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ロマン派ゴルフ作家の篠原

新・貧打爆裂レポート『ST-X ドライバー』

今回の貧打爆裂レポートは、2021年3月12日に発売されたミズノ『ST-X ドライバー』です。

いつものようにコースに持ち込んで、ラウンドしました。ミズノの新しいドライバーの秘密に迫ります! 動画も含めての試打レポートです。

ミズノのテクノロジーの進化を『ST-X ドライバー』で体験しよう!

『ST-X ドライバー』は、ミズノが2021年3月12日に発売したクラブです。

新しい『ST』ブランドからは、2種類のドライバーが出ますが、『ST-X ドライバー』は、やさしめなほうという位置付けになります。

『ST-X ドライバー』は、“βチタンとカーボンコンポジットの融合。つかまりのST-X。”というコピーです。

カーボンコンポジットヘッドが好きではない上級者が多いので、それを前面に出すと売れない、というジンクスを怖がらずに、正々堂々と公表しているのは、大きなメーカーではミズノだけです。

2021年の春モデルは、大手メーカーのドライバーは大きくは表現していませんが、実質的にはコンポジットヘッドで、この流れは誰にも止められないトレンドです。

ミズノがそれを隠さないのは、自信の現れなのだと感じさせます。

【試打クラブスペック】
ヘッド素材 α-β系チタン合金(Ti811)+カーボンクラウン、ソール
フェース βチタン合金
ヘッド体積 460cc
シャフト 20 MFUSION D カーボンシャフト(S)
ロフト 10.5度±2度
長さ 45.75インチ
ライ角 59度
価格(税込) 7万1500円(本体価格6万5000円)

『ST-X ドライバー』のテクノロジーの第1は、「カーボンコンポジット」です。

ミズノの場合、このテクノロジーを「重量が軽いカーボン素材を使って余剰重量を生み出して、それをウェイトにして配分することで重心位置を適切な位置に動かし、性能を向上すること」と定義しています。

『ST-X ドライバー』の場合は、クラウンをほぼカーボン素材にして、ソールはトウ側のみをカーボン素材にすることで、ドローバイアスを強化しました。

「フォージドβチタンフェース」は、一般的なチタン合金より約17%強度が高く、約8%たわみやすい特性を持っている素材で、高初速を生み出すために採用されています。

「NEWコアテックフェースデザイン」は、フェースのポテンシャルを引き上げるために、フェースの裏側の中央を厚くして、フェース周辺を薄くしました。これにより、フェース内の高反発エリアを広げることができたそうです。

「WAVEテクノロジーソール」は、ソールを見るとフェース寄りにある溝です。蛇腹状の溝はインパクト時にフェース周辺をたわませることで、たわみ量をアップさせて、初速をアップさせます。

2020年に発売された2種類のドライバーを含めて、『ST ドライバー』は4機種に増えましたが、基本的なテクノロジーは変わりません。ターゲットのゴルファーが最適に使えるように、それぞれテクノロジーを調整した4本になっています。

『ST-200 ドライバー』、新しく出るもう1本の『ST-Z ドライバー』、『ST-X ドライバー』、『ST-200X ドライバー』という難易度になるのではないか、とスペックなどを見て考えました。

昨年発売された2本のドライバーは、なかなかの飛距離性能を持っていました。

『ST-X ドライバー』も、そういう意味で期待できる、と考えながら試打ラウンドの日を待ったのです。

『ST-X』はミズノのやさしいドライバーの基本形だ!

動画を見てください。

『ST-X ドライバー』は、アドレスすると、『ST 四兄弟』みたいな同じ系統を感じさせます。もちろん、それは良い印象です。

具体的には、フェースのトウ側バルジ(丸み)が独特です。左には行かせないという強い意思を感じるほどです。

ただ、ヘッドのシェイプとの位置や向きなどについてフェースはきれいにマッチしています。だから、アドレスしやすいドライバーに仕上がっています。

テクノロジーとして、ドローバイアスが強いと思われますが、フックフェースではありません。

打ってみました。

打音の音量は、ちょうど良い感じです。音質は、カチッとした金属系の音でカーボンを感じさせません。

打ち応えは、柔らかめですが、カッチとしていて、初速感をかなり強く感じることができます。

中弾道です。10.5度とは思えない弾道です。強いボールで、ランが出ます。

ドローバイアスは、ほとんど感じられません。ストレート系のボールか、フェード系のボールが打ちやすいです。

飛距離は、平均で225ヤード。最も飛んだホールでは、240ヤードです。

『ST-X ドライバー』は、トップレベルの飛距離性能を持ったドライバーです。

アドレスして、弾道イメージが出るゴルファーに『ST-X ドライバー』をオススメします。

そんなゴルファーは一握りだと思いますが、アドレスでスイングの9割が決まると考えられるのであれば、武器になるドライバーです。

ややつかまる動きをするのに、左には行かないドライバーが欲しいゴルファーにも『ST-X ドライバー』はオススメです。

『ST-X ドライバー』は、ミズノのドライバーの一つの完成形なのかもしれないと感じました。

日本国内の女子ツアーの契約選手が、『ST-200X ドライバー』から今回の『ST-X ドライバー』にチェンジしたという事実を考慮しても、間違っていないと思われます。

やさしいという曖昧な言葉を使って、現在のクラブは優位性を競う傾向があります。
やさしさは多様で、求めているものと必ずしも一致するとは限らないという難しい時代になっています。

『ST-X ドライバー』のやさしさは、つかまるということになっていますが、実際にコースで打って感じたのは、つかまったボールが打てるという部分よりも、ミスヒットしても初速が落ちにくい部分が強調されていると感じました。

実際に『ST-X ドライバー』を使いこなせるゴルファーは、ヘッドスピードが速いことが条件になると思います。

ミズノは時々、汎用性が低く、特別にマッチした人だけに機能するスペシャルなクラブを世に出します。『ST-X ドライバー』は、そういう雰囲気がするクラブです。

前に行こうとする力が強いドライバーは市場にあまりありません。『ST-X ドライバー』は、貴重な1本です。

試打ラウンドをしながら、このドライバーを使ったら、このホールはこういうボールが打てて、あそこにボールが行く、とか、あのホールなら下り坂を下り切ったところまで行くかも、とか、想像してしまいました。

大崩れの要因になる大曲がりと高弾道は背中合わせです。

最後になりますが、僕のような貧打ゴルファーでも、『ST-X ドライバー』は、そういう危険を回避しつつ、ちゃんと飛距離は出るクラブになっています。この使い方をしたほうが上手くいくゴルファーの方が多いのかもしれません。