ゴルフクラブ
ロマン派ゴルフ作家の篠原
新・貧打爆裂レポート『スパイダーFCG パター』
今回の貧打爆裂レポートは、2020年9月11日に発売されたテーラーメイド『スパイダーFCG パター』です。
いつものようにコースに持ち込んで、ラウンドしました。最も新しいスパイダーパターの秘密に迫ります! 動画も含めての試打レポートです。
『スパイダーFCG』は蜘蛛型に見えない最新型パターだ!
『スパイダーFCG パター』は、テーラーメイドが2020年9月11日に発売したクラブです。
“スパイダーの寛容性とブレードパターの操作性を両立するミッドマレットパター”というコピーのパターです。
【試打クラブスペック】
ヘッド素材 アルミニウム(6061)+ステンレススチール(303SS)+タングステンウェイト
フェース素材 PURE ROLL搭載3mm厚インサート/銅(CU29)
ネック SMALL SLANT
シャフト KBS CT Tour Stepless Black
ロフト 3.0度
ライ角 70度
長さ 34インチ ※33インチもあり
価格(税別) 4万円
『スパイダーFCG パター』の名称に入っている「FCG」は、“Forward Center Gravity”です。“前重心”という意味です。
ブレードタイプの良さである前重心が可能にする操作性の良さと、マレットタイプの安定性の良さを融合させるというテーマで開発されたのが『スパイダーFCG パター』ということのようです。
『スパイダーFCG パター』を最初に見た印象は、コレはスパイダーではない、でした。蜘蛛(くも)型の特徴は皆無です。形状は、ごく普通のマレットです。
パターの試打は、できるだけ早くするようにしていますが、試打が遅れたのは、この第一印象が原因で、後回しにしていたからです。
『スパイダーFCG パター』は中身で勝負するパターで、テクノロジーがすごいようです。
第1は、「タングステンソールウェイトとトライソール」です。
フェースの裏のトウとヒールの左右に配置されたタングステンソールウェイトだけで、合計101グラムもあります。強烈な重量です。
これに中央の固定式ウェイトもありますので、土台やフェースを含めるとブレードの重量は247グラムになり、ヘッド全体の70%になります。
ヘッドの後方の膨らみ部分は一体構造で103グラムです。
第2のテクノロジーは、「ホワイトトゥルーパス“T”アライメント」です。
ヘッドのクラウンには、方向をターゲットに合わせやすい白い大きなT字のアライメントが設置されています。
第3のテクノロジーは、「PURE ROLL CU29 インサート」です。
今までの「PURE ROLL インサート」は樹脂製がメインでしたが、新しいインサートは、25グラムの銅製です。しっかりとした打感と打音が期待できます。
『スパイダーFCG パター』には、ネックが3種類あります。
「クランクネック」と「スモールスラント」と「シングルベンド」です。
これが、ビックリするほど良くできています。パターのネックは、往々にして左右や前後に歪みがあるものですが、個体差を感じさせないほど見事にチューニングされています。
好きなネックを選べることは、パターでは重要なことです。
『スパイダーFCG パター』は、挑戦的なパターです。テクノロジーも、パターの理想に近づけようと、思い切った方法を採っています。
それでいて、外見は大人しいのです。言葉は悪いのですが、初級者用のパターを彷彿させます。
スパイダー型を愛用している「蜘蛛使い」と呼ばれるゴルファーは、『スパイダーFCG パター』を手に取って試すことすらしない例も多いようです。
しかし、発売から少しして、『スパイダーFCG パター』でパットが蘇った、というゴルファーが何人もいるという噂が聞こえてきました。かつて、名人と呼ばれたゴルファーの名前も、その中にありました。
個人的なことですが、俄然、興味が湧いてきたのです。
敏感さを楽しめるパターが『スパイダーFCG』だ!
動画を見てください。
『スパイダーFCG パター』を構えると、最初に感じるのは、ヘッドの小ささです。好き嫌いはありますが、個人的には、シャープで集中しやすい良いヘッドだと感じました。T字のアライメントも、思ったよりも気にならずに、邪魔をしません。
そして、ネックがきれいに入っていることに驚きました。「スモールスラントネック」は、シャフトのラインから捻れずにストレートに付いていると打ちやすいのですが、歪みは一切ありません。
『スパイダーFCG パター』を実際にラウンドで使用してみました。
パッと見ただけだと、鈍感そうに見えますが、一発打っただけでわかる敏感さがあります。
敏感さは、まず、距離感に反映します。これは諸刃の剣で、パンチが入ったり、ビビったりするようなメンタルが結果に出やすいというマイナスの面と、繊細なタッチを打ちこなす『スパイダーFCG パター』でなければできない距離感を堪能することが可能だというプラスの面があります。
スパイダー型のパターは、敏感さが特徴でしたが、この部分では、『スパイダーFCG パター』も同じベクトル上で進化させたとわかります。
さらにすごいと感心したのは、ブレードのパターのようにフェースが開きにくいことです。
マレットタイプの弱点は、しっかりとヒットするタイプのゴルファーがストロークする時に、フェースが開きやすくなることですが、『スパイダーFCG パター』の前重心は、その弱点を克服しています。
しっかりと安心してヒットできますので、転がりも良いパターです。
打感、打音に淀みがありません。美しい音は感覚を研ぎ澄ますプラスになります。
『スパイダーFCG パター』は、ブレードのパターのような使い勝手で、マレット型の良さだけを味わいたいという贅沢なゴルファーにオススメします。
見た目に誤魔化されないでほしいです。腕前が良いほど、このパターの良さがわかるはずです。
また、フェースが開いてしまう現象で、『スパイダー』を諦めたゴルファーにもオススメです。
『スパイダーFCG パター』は、弾く感触がきれいに正比例するのも魅力です。
ボールがちゃんとしていれば、ショートパットは小さく弾き、ロングパットは大きく弾きます。同じ感触で、ただ大小だけを意識すれば距離感が合うというのは、良いパターの条件です。
パターは、感性の道具ですから、見た目が好きになれない、という理由で、機能が発揮できないというパターンもよくある話です。
ただ、個人的には、多くの場合、見た目は100球も打てば慣れると考えています。
『スパイダーFCG パター』は、見た目では考えられない敏感な感触を楽しめるパッティングを実現してくれるパターです。
巷で言う“美人は三日で飽きて、ブスは三日で慣れる“という戯れ言を持ち出すまでもなく、本当に自分を幸せにしてくれる相棒との出逢いをスルーしないことも、ゴルファーの腕前なのだと『スパイダーFCG パター』は教えてくれる可能性があるのです。