空爆の中でもプレーした英国のゴルファー譚〜ウイルスなんかに負けるな!〜

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知っておけばフェアウェイでの話題作りに役立つゴルフ・トリビア。第3回目は第二次大戦中でもゴルフに情熱を持った人たちのエピソードです。

今回のコロナウイルス、ゴルファーにもツラい時期。エピソードからちょっと勇気をもらって、再開を楽しみに待ちましょう。

全英オープンまでも第二次大戦以来の中止

全英オープンまでも第二次大戦以来の中止

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韓国女子ツアーやPGAツアー、JLPGAのアース・モンダミンカップなど、徐々に再開の動きが見えてきた世界中のツアー競技ですが、伝統あるメジャーの全英、全米オープンは中止になりました。

もっとも、ゴルフだけでなくオリンピックまで延期になるくらいですから、これも仕方がないことなのでしょう。

観戦スポーツがこれだけなくなると、スポーツ新聞やスポーツ専門チャンネルも大変です。

『頑張れ! ゴルフネットワーク!』とエールを送りたい気分ですね。

ちなみに全英、全米オープンが中止になったのは第二次世界大戦以来のこと。そう考えると今回のコロナウイルス、脅威の強さが推し量れます。

ただし、公式競技が中止になっても今の状況と同じようにゴルフを諦めない人たちは大勢いました。

それらのエピソード、まずはゴルフの本場である英国から紹介しましょう。

ジョンブル魂の心意気!

ジョンブル魂の心意気!

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ザ・ブリッツ。

ドイツ語で稲妻の意味ですが、第二次大戦中の歴史の中では1940年9月から始まったロンドン大空襲を意味します。

翌年5月までの9ヶ月間続いたドイツ軍の空爆により、約5万人近い民間人が死亡、100万以上の建物が損壊しました。

当然、ロンドン近郊にあるゴルフ場にも空爆は及んでいます。

そのひとつが、1891年に創立された名門、リッチモンド・ゴルフクラブ。コースにも爆弾が投下され、フェアウェイに穴が開く始末。

普通に考えれば、プレー中に空爆が起きれば命の危険があるわけですから閉鎖するのが当然でしょう。

しかし、ゴルフに対する情熱はヒトラーの野望を打ち砕くほど固く熱い英国民。『戦争時の暫定ルール』を設けてプレー可能にしました。

その暫定ルール、まさに個人の責任において危険を回避せよ、といった内容で過激です。

たとえば。

3.遅延作動式爆弾が投下された場所は合理的なところに目印として赤旗を立てています。ただし安全を保証するものではありません。

これ、暫定ルールの3番目です。

Delayed action bombs=遅延作動式爆弾は投下後、一定の時間が経過すると爆発するシステムを備えています。いわば時限爆弾。

ある程度の距離を置いて目印の赤旗が立てられているといっても、いつ爆発するかわからない状況でゴルフをするなんて、ホントに命がけですね。

他にも、芝刈り機の破損を防ぐために爆弾や榴弾の破片を取り除く、とか、競技中の銃撃や空爆はペナルティなしでプレーを中断して隠れることができる、なんて記載されています。

極めつけはこれ。
7番目の、ショットと同時の爆弾破裂でショットに影響が出た場合は同じ場所から1打ペナルティを加えて打つことができる、という項目。

1打罰あるんですか?! 逃げなくていいんですか?! とツッコミ入れたくなるほどの危ないルールです。

ジョンブル魂、空爆ごときでゴルフを止めるほどヤワじゃありません。

リッチモンドGCのウィットが効いた切り返し

リッチモンドGCのウィットが効いた切り返し

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このエピソード、続きがあります。

リッチモンド・ゴルフクラブがこの暫定ルールを発表すると、その心意気に感心した新聞各社が取り上げ、英国民を勇気づけました。

当然、その情報はドイツにも伝わります。そしてドイツがイギリス向けの宣伝放送した内容がこれ。

「この馬鹿げたルール改正は人々に偽りのヒロイズムを植え付けようとしている。わがドイツ空軍が爆撃するのは軍事的に重要な拠点だけだ。したがってゴルフプレーに危険が及ぶことはない」

いかにもドイツらしい生真面目なプロパガンダです。しかし、相手はウィットに富んだ英国。

この宣伝放送にも鮮やかな切り返しがありました。

このエピソードを紹介したリッチモンド・ゴルフクラブのホームページでは最後に一言、加えられています。

「その後の爆撃で、クラブの洗濯小屋が破壊されました」と。

解説するのは野暮と承知の上で言うと「ドイツ空軍に取って、さぞクラブハウスの洗濯小屋は軍事施設として重要だったんでしょうねえ」という意味。

強烈な皮肉ですね。

ちなみにこの暫定ルール、現在も空爆の際は有効とされています。

英文で暫定ルールをすべて確認されたい人は下記のリッチモンド・ゴルフクラブのホームページ(下記リンク)へどうぞ。

戦時下のゴルフ・エピソード、他にもいろいろあります。ゴルフ関連の文献を探せば必ずひとつやふたつ、見つかるはず。

ヨーロッパやアメリカでは新型コロナウイルス対策を戦争と見立てている発言や記事を多く目にします。

感染経路不明で罹患する場合もあるので『明日は我が身』と考え、徹底的な安全対策を自分自身で心がける必要はあります。

でも、ゴルフ場に爆弾が落ちたり、突然爆発したり、銃撃戦が繰り広げられることはありません。

ゴルフ場も安心してプレーできるようにスタッフも衛生管理を行っています。第二次大戦が終わったように、今回の新型コロナウイルス問題もやがて解決するはず。

それまで健康を維持し、収束後は思いっきりゴルフを楽しみましょう。
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Taddy Bear

大手建設会社の月面都市計画から押入れのカビの取り方まで、あらゆるジャンルの記事を書き続け、気がつけばキャリア30年のライターです。 ゴルフ関連ではプロから著名人、アマチュアまで幅広い人物のインタビューを中心に執筆していました。仕事での関わりは長くても、ゴルフの楽しみはまだまだ入り口しか知りません。 皆様と一緒に楽しめる記事を書きたいと思っています。 なお、Kindleにて短編集「アームチェア・ゴルファーの優雅な午睡」などを出版しています。 https://twitter.com/TaddyBe67848124

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