Gride

ゴルフクラブ

ロマン派ゴルフ作家の篠原

新・貧打爆裂レポート『JPX921 フォージド アイアン』

今回の貧打爆裂レポートは、2020年10月9日に発売されたミズノ『JPX921 フォージド アイアン』です。

いつものようにコースに持ち込んで、ラウンドしました。世界戦略モデルのアイアンの秘密に迫ります! 動画も含めての試打レポートです。

『JPX921 フォージド アイアン』はテクニカルなゴルファーのためのクラブだ!

『JPX921 フォージド アイアン』は、ミズノが2020年10月9日に発売したクラブです。

『JPX』ブランドは、元々は国内ブランドでしたが、その後、欧米ミズノのフラッグシップブランドになりました。

いろいろなメディアで好評価を得てシェアを伸ばしていましたが、2019年にメジャートーナメントの優勝アイアンになったことで国内で限定発売され、2020年からは逆輸入される形でグローバルモデルとなりました。

『JPX921 アイアン』シリーズには、4機種あります。

『JPX921 フォージド アイアン』は、『ツアー』『ホットメタル』『ホットメタルプロ』の中で、難易度的には2番目となるアイアンです。

コピーは「ミズノ鍛造アイアン史上最高反発。」です。

【試打クラブスペック】
ヘッド #4~#7:クロムモリブデン鋼(SCM420)精密鋳造/4120 #8、#9、PW:マイルドスチール(S25CM)精密鍛造/1025E
シャフト N.S.PRO MODUS3 TOUR105(S)
ロフト #4/21度、#5/24度、#6/27度、#7/31度、#8/35度、#9/40度、PW/45度
価格(税別) 6本組(#5~#9、PW)12万円 単品(#4)2万円

『JPX921 フォージド アイアン』は、不思議なアイアンです。

軟鉄鍛造が大好きなゴルファーに配慮しつつ、「建前では飛ばなくとも良い」と言いつつ、本音では少しでも飛んでほしいというゴルファー心理を知り尽くして開発されているからです。

現在、最先端のアイアンの多くは、複合素材を貼り合わせてヘッドを作っています。素材ごとの特徴を活かして、最高のパフォーマンスを発揮させるためのテクノロジーです。

スペックを見ても、ウッドの系のクラブのようにヘッド素材とは別に、フェース素材が表記されているのは当たり前になりつつあります。

しかし、ミズノは違います。

『JPX921 フォージド アイアン』は、飛距離が必要なミドルアイアンと精度を優先するショートアイアンで素材は違いますが、単一の素材でヘッドを作っているのです。

それでいて、他社のアイアンと機能で負けないどころか、勝って当たり前、という自信を感じさせます。

4番~7番は、「グレインフローフォージドHD クロムモリブデン鋼」を使っています。

薄いフェースで反発力高めて、打球音を長く響かせて、打感の良さをキープしているところが余裕の技術力です。

「マイクロスロット構造」はキャビティ部をソール側から掘削して、フェースの肉薄できるエリアを拡大させるテクノロジーです。高初速の源になります。

「スタビリティフレーム」は、バックフェースのヒール側をギリギリまで削って、その分をトウ側に配置して重量配分するテクノロジーです。

これにより、スイートスポットがセンターになり、打点のばらつきが距離に影響するマイナスを最小限にします。同時に、トップエッジの剛性を高めて、打感の向上を可能にしたそうです。

『JPX921 フォージド アイアン』で、注目すべき点でわかりやすいのはロフトです。

7番アイアンが31度です。クラシックなロフトが34度ですから、約1番手アップです。上の番手には4度、3度刻みで、下の番手には4度、5度刻みなのです。

これは、パワーヒッターだと番手の距離差が大きくなり過ぎて、使いづらくなることが予想できるのです。

つまり、パワーではなく、テクニックで使いたくなるアイアンが『JPX921 フォージド アイアン』であろうという予測ができるということです。

『JPX』は、春にぶっ飛びアイアン市場投入しています。

さらに4種類のほぼ見た目が変わらないアイアンを市場投入する意味は、より細かくゴルファーのタイプに合わせて作られている、ということだと、スペックを見ていてわかってきます。

『JPX921 フォージド アイアン』は、それだけではなく、遊び心を刺激するクラブになっています。

バックフェースのバッチの模様が見る角度によって変化する加工になっているのです。

これが、何とも良いんです。時々、それを見つめて、クラブと親交を深める自分を想像してしまいました。

『JPX921 フォージド アイアン』は雰囲気を出してスコアメイクできる!

動画を見てください。

『JPX921 フォージド アイアン』は、まず、ヘッドが薄く感じました。そして、少し小さめです。ヘッドが大きめのマッスルバックアイアンのような印象です。

アドレスすると、ボールを包み込むように狙いを定めることができます。安心感があり、狙いやすいです。

打音は、やや控えめな音量で、乾いた金属系の音質は、アイアンを打っているという気持ち良さがあります。

打ち応えは、柔らかく、フェースに吸い付くような独特の感触があります。さらに、弾道を目で確認する前に、手元でわかる敏感さもあります。

やや高めの中弾道で、高低の打ち分けも楽にできます。この辺りは、マッスルバックのアイアンを打っているような感じがしました。

ここまで読むと、難しいアイアンなのか、と思った人が多いでしょう。しかし、違うのです。

ミスヒットしても、ちゃんと飛びます。

簡単に書くと、マッスルバックのアイアンの良さと、キャビティのやさしさを都合良く良いところ取りをしているというマンガのようなアイアンが、『JPX921 フォージド アイアン』なのです。

『JPX921 フォージド アイアン』の特徴はそれだけではありません。

軟鉄鍛造のショートアイアンのスピン性能が強烈なのです。その場に止まるどころか、ちょっと受けた傾斜に落ちると6ヤードもスピンバックするシーンがありました。

クロモリ鋼のミドルアイアンでも、ほぼその場に止まってくれます。この辺りは、高性能のマッスルバックアイアンのようです。

『JPX921 フォージド アイアン』は、マッスルバックアイアンとキャビティアイアンの両方の機能を利用したいゴルファーにオススメです。

昔、マッスルバックアイアンを使っていたというゴルファー、マッスルバックのアイアンを使ってみたいけど遠慮している若いゴルファーにオススメです。

『JPX921 フォージド アイアン』で、特に気に入ったのは、左に行きにくい特性です。

思い切って振れるアイアンです。

飛距離は、ショートアイアンはクラシックなアイアンより半番手飛び、ピッチングウェッジになるとほぼ同じです。

ミドルアイアンで一番手アップです。8番アイアンと9番アイアンの距離の打ち分けが必要になる可能がありますが、それはマッスルバックのアイアンでも起きることですから、マイナスとはいえないと考えます。

パワーヒッターではなく、テクニカルなゴルファーに向いているアイアンだと予測しましたが、パワーヒッターでも使えます。

機能の良さばかりを書きましたが、個人的には、機能とは無関係である打音や打ち応えまでを堪能するアイアンが『JPX921 フォージド アイアン』だと断言します。

実は、順番が逆で『JPX921 フォージド アイアン』を打つ前に、『JPX921 ホットメタル アイアン』『JPX921 ホットメタルプロ アイアン』を試打ラウンドしています。

ホットメタルの2種のアイアンも素晴らしい出来映えで、アイアンの機能をグラフで数的に見せれば『JPX921 フォージド アイアン』より上かもしれません。

しかし、その差は微妙で、いわゆる雰囲気を出して、スコアメイクをしたいゴルファーにとっては、使いたいアイアンがないというご時世の中で、「待たせたな!」というのが『JPX921 フォージド アイアン』なのです。

僕はこの春に出た、ぶっ飛び系の『JPX200X アイアン』を購入して使用しています。

飛距離という部分では、『JPX921』シリーズの4つのアイアンに明らかに勝ちますが、スコアメイクのしやすさという分野で比較すると、圧倒的に『JPX921 フォージド アイアン』が勝っています。

『JPX921 フォージド アイアン』を一言で書くのは難しいのですけど、素晴らしいアイアンで、他に代わりがないアイアンであることだけは断言できます。腕に自信がある人は、打ってみるべきです。