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【特別?】ツアープロ支給品の作り方とスペック【市販品と同じ?】

今まさにここで組み上げているのが、日本プロゴルフ選手権(谷口徹プロ優勝おめでとうございます!!)を戦っていたあるツアープロのクラブ。

アイアンの支給は房総カントリーに直接お送りして、そのクラブで無事予選通過し決勝トーナメントに進出したプロですが、日本プロで組み上げたアイアンが非常に良かったという事で、ウッド類とウェッジのおかわりをいただきました。

JPGAに籍のあるプロゴルファーだけでも5000名以上いる中で、日本プロゴルフ選手権に出場できるのは144名、2018年の試合ではその中の上位60名だけが土日の本戦に進んでいます。

このプロは予選を突破してのフル出場ですから、日本の上位60名に入ったプロ。

果たしてツアープロのクラブは特別な組み上げをされているのか?

今回はそのあたりのことを中心にお話ししていきましょう。

ツアープロのアイアンは・・・?

ツアープロのアイアン(組み上げ前)です。

ヘッド:アキラプロダクツ プロトタイプ KS-701(4~PW)

シャフト:KBS C-TAPER R+(4-9、9は2本で、1本はウェッジ用としても使用)

グリップ:アキラプロダクツオリジナルハーフコードグリップ

という構成です。

皆さんは「プロのクラブは特別!! プロのクラブは別物!!」と誤解されている方が多いですが、アイアンヘッドはアキラプロダクツの取り扱いのある工房さんであればどこでも購入できる市販品ですし、シャフトも普通に売っているシャフトです。

グリップもアキラプロダクツの取り扱いのある工房さんで買えますし、アキラプロダクツのネットショップでも買えます(私もこのために実際に購入して使ってます)。

ツアープロの組み上げは特別?

ツアープロの組み上げ方法は特別かっていうと、人によって違うのかもしれないですし難しいところですが、BoseIronFactoryの場合はいつもとまったく変わりません(^^;;

ただBoseIronFactoryの場合どのメーカーのどのツアーレップでも行っていない特殊なチューニング(クラブMOIマッチング)を専門に行っています。

一般アマチュアの方でもツアープロの方でもいつもと同じようにクラブMOIマッチングして組み上げますので、写真のように見た目はまったく普通のクラブでも中身はクラブMOIマッチングした人のためだけにフィッティングされているということは言えます。

部品の精度自体もごく普通の公差の範囲内。

送られてきたヘッドやシャフトの送り状にはしっかりと「◯◯プロ支給品」と書かれていますが、ロフト・ライや重量を含めて皆さんが思われているような特別なものではありません。

実際の組み上げでひとつだけ・・・

ただ、実際にツアープロに組み上げる場合、ひとつだけ皆さんと違うことがあります。

あくまで私の場合ですが、それはトーナメントという特殊な環境に合わせて作ることです。

トーナメントを戦うツアープロがいい所まで行ったけれど、崩れていく原因を潰していくことでもあります。

ものすごくざっくり言うと、左に2ヤード行くよりは右に5ヤード行くクラブを作るんです。

最終日最終組のバックナインで崩れていく原因に右に行って崩れていくというのはほぼありません。

ショートアイアンで打った二打目はグリーン左の深いバンカーやラフに入って崩れていくことがほとんどですからね。

実際にツアープロのほとんどはつかまりすぎない(左に行かない)クラブが好きなんですね。

左に行くと崩れていくというのが分かっているので。

ツアープロのスペックは一般アマチュアとどう違う?

では実際のスペックを見ていきましょう。

まず、シャフトのフレックスに注目してみると、「R+」となっています。

このツアープロはまだ20代と若い男子プロですが、フレックスがXでもSでもなくR+という柔らかめのフレックスです。

KBS C-TAPERの場合、X、S+、S、R+、Rというようになっていますが、R+だと通常のSRフレックスです。

実際の振動数を見てみてもSR相当の振動数になっているのがお分かりいただけるとおMOIます。

皆さん、プロだからハードスペックというイメージをお持ちでしょうが、一概にそうとも言えないのがお分かりになりましたでしょうか?

長さに関してはクラブMOIマッチングでの組み上げですので、微妙に0.5インチ刻みにはなっていません。

ただスイングバランス(意味はありません)の組み上げでも、0.1~0.2インチ程度の違いは出てきますので、「クラブMOIマッチングだから・・・」ということではありません。

ツアープロのスペックその2

スペックの後半戦です。

クラブMOIを合わせていく作業がBoseIronFactoryでの組み上げのキモです。

今回は2630kg-cm2に合わせていきました。

クラブMOIを合わせていくとスイングバランスはほぼほぼ0.4~0.6程度の差が付きます。

フジクラMCI BLACKはシャフト重量とシャフトのバランス位置をフローさせていくことで振り心地=クラブMOIを簡易的に統一させていくシャフトですが、そのMCI BLACKを使ってもスイングバランスは0.4~0.6程度のフローになります。

クラブMOIマッチングの考え方を取り入れたシャフトは、その他にもDG-AMTやATTAS-EEなどが出てきましたが、シャフトだけで振り心地を統一するのは無理が出てきます。

MOI=慣性モーメントのことですので、ヘッドという一番重いパーツが一番外周側に付いていることからも、シャフトだけでMOIを調整していくことは難しいんです。

ロフト・ライに関しては・・・

ツアープロのアイアンのロフト・ライに関してですが、プロによって様々な希望があるので調整することは多いですが、今回のプロの場合は標準のスペックで問題ないという事で、曲げる作業はしていません。

ちなみにロフト・ライの精度はどうだったかというと・・・。

一般市販されている精度と同一。

ここでもツアープロ支給品で言われているような特別なものではないことが分かります。

「プロ支給品って特別なの!!」という方がたくさんいますけれども、パーツ自体は全くもって全然、これっぽっちも特別ということではありません。

特別にするのは私たちクラフトマンでもありますが、なによりもプロ本人が特別にしているんですね(^^