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プロゴルファー

こせきよういち

全米プロでバズったルールトラブル~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#177

先週開催の全米プロゴルフ選手権では、メディアやファンの間で話題になった、ルール上の判断が難しいアクシデントが相次いで発生しました。

どのような問題が起こったのか、その状況と適用されたルールを簡単に振り返ってみましょう。

他の人に動かされたボールのリプレース

今回、海外のメディアが熱く取り上げ、「Class Act!」(一流!)と称賛したのがロリー・マキロイの「誠実さ」でした。

トラブルは大会2日目の3番パー3で起きました。

マキロイはティーショットをプッシュし、ボールはグリーン右奥の深いラフの中に消えてしまいます。

そのため、周りにいたマーシャルやテレビ中継のスタッフが捜索。ところが、その中のひとりが誤ってマキロイのボールを踏みつけてしまったのです。

そこで、マキロイは競技委員の指示により、規則7.4「見つけようとしている、または確認しようとしているときに偶然に動かされた球」の規定に従って、ボールがあったと推定される地点にリプレースしました。

でも、ボールが芝の上に乗ったようなライになったのを見たマキロイは、

「これはちょっと違う気がする。もともとボールは、皆で探してもなかなか見つからなかったんだから、もっと下に沈んでいたはず」と競技委員に訴え、よりラフの中に沈むよう再度リプレースしたのです(このホールの結果はボギー)。

ラウンド後、この件についてメディアに尋ねられたマキロイはこう答えました。

「結局のところ、ゴルフは誠実さのゲーム。僕は、そこから外れたものを得たいとは思わない。(あそこでは)元のライより、やや良いライになっているようだったので、僕はとても納得できなかったんだ」

だから、リプレースし直したと言うのです。

彼の誠実さに敬服。マキロイは、いまや若手プロのロールモデル。良き手本のようです。

誤って損傷したクラブを取り替え

このところ、ルール問題でもたびたび“お騒がせ”のブライソン・デシャンボー。今回は大会初日、7番ホールでハプニングを起こします。

デシャンボーはティーショットを放った後、近くに落ちたティーを拾い上げようと、手にしたドライバーを杖のようにして体重を預けたところ、ネックのあたりでシャフトが折れてしまいました。

このような場合、ジェネラルルールでは規則4.1aに、「ラウンド中に損傷した場合、そのラウンドの残りでは、損傷が起きる前の状態にできるだけクラブを復元するようにそのクラブを修理させることができます」とあります。

つまり、ジェネラルルールではラウンド中の修理は可能ですが、取り換えはできない決まりです。

ところが、デシャンボーは1~2ホール後、彼のサポートスタッフが届けてくれたスペアのシャフトに交換(ルール上は、クラブの取り替え)したのです。

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これは、(故意性や乱暴な扱いなしに)損傷したクラブの交換が大会のローカルルールで認められていたからです。

そのローカルルールは、以下のような内容です(日本ゴルフ協会が提示している、同ローカルルールのひな型)。

「プレーヤーのクラブを乱暴に扱った以外のケースでラウンド中にそのプレーヤーやキャディーによって『壊れた、または著しく損傷した』場合、そのプレーヤーは規則4.1b(4)に基づいてそのクラブを別のクラブに取り替えることができる」

これまでルールに関してたびたび不満を口にしてきたデシャンボーですが、今回はローカルルールに助けられたようです。