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しば
全米オープン2017を終えて、松山英樹の活躍に思うこと
ウィスコンシン州のエリンヒルズで行われた全米オープンは、27歳の飛ばし屋、ブルックス・ケプカ(アメリカ)の優勝で幕を閉じました。
松山英樹は最終日、素晴らしい内容でプレーし2位タイでフィニッシュ。
世界ランクも2位に上昇し、メジャー制覇がいよいよ間近であることを感じさせてくれました。
非常に私的な見解も含まれますが、大会を振り返ってみます。
大会結果
ケプカのスコアは、1日目から順に67、70、68、67の通算16アンダー。
オーバーパーが一度もない安定したゴルフで、2位に4打差をつけて優勝しました。
松山英樹は2日目に65、最終日に66とビックスコアを叩き出しますが、初日の74と3日目の71が響き、12アンダーでフィニッシュしました。
初日65のリッキー・ファウラー、3日目63のジャスティン・トーマスも、それぞれパー以上を叩く日が2日ずつあり、優勝には届きませんでした。
ロースコアの代名詞でもある全米オープンですが、過去にも優勝スコアが10アンダーを越えたことはありました。
しかしながら、2000年はタイガー・ウッズが2位と15打差(!)の12アンダー、2011年はロリー・マキロイが8打差の16アンダーで、それぞれ独走して勝ったことと比較すると、今回はフェアなコンディションでの伸ばし合いだったことが分かります。
雨が降らず、風も思ったほど強くならなかったことがこの結果につながりましたが、主催のUSGAは「天候が良ければスコアは伸びる想定だった」とコメントしています。
ケプカは飛ばし屋だから勝てたのか?
全長約7,800ヤードのコースにおいて、ケプカの4日間平均飛距離322.1ヤード(全体で7位)は大きな武器でした。ただし、飛距離が勝利の必要条件であったかというと、そうではないと思います。
同じく飛距離を武器とする世界ランクトップ3、ダスティン・ジョンソン、ロリー・マキロイ、ジェイソン・デイは揃って予選落ちを喫しました。
一方で、松山英樹と同じ2位タイとなったブライアン・ハーマンの平均飛距離は、彼らに大きく劣る296.6ヤード(全体で52位)でした。
エリンヒルズは、目に見えるフェスキューやバンカー以外にも、たくさんの罠が張り巡らされていました。
アンジュレーションが非常に効いており、着弾地点によって結果が大きく変わるフェアウェイ。
ピンをデッドに狙えるアングルが限られるグリーン。
バーディーを重ねる必要があるからこそ、ショットのマネジメントがいつも以上に重要となる大会でした。
ケプカもハーマンも松山英樹も、このマネジメントに長けていました。
高いレベルの技術によって、球筋、飛距離、スピンを完璧にコントロールし、コースを支配していたと言えます。
加えて、ケプカにはメンタルが備わっていました。
追われる立場で迎えたサンデーバックナイン。
ケプカは10番でボギーを喫し、いよいよ松山の勝利を期待した方も多いでしょう。
しかし、彼はその後しぶといパーセーブを続け、14番からの3連続バーディーを呼び込み、勝利を決定付けたのです。
松山英樹のマネジメント力
松山英樹の課題であったパターについて、ストロークス・ゲインド・パッティング*は2.16(全体では32位)と物足りなさこそありますが、間違いなく復調傾向と言えるでしょう。
一方ショットについては、先述のマネジメントがひときわ輝いていた印象です。
そのハイライトは最終日の15番ではないでしょうか。
短いパー4、追いかける立場、是が非でもバーディーが欲しい状況で、ティーショットを左のフェスキューに入れてしまいます。
そこで迷わずレイアップを選びパーをセーブしにいったのですが、その判断に他の選手との違いを見たような気がします(結果的にはボギーを叩きますが、最小被害で乗り切った後の16番で見事バウンスバック)。
小平智、宮里優作はショットの調子自体は悪くなかったものの、あっさりボギー・ダブルボギーを叩いてしまうシーンも多く、それぞれ46位、60位の結果でした。
松山のようなマネジメント力は経験がもたらす部分も大きいので、ぜひ継続して海外での試合にチャレンジしてほしいものです。
*ストロークス・ゲインド・パッティング
ツアー平均と比較して、グリーン上のパフォーマンスでどれだけスコアを稼いだか、1ラウンドあたりの「パット貢献度」を評価するPGAツアーのランキング
松山英樹がメジャーで勝利するために
世界屈指のショット力、マネジメント力、復調の気配を見せるパター、飽くなき向上心…では彼がメジャーを制するために、足りないものは何でしょうか。
ここまで読んで下さった方に、こんな結論で申し訳ないのですが、最後は“巡り合わせ”だと感じています。
優勝したケプカを含む上位選手について、ここ最近で圧倒的な成績を残していた選手はいません。
誰にでも優勝するチャンスはありましたが、この4日間はケプカの日となりました。
ゴルフは思い通りのショットが必ずしも良い結果に結びつくとは限りません。
あとひと転がりすれば、あと1ヤード前に落ちていれば、あと少し風に乗れば…。
“たられば”に聞こえますが、こういった“巡り合わせ”を待ち続け、いざ恵まれたときにそれをモノにできるメンタルを持ち合わせていた選手が、メジャーという舞台を制するのではないかと思います。
彼はいつも「他人はどうにもできないので、自分は練習を重ねてベストを尽くすのみ」と言います。
その言葉どおり、誰よりも勝つ準備ができている選手なのだと、改めて気付かされた大会となりました。
メジャーに挑戦する機会はこれから何度もあります。
彼なら必ず成し遂げてくれるはずですが、それが来月の全英オープン、8月の全米プロゴルフ選手権であれば最高です。
彼自信が発言しているように、日本人初のメジャー制覇で日本のゴルフ界が変わる瞬間を夢見て、次の試合も応援したいと思います。