プロゴルファー
こせきよういち
新ルールの狙いはシンプル化~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#110
今週も何かと話題の尽きない新ルールに関する話です。
ルールを大きく改訂した狙いのひとつに、適用される規則の「シンプル化」があります。
従来、複雑で覚えにくかった規則をシンプルに組み立て直すことで、新しいプレーヤーの参入を図ろうというのです。
と同時に、シンプルにすることで競技進行を早める(規則が複雑では、競技委員に裁定を仰ぐケースが多くなる)効果も期待したのだと思います。
そこで今回は、規則がシンプルになった例を中心に、新ルールを紹介しましょう。
新ルールのお陰で、このCMのタイガーもノーペナに
この動画はEAスポーツのゴルフビデオゲームシリーズ「PGAツアー」のCMです。
当時、このビデオを見て、「あっ!」と思った人は多かったはず。
なぜなら、旧ルールではボールがウォーターハザード内にあるとき、プレーヤーはそのウォーターハザード内の水に自分の手やクラブで触れることは禁止されていたからです。
でも、新ルールではボールが(水域のような)ペナルティエリア内にあるときも、ジェネラルエリアと同じようにプレーできることになり(つまり、プレーに関しては、ペナルティエリア内だけに適用される制限はなくなった)、タイガーのようにクラブを水に付けても無罰なのです。
旧ルールではハザード内とスルーザグリーンでは、基本的にプレーに関する規則は大きく異なっていましたが、新ルールではその点が単純化、統一化されています。
股の間からのショットはグリーン外でも禁止
旧ルールでは、規則16「パッティンググリーン」に次のような規則がありました。
「パッティンググリーン上では、プレーヤーはパットの線やその後方延長線をまたいだり、踏むようなスタンスでストロークをしてはならない」
ということは、反対に言えば、グリーン外では上掲のインスタ動画のように、股の間からストロークすることができました。
ところが、新ルールではグリーン上・グリーン外に関係なく、「プレーの線をまたいだり、踏みながらストロークを行うこと」(規則10.1c)は禁止です。
気をつけてください!
ちなみに、かつてはグリーン上でもパットの線をまたいでストロークをすることができました。
それを得意としていたのがサム・スニード(下記動画参照)で、上記規則は彼のパッティングを規制する目的で設けられたと言われています。
プレーの線をまたいでパットをするサム・スニード
グリーン上なら無罰でリプレースだけど
最後は、上記2例とは反対に、グリーン上とグリーン外では処置が異なる、統一性に欠いた規則を紹介しましょう。
映像は2016年のマスターズでのワンシーンです。
ビリー・ホーシェルはグリーン上に乗ったボールを一旦拾い上げて、リプレース。
ところが、そのボールが自然に動き出し、斜面を転がり落ちて、池に入ってしまいました。
その間、ホーシェルは何もできません。旧ルールでは、この場合は黙って見送るしかなく、ボールが止まったところから、あるがままで次のプレーをしなければなりません。
ところが、新ルールでは、グリーン上でリプレースしたボールが自然に動いた(あるいはプレーヤーが誤って動かした)場合は無罰でリプレースになりました。
一方、先々週の米ツアー競技「フェニックスオープン」ではこんなシーンが見られ、話題になりました(下掲の動画参照)。
優勝したリッキー・ファウラーは、ボールをグリーン奥の池に落としたため、その淵に1ペナでドロップ。しかし、ドロップしたボールは所定のエリアに止まらず、最終的にプレースの処置。
ところが、そのボールがしばらくすると自然に斜面を転がり、再度池ポチャ。
でもこのケースは、新ルールでも無罰の救済はなく、結局リッキーはもう1ペナを支払ってプレースすることになりました。
グリーン上とグリーン外では、プレースしたボールが自然に動いた場合の処置が異なるのです。
これには、新ルールのそもそもの狙いである「シンプル化」が図られていないという指摘が多く寄せられています。
いずれ改訂されるかも知れません。
Rickie Fowler has made a triple bogey 7.
— PGA TOUR (@PGATOUR) 2019年2月3日
The lead is down to 1. pic.twitter.com/1gZxTfJvVJ