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SEペロしゅんすけ
ゴルフクラブのDIY~入門編・グリップ交換(マニアックな知識含む)~
ゴルフクラブを自分で修理・改造(DIY)するにあたり、最初に自分でする作業はグリップ交換でしょう。
今回は自分でグリップ交換する方法・注意点などについて書きます。もちろん、筆者の独自の視点を加味した内容を書きます。
グリップ交換の概要
グリップ交換の大まかな手順は以下の通りです。
(1)古いグリップを取り外し、シャフトをきれいにする
(2)下巻きテープ(両面テープ)を巻く
(3)グリップの内側とシャフトに巻いた下巻きテープに溶剤を塗布する
(4)グリップをシャフトに挿し込み、形を整え、乾くのを待つ
作業手順を具体的に丁寧に紹介している記事は、ネット上にたくさんあります。
一例として、Gridge内の記事を1つご紹介させていただきます。まずは、そちらをご覧くださいませ。
大多数の方は、これらのネットの記事を見れば、自分でサクサクサクッ! とグリップ交換をすることができるでしょう。
すべての要素はグリップ交換の中にある
「1メートルのパットにゴルフのすべてがある」という考え方があります。私はとても共感しています。
ゴルフクラブのDIYもそれとまったく同じなのです。「グリップ交換の中に、ゴルフクラブのDIYのすべてがある」と思えます。
ネットで紹介されている作業手順に従ってグリップを交換して、何も疑問は持たない人が多数派かもしれません。それはそれで構わないと思います。
ゴルフはプレー自体も、年齢性別に相応したティー(若年男性ならレギュラー・女性ならレディース)からプレーして、80~110のスコアを出せていれば、十分楽しめるものですから。
しかし、グリップ交換についても、伝説のアマチュアゴルファー中部銀次郎さんのお言葉である「もっと深く、もっと楽しく」という観点から考えてみませんか?
そうすると「個々の作業中に無数の分岐点(選択肢)があり、クラブの仕上がりは無限に変わる可能性を秘めている」ということに気付きます。
次の段落からは、グリップ交換の作業手順の中で「仕上がりに影響する分岐点(選択肢)に関する個別の知識」を書いていきます。
多くの方が知っているメジャーな知識から、ほとんどの人は知らないレアな知識まで、私が知っている範囲内にはなりますが、網羅的に書いていきます。
グリップ交換でのメジャーな知識
グリップ交換作業中の個別の知識を具体的にご紹介します。この段落では「間違えると痛い失敗につながるようなメジャーな知識」をご紹介します。
・グリップ重量
「元々装着されていたグリップ」と「新しく装着するグリップ」の重量を揃える(同じ製品に交換するのが最善)というのがセオリーです。
グリップの重量が変わると、クラブバランスが変わり、振り心地も変わります。5グラム変わるとバランスは1ポイント変わります。
・バックライン
「バックライン有り」と「バックライン無し」のグリップがあります。自分で交換する場合、バックライン無しのグリップがお勧めと言われています。
多少間違った角度で挿しても、実用上の問題が生じないからです。素人がバックライン有りのグリップを挿すと、角度を間違えて挿してしまい、バックラインが変な位置に来て握り難いクラブに仕上がる、という失敗がよく起きます。
・下巻きテープの巻き方・使用量
下巻きテープの巻き方は、大きく分けると「螺旋(らせん)巻き」と「縦巻き」があります。
下巻きテープの巻く量を増やし過ぎると、元々のグリップより重いグリップを挿したかのような仕上がりになってしまいます。
グリップ交換でのレア知識
この段落では、プロの工房職人さんであってもマニアックな人だけしか実践していないようなレアな知識を書きます。
・グリップ重量の個体差
同じ型番のグリップでも±2グラムぐらいの個体差があります。アイアンセットなどキッチリ揃えたい数本のクラブに挿す場合には、同じ重さで揃っている個体だけ選んで使うと良いそうです。量販店でグリップを購入する際には、秤を持って行ってみてください。
・バックラインの挿し方
バックライン有りのグリップを挿す時に、意図的にバックラインをズラした角度で挿すという粋な技があります。さらに、上下で捻りを入れることもできます。
「自分のオリジナルの握りにフィットしたバックラインのグリップ」に仕上げられます。
・下巻きテープの配分
グリップの上下ででテープを巻く量をわざと変えることもできます。手元と手先が同じ太さが好きな人、手元と手先の太さが極端に大きく違うのが好きな人、がいるようです。どちらの場合も、自分の好きな仕上がりに近づけることができます。
・製品ごとの寸法の違い
グリップの寸法はどのメーカーのどの製品でもだいたい同じです。しかし、詳細まで見比べれば、製品ごとに数ミリ程度の微妙な違いがあります。
シャフトも製品ごとに太さが微妙に違っています。シャフトの太さを調べて、シャフトの太さに合った内径の製品を選びましょう。
太いシャフトに内径が小さいグリップは挿せません。
製品ごとの寸法の違いに関しては「上下(手元・手先)での太さの差の有無(強弱)」にも気を付けたいものです。
・縦方向(手元・手先方向)への伸縮
グリップはゴムですから、良くも悪くも縦方向(手元・手先方向)に伸び縮みする物です。数ミリ程度の差にしかなりませんが、伸ばした状態で仕上げることもできますし、縮めた状態で仕上げることもできます。
グリップ交換で中古品を活用するウラ技
グリップ交換の際、それまでに装着されていたグリップは切断して廃棄するのが一般的です。
この段落では「それまでに装着されていたグリップを再利用する」ためのウラ技の知識を書きます。
しかし、中古グリップの再利用はかなり危険な技です。
「対価をいただいてお仕事としてグリップ交換するゴルフ工房」では、やれる技能があっても引き受けないでしょう。
中古グリップを再利用したクラブを製作・使用する場合は、結果として起こる事態に対して、すべて自己責任でお願いいたします。
・グリップを切らずに引き抜く
パーツクリーナーなどの溶剤、注射機・針金・マイナスドライバー・ピンセットなどのツールを使えば、下巻きテープの接着を剥がして、グリップを切らずに引き抜くことができます。具体的な方法は、自分自身で試行錯誤して身に付けてください。
・グリップ内の清掃
グリップを上手く引き抜いても、グリップの内側に下巻きテープの一部が張り付いている場合もあります。
パーツクリーナーなどの溶剤、ブラシ・針金・ピンセットなどのツールを使って、グリップ内に張り付いた下巻きテープをちょっとずつ取り除いて、きれいにします。
具体的な方法は、自分自身で試行錯誤して身に付けてください。
・複数種類の溶剤を利用して装着
抜き取った中古のグリップの内側・外側ともに劣化しています。劣化した中古グリップは、通常の溶剤を使った通常の方法では、上手く挿せないことも多いです。
そんな時は、シャフトにはいつもの溶剤を吹きかけつつ、グリップの内側には違う溶剤を吹きかけると良いです。
2種類の溶剤を混ぜると危険な有毒ガスが発生することもあります。溶剤の成分を丹念に調べて、混合可能か否かを必ず確認してください。
おわりに
今回はグリップ交換について書きました。次回以降、ヘッドとシャフトの分離方法、シャフトの挿し方、などなど、作業項目ごとに記事を書いていきます。
たかがグリップ交換・されどグリップ交換です。この記事ではすごい深みにまで潜りました。次回以降もこのくらい深い内容で書きたいです。
これほどまで細部にこだわったクラブを自作・使用したところで、普段のゴルフでのスコアは、たいして変わらないでしょう。
しかし、ゴルフクラブのDIYを通して、ゴルフクラブの構造に関する知識はドンドン増えていきます。知識だけならトーナメントプロ・ティーチングプロ並みというくらいに。
その結果、プレーヤーとして、「雨風が強いといった悪条件下でもさほどスコアを落とさない強いゴルファー」、「老年期にも飛距離とスコアの老化現象が遅い長寿なゴルファー」、「後輩達の悩みがわかる良き先輩ゴルファー」、「1本のクラブでいろいろな球を打てて、変わり種競技会に強い変態ゴルファー」へと、近づいていけるでしょう。
私はそう信じて、その道を進んでいます。