ライフスタイル
Nick Jagger
歴史的ファストプレーとスロープレーの記録
バブル期の頃は、予約客を詰め込むだけ詰め込んで、ランチタイムは2時間、18ホールすべてでコース渋滞なんてこともよくありました。
これは儲け第一主義のコース側の責任でしたが、最近でも、難しいパー3のティーイングエリアで2~3組が待っているなんてことはありますよね。
その原因はスロープレーであることがほとんどではないでしょうか?
一番の問題は、スロープレーヤーというのは、自分がスロープレーヤーであることを自覚していないということです。
何もフェアウェイを走れとは言っていません。次打で使いそうなクラブを2~3本持っていくとか、グリーン上で他のプレーヤーがパッティングをしている時に自分のラインを読んでおくとか、ロストボールを一緒に探してやるとか、当たり前のことをしていれば、それほど後続のパーティーが渋滞しないはずです。
Fesutina lente(悠々と急げ)
1899年に開場したザ・ロイヤル・ホンコン・ゴルフクラブ(現香港ゴルフクラブ)のコース内には、こんな標語が掲げられています。
Festina lente.(フェスティナ レンテ)
どういう意味かと申し上げますと、「悠々と急げ」、あるいは「ゆっくり急げ」と訳されています。
コース内を走ったり、電動カートをぶっ飛ばしたりすることではありません。
この言葉は世界中のゴルファーの格言となっています。
アマチュアゴルフ界のレジェンド、故中部銀次郎氏は香港でこの標語に出会い、「Festina lente」という文字が入ったTシャツまで作り、ゴルフ仲間に配ったというエピソードもあります。
ゴルフのレベルを問わず、すべてのゴルファーがこの言葉をいつも意識していれば、コース渋滞も激減するのではないでしょうか。
そこで今回は、歴史に残るとんでもないスロープレーとファストプレーの記録を紹介しましょう。
セントアンドリュースでのスロープレー
1949年に、ゴルファーズ・ハンドブックがスロープレーに関する声明を発表してから、プレー時間の水準が著しく変わりました。
ハンドブックの声明の中で「スローモーション・ゴルフは多くの選手権を損ねている。遅い亀は選手権試合では3時間半で回ることを知らされることになるだろう」と述べました。
現在では、1ラウンド(ランチなしのスループレーの場合)3時間半は当たり前になっています。
しかし、ゴルフの本場スコットランドでも、1950年まではとんでもないスロープレーが横行していました。
ゴルフ発祥の地、セントアンドリュースも例外ではありませんでした。
まずは、1922年のスコットランド・アマチュア選手権でのお話です。
この大会に出場したあるプレーヤーは、嘆かわしくなるほどのスロープレーを展開しました。これに頭に来た相手のプレーヤーは、他の選手が以前に持ち込んだキャンプ用のベッドをコース内に持ち込んだそうです。
そのベッドはグリーンに来るたびにグリーンサイドに置かれ、問題の亀さんプレーヤーがグリーン上でパッティングラインを這うように読んでいる間、ウンザリしている相手のプレーヤーはベッドで横になり、冷淡な表情で風変わりな対戦相手を観察していたといいます。
結局、スピードアップの試みは失敗に終わり、亀さんプレーヤーはより一層、プレー中に考え込む結果となったそうです。
勝敗の記録はありませんが、どうだったんでしょうね。
同じセントアンドリュースでの1950年の全英アマチュア選手権もスロープレーで特筆されます。
プレーを遅くした大きな理由は、パッティングにかける時間が多かったということでした。
いくつかのケースでは、1パットに5分を要し、しかもエントリー数が324人に達したうえ、広いダブルグリーンがスロープレーに拍車をかけたのです。
多くのマッチがホールアウトまで4時間以上というありさまで、ティーイングエリアでは常に5組が待っている状態だったそうです。
第3日には、3、4回戦を消化するのに14時間という記録も作りました。
その日、第1組がティーショットを打ったのが午前8時、最終組が17番ホールのプレーが終わった時は薄暗く、午後10時前だったといいます。
決勝のストラナハンとチャプマンの午前中のラウンドは1時間50分のスピードプレーで役員たちも安心したのですが、その安心感がかえってペースを遅くさせる原因となり、午後のラウンドは3時間40分もかかってしまい、この時点で全英アマ史上最も遅いラウンドとして残っています。
スピード記録と耐久記録
ファストプレーのスピード記録もたくさん残っています。
アメリカのディック・キンブロー(41歳)は1972年8月、ネブラスカ州のノースプラットカントリークラブ(6068ヤード)を30分10秒で回りました。
3番アイアン1本持って走りに走った記録です。
彼は同じ年の6月、24時間で364ホールを消化する「マラソン記録」も持っていたというから驚きです。
1931年11月、南アフリカのケープタウンにあるモーブレー・ゴルフコース(6248ヤード)でレン・リチャードソンは31分22秒で回りました。
この人は南アフリカの陸上のオリンピック選手だったそうです。
女性にもすごい人がいます。アメリカ・フロリダ州ジャクソンビルのダイアン・テイラー(37歳)が1980年4月7日にマークした55分54秒。
コースはユニバーシティ・ゴルフクラブ(5692ヤード)でのことです。
この種の記録は、男性が6000ヤード以上、女性は5250ヤード以上のコースで、自分の足だけでプレーすることが条件とされているそうです。
動力の援助を得ると、当然もっと早くなります。
これもアメリカのキャルコット・パーク・ゴルフクラブで、1980年7月20日にケン・ワイルデイという人が、電動カートを駆使して、24分3秒で回ったそうです。
リレーラウンドの記録もあります。なんと18ホールを8分53秒8でクリアしたそうです。
1979年アメリカのロチェスターにあるリッジモント・カントリー・クラブ(6161ヤード)で42人が参加し、あらかじめ予想落下地点に人を配し、飛んできたボールを次々打っていく形式で行われました。
ルール通りのプレーとなりますが、ただひとつカップインした瞬間に合図して、次のティーショットを打っていたということから、これはルール違反で記録は認められなかったいいます。
しかし、それにしても1ラウンド、8分は早過ぎますよね。