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ライフスタイル

Taddy Bear

ゴルフにはAとB(とJ)がある?〜R・H・ロバートソンの独立宣言〜

知っておけばフェアウェイでの話題作りに役立つゴルフトリビア。

第2回目はアメリカのゴルフ評論家が言った「ゴルフにはAとBがある」です。

ゴルフの歴史に詳しい人ならAとB、ピンとくるでしょう。そう、アメリカンゴルフとブリティッシュゴルフのことです。

このAとB、単なるゴルフの違いではなく意外と根深いところから始まっています。

いかにもアメリカ的なスタジアム形式の17番パー3

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全米PGAツアー、プレーヤーズ選手権の舞台となるTPCソーグラスの17番パー3は、2020年1月に亡くなったばかりの名匠、ピート・ダイ設計の名物ホールとして知られています。

距離は短いもののティーイングエリアからはグリーン面が見えにくい浮島ホールで、ボールコントロールをちょっと誤っただけで池ポチャが待っています。

これだけなら、どのコースにも似たようなホールはあるので特別取り立てることもありません。

しかし、プレーヤーズ選手権でこのホールが特別になるのはスタジアム形式になるからです。

選手がティーイングエリアに登場した時の、観客の拍手と声援はまさにメジャーリーグベースボール。

観せ方、応援の仕方ともにアメリカ的ですね。

スポーツに限っていえば、アメリカはなんでも自分たちの国の風潮に合わせないと気が済まない性分が見られます。

「なんで前にボールを投げちゃいけないんだ!」って発想からラグビーはアメリカンフットボールになりました。

ワイト島一周レースは並み居る英国船艇をアメリカ号が破ったんだから以後はアメリカ開催、名称もアメリカズカップね! といきなりキングになりました。

自動車レースもクネクネした道をダラダラ走るよりスピード勝負! という気質がインディ500を筆頭とするオーバルコースを生み出しています。

ベースボールにしても、当初はクーパーズタウンが発祥の地と言われていましたが、最近になって英国のラウンダーズというゲームがルーツだと判明しました。

良く言えば革新的、悪く言えばわがまま。これ、ゴルフもそうなんです。

USGAはブリティッシュスタイルからの独立を目指す!

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アメリカの独立宣言は2回行われています。

1回目は1776年7月4日、トーマス・ジェファーソンの起案にベンジャミン・フランクリンとジョン・アダムズが修正を加えたイギリスから独立した宣言。

これは歴史的にも、その後の世界情勢に影響を及ぼしたことから有名ですね。

2回目は1901年7月4日、USGAの4代目会長R・H・ロバートソンによって。

その内容は簡単に紹介しますね。

「ゴルフをアメリカに紹介してくれてありがとう。でもアメリカ人って、他の国の風習に捕らわれるのは好まないんだよ。とくにイギリスのゴルフは固っ苦しくていけない。アメリカに来たものがそののままの形で持ちこたえたことなんてないんだから。ゴルフもしかり。革新こそアメリカ、私達はアメリカのゴルフが見たいんだ!」

ホントはもっと格式ある文章ですが、かなり要約し、言葉も分かりやすく口語に変えてみました。

でも内容的には、USGAはブリティッシュスタイルのゴルフではなく、アメリカンスタイルを目指す、という点で間違っていません。

独立記念日と同月同日を選ぶところなどは、まさにブリティッシュゴルフからの独立を強く意識していると言えるでしょう。

R&AとUSGAに2つのルール

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もちろん、イギリスのゴルフから独立するといっても基本的なルールまで捻じ曲げようということではありません。

しかし、歴史と伝統を持たない当時のアメリカ一般庶民にとって、ブリティッシュスタイルのルールはゲームとして厳し過ぎる、つまり合理性に欠けると映ったわけですね。

「あるがままプレーしなければならない」のは分かっているけれど、打てないんだったら罰打を払えばいいんじゃない? とか。

ウィンタールール(冬場に限り芝保護のためにボールをわずかに動かしていいこと)があるなら、それを1年中活用しましょうよ、とか。

道具だって、もっと進化させなくっちゃ! とか。

かくして、イギリスを始めとするヨーロッパのゴルフルールを統括するR&Aとアメリカのゴルフルールを統括するUSGAには、20世紀終盤まで、いくつかの異なるルールが存在していたのです。

ボールの大きさもそのひとつ。

USGAは直径42.67ミリ(1.68インチ)以上、R&Aは41.14ミリ(1.62インチ)以上と定めていました。

いわゆるラージボールとスモールボールですね。

42.67ミリに統一されたのは1990年、ゴルフの歴史を考えると最近のことです。

ジャパニーズスタイルだって悪くないんじゃないか?

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ブリティッシュスタイルに対して合理性を求めたアメリカンスタイル、果たしてこれはゴルフに対する非礼でしょうか?

否、もしアメリカが、歴史と伝統を重んじる頑固なブリティッシュスタイルを押し通していたら、これほどゴルフが世界中に広まらなかったでしょう。

そして日本も独自に発展していきます。

JGAが発行しているルールブックにはR&AとUSGA両方の団体名が記載されていますが、コースプレーの実際は9ホール終了時点でハーフタイム(食事時間)を入れたり、ローカルルールと称して6インチプレースを推奨、OBの場合、前進4打というルールがあるなど、日本独自のプレースタイルが確立されています。

これらのジャパニーズスタイル、アスリートにとっては不満の種であっても初心者や高齢者、ゴルフ場側にとってはありがたい形態なのです。

アメリカが合理性なら、日本は経済性ですね。

ブリティッシュスタイルの伝統と歴史から生まれた頑固さ、アメリカンスタイルの自由な風土が育む革新と合理性、そして日本のおもてなし精神につながる経済性。

これらをすべて飲み込んでも、ゴルフは依然としてゴルフのまま。

この懐の深さもまた、ゴルフの底知れぬ魅力のひとつでしょう。