで経験したことがない気持ち。どうやって気持ちを立て直せばいいのかわかりませんでした」と吉田弓美子は茫然自失。
とりあえず競技委員を呼んで事態を説明した結果、吉田にはボールの位置をマークしているときにボールマーカーを動かしたとして、規則20-1「球の拾い上げとマーク」の規則違反で1罰打の付加となりました。
ゴルフでは、キャディの規則違反は、そのキャディが担当するプレーヤーの規則違反。
キャディの“罪”はプレーヤーの“罪”なのです。
キャディが置いたバッグにプレーヤーのボールがヒット
「キャディのミスで、プレーヤーに罰打」では、メジャー4勝の往年の名プレーヤー、レイモンド・フロイドのユニークなエピソードがあります。
1987年のザ・プレーヤーズ選手権の大会初日のことです。
同じ組でラウンドしたセべ・バレステロスが「とんでもないアンラッキー。たぶんホールインワンよりもありえない一打」と振り返るプレーとは?
その日は悪天候で、スタート時間が大幅に遅延。そのため選手はプレーの進行を急いだのかもしれません。
そして、迎えた11番ホール。
フロイドのキャディは、フロイドにドライバーを渡すと、自分は第2打地点に先回り。
キャディバッグをラフに置いて、フロイドのティショットを見守ることにしました。
ところが、その一打はフェアウェイを外れ、バッグが置いてある方向へ。
これはまずい! キャディは大急ぎで駆け戻ったのですが、間に合いませんでした。
そこへやってきたフロイドが尋ねます。
「ボールはどこだ?」
「この中です」
そう、フロイドが放ったボールはキャディバッグの口から、その中に転がり込んだのでした。
キャディのミスですが、フロイドは規則19-2「動いている球がプレーヤーの携帯品によって止められた」違反となり、1ペナが課せられました。
キャディが使わないクラブを抜き忘れ
コース上、プレーヤーがバッグに入れて持ち運べるクラブの本数は最大14本です。
15本以上持ち込んだ場合は、超過クラブの違反でプレーヤーには1ホールにつき2打罰。
ラウンドで最大4打罰のペナルティが課せられます。
今年の国内ツアーでも香妻琴乃や池田勇太がこの違反をおかし話題になりましたが、史上最も有名なのは、2001年全英オープンで優勝争いに加わっていたイアン・ウーズナムの違反でしょう。
そして、それはどうやらキャディの“うっかり”が原因だったようです。
トップタイで迎えた最終日、2番ティでウーズナムは自分のキャディからこう話しかけられました。
「あなたに叱られることになりました。バッグのなかにドライバーが2本あります」
察するに、スタート前の練習で使い、この日は使わなかったことにしたドライバーをキャディが抜き忘れたようです。
ウーズナムがムッとした表情でドライバーを放り投げるシーンからは事態の深刻さと、ウーズナムのやり場のない怒りが伝わってきます。
もちろん、このときもキャディのミスはプレーヤーのミス。
ウーズナムには2ペナが課せられ、結果、彼は惜敗。3位タイに終わったのでした。