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プロゴルファー

こせきよういち

デシャンボーが事を起こせば~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#169

米ツアーの再開ゲーム「チャールズ・シュワブチャレンジ」で最も注目された選手のひとりが、筋肉ムキムキに変身して現れたブライソン・デシャンボーです。

彼は時間があれば、ゴルフの研究に没頭する“マッド・サイエンティスト”。今回のツアー中断中は飛距離アップに取り組んでいたようで、最初は制限いっぱいの長さ48インチのドライバーを振り回す姿が紹介されていました。

しかし、最終的に選んだのは、自らの筋力アップでヘッドスピードを上げる道。そして、それは見事な成果を挙げたのでした。

破壊的なビッグドライブ

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鍛え上げられたデシャンボーの体重は、ツアー中断前と比べ、なんと20ポンド(約9キロ)増。

画像上はプロ転向初戦、16年4月のRBCヘリテージで撮られたものですが、当時と比べると40ポンド(約18キロ)増。ウェアのサイズは2サイズ大きくなったと伝えられています。

そして、そのムキムキの体から繰り出されるドライバーショットは、「チャールズ・シュワブチャレンジ」では、平均飛距離が340.3ヤード。ロンゲストドライブは364ヤードで、ともに大会No.1でした。

ちなみに、昨シーズンの彼の平均飛距離は302.5ヤードで、順位は34位タイでした。

しかも、飛ばし屋でありながら、大会のフェアウェイキープ率は58.93%。28位タイの順位ですから、安定性もそこそこ。

パッティングの調子が良ければ優勝していたはずです(結果はトップと1打差の3位タイ)。

サイドサドル用に開発したパター

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デシャンボーの破壊的なビッグドライブにツアー仲間・関係者はみんな目を丸くしましたが、コリン・モンゴメリーなどは「ボールの飛距離を80%抑制する必要がある」と、改めて飛距離の規制を主張するに至りました。

R&Aと全米ゴルフ協会(USGA)は、この2月に世界の主要なツアーにおける飛距離の実状を詳細に調査した「ディスタンス インサイト レポート」を発表。翌3月に、何らかの規制案を提示し、関係者から意見を聴取する予定でした。

その計画は新型コロナウイルスの騒ぎで今秋以降に伸びたのですが、その規制案にもデシャンボーの驚異的な飛距離アップは影響するかも。

というのも、デシャンボーとUSGAは、これまでも“マッド・サイエンティスト”の彼が何か新しいことに取り組むたびに物議を呼び、USGAが規制してきたからです。

例えば、2017年。デシャンボーはサイドサドルのパッティングスタイルに可能性を求め、そのスタイルに最適のパターを開発しました(上掲の画像)。

ゴルフ規則に反したデザインではないのですが、これにUSGAは付属規則「クラブのデザイン」にある通則「クラブは伝統と慣習に大幅に反する形状と構造のものであってはならない」を持ち出し、禁止としたのです。

正確なピンポジを測るためのコンパス

また、2018年にはデシャンボーがヤーデージブックにコンパス(円を描くなどに使うデバイス)を当てる姿がテレビ中継でオンエアされると、それを見たツアーのオフィシャルがUSGAに相談。

USGAは最終的に、規則が使用禁止とする「プレーするうえでプレーヤーの援助となる可能性のあるもの」に当たると判断。コンパスの使用は禁止となったのです。

これに対しデシャンボーは、「かなり以前から普通に使っていたのに……」と憤懣(ふんまん)やるかたなし。

USGAに対する不信感を口にしていました。

ということで、もともと飛距離を抑える必要性を訴えていたUSGAの目に、今回のデシャンボーの超ド級のビッグドライブはどう映ったのでしょうか?

そして、それは今後の規制に影響する?