プロゴルファー
こせきよういち
ウェイティングからの出場で優勝~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み#90
先週の国内女子ツアー競技「マンシングウェアレディース東海クラシック」は、人気選手の香妻琴乃が涙の初優勝を飾りました。
“山あり谷あり”の彼女の優勝には、もうひとつ「ツアー2例目のウェイティングからの優勝」という見出しも見られます。
この「ウェイティング」とはどういった制度なのでしょうか。その仕組みと、ウェイティングの劇的なエピソードを紹介しましょう。
基本的に現地で待つのがウェイティング
国内女子ツアーでは、そのトーナメントの出場資格のあるプレーヤーは大会の3週間前の金曜日までに「エントリー」の申し込みを行います。
その時点で出場予定選手と補欠選手の順位が決まり、補欠選手は出場予定選手の欠場が出るごとに順に繰り上げ出場となります。
「ウェイティング」も、同じく欠場選手が出た場合の補充なのですが、ツアーの制度上は、大会前週の金曜日午後5時以降に欠場者が出た場合で、そこに補充されるのは、大会前日の午後5時までに現地で登録を済ませた選手に限られます。
つまり、現地に足を運んで登録し、競技初日に全選手のティーオフが完了するまで現地で欠場者が出るのを待つ。
これが「ウェイティング」です。
通常はどの試合も試合の週に入ってから1~2人の欠場者が出るため、ウェイティング順が1、2位になる選手は現地に向かいその登録をするようです。
今回の香妻も火曜日には「ウェイティングからの出場」が決定。
そして、昨年の「ゴルフ5レディス」を制したO・サタヤ(写真下)に次ぐ2人目の「ウェイティングからの優勝」となったのでした。
昨年のゴルフ5レディスでウェイティングから優勝したO・サタヤ。
史上最も有名なウェイティングからの優勝
ゴルフ史上最も有名で、劇的なウェイティング選手の優勝といえば、1991年全米プロのジョン・デイリー(上掲の画像は昨年5月、シニアツアー初優勝のシーン)でしょう。
その年、ツアールーキーのデイリーは全米プロを補欠順9位で迎えました。
でも、メジャートーナメントのこと、多くの欠場は期待できません。
デイリーも「ウェイティング」の登録はしたものの、早々にテネシー州メンフィスの自宅に戻りました。
ところが、開幕前日、ニック・プライスが夫人の出産のために急きょ欠場することになったのです。
大会側は補欠の順に連絡を取りましたが、みんな時間的に無理と断ったため、話は補欠順位9番目のデイリーにまで降りてきたのです。
そこでデイリーは1000キロにも及ぶ道のりを徹夜でぶっ飛ばして、なんとか会場(インディアナ州のクルックドスティックCC)入り。
そして、そのまま、練習ラウンドはもちろん、ドライビングレンジでの練習もまったくせずにスタートしていったのです。
ところが、300ヤード超えのビッグドライブを武器に初日69。2日目67でトップに立つと、そのまま逃げ切って優勝を遂げたのでした。
上原彩子はミラクルなウェイティング出場でシード獲得
2015年11月、米女子ツアー選手の上原彩子は翌年の賞金シード(80位まで)に一歩及ばぬ81位でその年の出場予定試合を終えました。
次戦のTOTOジャパンクラシック(三重県・近鉄賢島CC)はウェイティング順1位でしたが、ツアー終盤のアジアシリーズは予選落ちがないため(出場すれば確実に賞金を獲得できる)、基本的にウェイティングからの出場は期待できません。
上原は半分出場をあきらめ、また翌年の米ツアーもあきらめ、同じく三重県のジャパンクラシックCCで行われる国内ツアーのセカンドQTに挑戦することにしました。
ところが、そこでミラクルが起こります。
インドネシアのバリ島のイベントに出場し、そこからTOTOジャパンにやってくるはずだった2選手がバリ島で足止めされたのです。
隣のロンボク島の火山噴火で空港が閉鎖されたためです。
大会前日、2選手から欠場の申請が届きます。
その報を聞いた上原はセカンドQTの第2ラウンドを9ホールで切り上げ(途中棄権)、車を飛ばして近鉄賢島CCへ。
2時間後には練習ラウンドを始めていました。
そして、この試合を39位タイで終えると、賞金ランキングはシード圏内の79位へ。そのまま無事翌年のシードを確保したのでした。