ライフスタイル
こせきよういち
じっと見つめて!でも、10秒間だけ ~世界のゴルフ界の面白情報を拾い読み #36
ジャスティン・トーマスが制した全米プロゴルフ選手権。
最終日、一時は松山英樹がトップに立ちましたが、その流れがトーマスに大きく傾いたのは10番ホールでした。
トーマスは、まずティショットを引っかけ、ボールは左に飛び出しました。
ところが、ラッキーなことに、ボールは立木に当たってフェアウェイまで出てきたのです。
そして、今度はそのグリーン上です。彼のバーディパットは一旦カップの縁に止まったのですが、しばらく見守っているうちにカップイン。
先にバーディを決めた松山に食らいつく展開になりました。
そこから松山のショットに狂いが生じ3連続ボギー。
一方のトーマスは安定したプレーを継続。そのまま後続を引き離し、勝利をたぐり寄せたのでした。
勝利への流れを作った「カップの縁に止まったボールがしばらくしてホールイン」が今回のテーマです。
2005年マスターズのタイガーの伝説のアプローチを思い出させる
ホールに向かって転がったトーマスのボールは、カップをのぞき込むようにしてストップ。
テレビ中継の映像は、そのボールをとらえたままゆっくりとズームイン。
すると、ボールは突然動き出し、カップの中へ消えたのです。
このシーンを見て、2005年マスターズでのタイガー・ウッズの伝説のアプローチを思い出した人もいたことでしょう。
試合の流れが、タイガーの3年ぶり4度目のマスターズ制覇に大きく傾いたビッグプレー。
ファンの間にいつまでも語り継がれるであろう劇的なカップインです。
ともにアメリカCBS制作だからでしょうか。それともゴルフ中継ではオーソドックスな手法なのでしょうか。
中継映像はプレーヤーのリアクションを映さず、まるで最後にはカップインすることを知っていたかのように、じっとボールをとらえています。
ともにメジャーでのドラマチックなシーン。そして、見るものの脳裏に強く焼き付く、印象的な映像。
テレビ中継の画づくりって、本当に大切ですね。
カップの縁に止まったボールをじっと見てられるのは10秒間だけ
ところで、全米プロでは昨年も同じようなシーンが見られました。
第1ラウンドの16番パー3で、ジョン・センデンのパットはわずかにショート。
ボールはカップの縁で止まってしまいました。
そこからの約22秒間、センデンは直接ボールには歩み寄らず、一緒にラウンドするプレーヤーのパッティングラインを避けるように、大回りにぐるっと一周。
そして、諦めてタップインしようかと近寄ったところで、ボールがコロリとカップの中に消えたのでした。
でも、なぜまっすぐボールに歩み寄らず、カップの周りを一周?
それはもちろん、ルールに次のような制限があるからです。
「球の一部がホールのふちからせり出している場合、プレーヤーは不当に遅れることなくホールに歩み寄る時間に加え、球が止まっているかどうかを確かめるためにさらに10秒間待つことができる。その間に球がホールに落ち込まなければ、その球は止まったものとみなされる」(規則16-2)
つまり、ホール(=カップ)に歩み寄ったあと、10秒間は待てるのですが、10秒を超えても落ちないときは、そのボールはそこで止まったとみなされるわけです。
ですから、上記のトーマスもそうですが、みんなゆっくりとボールに歩み寄り、それから10秒間待とうとするのです。
10秒以上待った結果、カップインしても1ペナ
それでは、ボールに歩み寄ってから10秒経って、その後にボールがカップインした場合は?
前記、規則16-2の続きです。
「球が前記の時間を過ぎてホールに落ち込んだときは、最後のストロークでホールに入ったものとみなされ、プレーヤーはそのホールの自分のスコアに1打の罰を加えなければならない」
つまり、(上記のケースでは)直前のパッティングでのカップインが認められますが、10秒過ぎも待ったことに1罰打のペナルティが課せられるということ。
その場合、スコアは結局10秒を待たずにタップイン(1打)したのと同じになるわけです。
上の動画は実際にそうなったケースです。
サム・トーランスのボールは、ボールに近寄ってから26秒後にカップイン。
ルールにより1ペナが加えられたのですが、トーランスは「承知しているよ」とばかりの“茶目っ気”のある表情を見せています。
皆さんがこんなケースに出会ったときには、カップの周りを大回りなどせず、速やかにボールに歩み寄り、でもそのあとは、しっかと10秒間は待ってみては?
そして、その際には声を出してカウントダウン。
すると、一緒のラウンド仲間と盛り上がれるかも。